32 / 94
第32話 魔術師が去った後の森にて-別視点×2-
しおりを挟む
即座に忌々しい霧を振り払って辺りを見渡したが、そこにもう人影はなかった……。
元々希薄だった気配も完全に消え失せている。
逃げられた……。
大きな水音が聞こえたし、恐らく湖に飛び込んだのだろう。
何か分かるかと湖面に近付き水中を覗き込んでみたが…………。
これは追えないわね……。
マナの流れで分かるが湖の水流はメチャクチャになっていて、もし仮に私が後を追って水中に飛び込んでも弾き出されることが容易に想像が出来た。
水属性の使い手であることは予想できたけど、まさかここまでの力が……。
執拗に正体を隠していたことといい、これだけの能力といい…………こんなのを差し向けてアナタは一体どういうつもりなの?
この1000年間もの間、思えば一度も顔を合わせていないわね……。
ああ、まさかアナタまで……。
お願い……アナタだけは信じさせて……もしアナタまで私を裏切るのであれば、そうなったら…………。
後向きな考えばかりが頭を掠めていると、ふいに身体から力が抜ける感覚がしてふらつく。
あ……きっと寝起きのせいで調子が良くないのね……。
アイツはまた会いに来ると言ってたわ、ということはまだしばらくこの付近にいるということ。
大丈夫、少し休んで……そしたら今度こそアイツを捕まえるわ。
いったん聖域に戻りましょう……。
―――――――――――――――――――――――――――……
《同刻 森の上空》
それに気付いたのは偶然に過ぎなかった。
たまたま飛竜を使う用があり、たまたま大地の大精霊が住むという森の上空を飛行していたからこそソレに気付くことになった。
森の中のやや開けた湖の畔に突然、霧がかかったのだ。あれは魔術による霧だ……。
時間にしてほんの数秒の短い時間、しかし私の目には妙にその光景が印象に残った。
なぜなら、その霧の魔術は自分がよく知る人物が使うものによく似ている気がしたからだ……。
距離が離れているせいで絶対にそうだとは言い切れないが、似すぎてる程度には似てる気がした。
……いや、アイツは本国にいるはずだからこんな場所にいるのはおかしい。
思案しながら霧が消えた場所を見つめていると、その場所にとある人影を見つけた。
あれは人……ではなく精霊か、こちらも距離が遠くてハッキリしないが容姿の特徴は大地の大精霊のそれに酷似しているように見える。
だがしかし、それにしてはやや魔力が……。
そんなことを考えていると、その精霊の姿はフッと消えた。
………………。
念の為、アイツのことについては本国に確認を取っておくか。
何故だか、妙な胸騒ぎがするからな……。
元々希薄だった気配も完全に消え失せている。
逃げられた……。
大きな水音が聞こえたし、恐らく湖に飛び込んだのだろう。
何か分かるかと湖面に近付き水中を覗き込んでみたが…………。
これは追えないわね……。
マナの流れで分かるが湖の水流はメチャクチャになっていて、もし仮に私が後を追って水中に飛び込んでも弾き出されることが容易に想像が出来た。
水属性の使い手であることは予想できたけど、まさかここまでの力が……。
執拗に正体を隠していたことといい、これだけの能力といい…………こんなのを差し向けてアナタは一体どういうつもりなの?
この1000年間もの間、思えば一度も顔を合わせていないわね……。
ああ、まさかアナタまで……。
お願い……アナタだけは信じさせて……もしアナタまで私を裏切るのであれば、そうなったら…………。
後向きな考えばかりが頭を掠めていると、ふいに身体から力が抜ける感覚がしてふらつく。
あ……きっと寝起きのせいで調子が良くないのね……。
アイツはまた会いに来ると言ってたわ、ということはまだしばらくこの付近にいるということ。
大丈夫、少し休んで……そしたら今度こそアイツを捕まえるわ。
いったん聖域に戻りましょう……。
―――――――――――――――――――――――――――……
《同刻 森の上空》
それに気付いたのは偶然に過ぎなかった。
たまたま飛竜を使う用があり、たまたま大地の大精霊が住むという森の上空を飛行していたからこそソレに気付くことになった。
森の中のやや開けた湖の畔に突然、霧がかかったのだ。あれは魔術による霧だ……。
時間にしてほんの数秒の短い時間、しかし私の目には妙にその光景が印象に残った。
なぜなら、その霧の魔術は自分がよく知る人物が使うものによく似ている気がしたからだ……。
距離が離れているせいで絶対にそうだとは言い切れないが、似すぎてる程度には似てる気がした。
……いや、アイツは本国にいるはずだからこんな場所にいるのはおかしい。
思案しながら霧が消えた場所を見つめていると、その場所にとある人影を見つけた。
あれは人……ではなく精霊か、こちらも距離が遠くてハッキリしないが容姿の特徴は大地の大精霊のそれに酷似しているように見える。
だがしかし、それにしてはやや魔力が……。
そんなことを考えていると、その精霊の姿はフッと消えた。
………………。
念の為、アイツのことについては本国に確認を取っておくか。
何故だか、妙な胸騒ぎがするからな……。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~
一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】
悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……?
小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位!
※本作品は他サイトでも連載中です。

エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?
ありぽん
ファンタジー
アルフォート家の3男、エリアス・アルフォート3歳は、毎日楽しく屋敷の広い広い庭を、お友達のぷるちゃん(スライム)とウルちゃん(ホワイトウルフ)と一緒に走り回っておりました。
そして4歳の誕生日の日。この日は庭でエリアスの誕生日パーティーが開かれていました。その時何処からかエリアスの事を呼ぶ声が。その声を前に聞いた事があるエリアスは、声のする庭の奥へ、ぷるちゃんとウルちゃんと3人進んで行きます。そこでエリアス達を待っていたものは?
剣と魔法そしてもふもふの溢れる世界で、繰り広げられるエリアスの大冒険。周りを巻き込みながら、今日もエリアスはやらかします!
*エリアス本人登場は2話からとなります。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる