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第21話 図書室にて 2
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「集めておいてなんだが、本気でこれを全部読む気か?」
机の上に連なる本の山を見て、アルフォンス様は困惑したような声で問いかけてきた。
確かに思った以上の量になってしまったけど、やると決めたからには読み切るしかない。
「はい、全部読みますよ! ……とはいっても全体としてはざっと目を通すだけにして、その際に必要な本だけを選り分けて改めてゆっくり読むことにしますが」
方法としてはこれしかないだろう。
というかそれ以外に思い付かないし。
「うむ、そうか……」
アルフォンス様は頷きながらも、悩ましげな声を出す。
「まだここにいたいが、もうすることが無さそうだな……」
「ん、まだここにいたいのですか……?」
何となくアルフォンス様のこぼした言葉を拾って聞き返すと、彼は不自然な動きでコチラに顔を向けて「えっ、あっ」と言葉にならない声を出している。
なんだろう、急に喉の調子でも悪くなったのかな……。それならちょっとほっといてあげるのも優しさだよね、うん。
「特にすることがないのであれば、この本を読まれるのは如何でしょうか?」
私は出来る限りで一番の笑みを浮かべて、アルフォンス様の目の前に一冊の本を差し出した。
アルフォンス様はいったん視線を外して咳払いをしたあとに、改めて私が差し出した本に目を向けた。
「…………それは児童書だよな?」
「はい、子供向けにやさしい言葉使いと大きめの文字で書かれていますが子供じゃなくても楽しめる完成度の高い冒険小説です!!」
「…………そんなものが図書館にあったのか」
「いいえ、私の私物です」
胸を張って答えた私に対して、アルフォンス様は何ともいえない顔で本と私を交互みたあとに考える仕草を見せつつ口を開いた。
「…………なぜ、旅をするのに児童書を持ち歩いるか分からないのだが」
「それはもちろん、お気に入りの小説だからですよ!!」
「…………それにはどんな意味があるんだ」
「読みたいときに、いつでも読めるようにするためですね!!」
「…………なるほど、私には理解できないということが分かった」
アルフォンス様は息を吐き出しながら深くうなずいた。それはどこか諦めた感じというか、うっすら呆れたような風にも見える。
このままではよくない!! そもそも児童書を軽視しているような気がするし、なにより私イチオシの小説の素晴らしさを知ってもらう機会がなくなってしまう……!!
「仕方ありませんね、それじゃあ懇切丁寧にこの小説を持ち歩く意義についてご説明をいたしましょう……!!」
「いや、いい!! 必要ない!!」
私の言葉を聞いた瞬間、アルフォンス様が勢いよく首を振った。
も、物凄い勢いで拒否されてしまった……!! そんなにスッパリ言われると流石にツラい。
「そもそも、そんなことに時間を割いている場合ではないだろ……。まずはこの本の山をどうにかする方が優先ではないのか?」
続いて本の山を示されてしまっては、流石の私も反論できなかった。
だとしても……!! オススメの本だけはどうにか読んで欲しい。
「分かりました……諦めてこちらを優先する代わりに本を読んで下さい」
「なぜか交換条件のようになっているが本来の目的に立ち返っただけだぞ!?」
そんなことは知っている、だけど個人的な心情の問題で引くわけには行かないのだ。
「お願いします……!!」
「……分かった、そこまで言うのなら読もう!!」
渋々という風ではあるが私の本を受け取ってくれた。片手で頭を抑えながら。
よし、やったー!! やったぞー!!
「ありがとうございます!! お陰で心置きなく作業に入れます」
「それはよかった……」
全くそう思ってなさそうなため息まじりの言葉だったが、本は読んでもらえるようなので放っておくことにした。
「それでは早速取りかかりますね」
私は本を読むために椅子に腰掛けて、ローブのフードを目深にかぶった。
「なぜ、わざわざローブをかぶったんだ?」
「このローブをかぶると集中力が増して、作業効率が上がるんですよ」
「ほう、そうなのか……」
「気持ち的にですがね~」
「…………」
先程まで感心したようにうなずいていたアルフォンス様が一転、無言で何ともいえない目を向けてきた。
むむ、そんな反応しなくても良いじゃないの!!
「気持ちはとっても大事なんですよ!!」
「そうだな、よく分かったから日が暮れないうちに作業を始めてくれ」
コチラから視線を外したアルフォンス様は、ちょっと前のめりになった私に対して手で追い払うような仕草をした。
あっ! まるで庭先のカラスでも追い払うようにシッシってされた!!
これは傷付いた……入れたお茶がちょっと熱すぎた時くらいには傷付いたからね!?
とは言うものの事実アルフォンス様の言う通り、いつまでもくだらないこと考えていては日が暮れてしまう。
自分でやると決めたことなのだから、しっかりやらなくては……!!
うん、そうやって切り替えられる自分偉いぞ~
よーしやるぞと、内心で意気込んだ私は、手近な本を引き寄せて目の前に置いた。
だがしかし本格的に始める前に、アルフォンス様がちゃんと本を読んでくれているのか気になっていたのでそちらを確認した。
アルフォンス様は手に持った本の表紙をじっと見つめていた。
まだ読んでなかったの?……と抗議代わりの視線を送る。
すると視線に気付いたのか、アルフォンス様は一瞬こちらに目を向けて眉を寄せつつ本を開いた。
「分かっている、今から読む」
その姿を見て、ようやく安心したできた私も手元の本に手掛けて一冊目の本の確認を始めたのだった。
頑張って早く終わらせるぞ……!
机の上に連なる本の山を見て、アルフォンス様は困惑したような声で問いかけてきた。
確かに思った以上の量になってしまったけど、やると決めたからには読み切るしかない。
「はい、全部読みますよ! ……とはいっても全体としてはざっと目を通すだけにして、その際に必要な本だけを選り分けて改めてゆっくり読むことにしますが」
方法としてはこれしかないだろう。
というかそれ以外に思い付かないし。
「うむ、そうか……」
アルフォンス様は頷きながらも、悩ましげな声を出す。
「まだここにいたいが、もうすることが無さそうだな……」
「ん、まだここにいたいのですか……?」
何となくアルフォンス様のこぼした言葉を拾って聞き返すと、彼は不自然な動きでコチラに顔を向けて「えっ、あっ」と言葉にならない声を出している。
なんだろう、急に喉の調子でも悪くなったのかな……。それならちょっとほっといてあげるのも優しさだよね、うん。
「特にすることがないのであれば、この本を読まれるのは如何でしょうか?」
私は出来る限りで一番の笑みを浮かべて、アルフォンス様の目の前に一冊の本を差し出した。
アルフォンス様はいったん視線を外して咳払いをしたあとに、改めて私が差し出した本に目を向けた。
「…………それは児童書だよな?」
「はい、子供向けにやさしい言葉使いと大きめの文字で書かれていますが子供じゃなくても楽しめる完成度の高い冒険小説です!!」
「…………そんなものが図書館にあったのか」
「いいえ、私の私物です」
胸を張って答えた私に対して、アルフォンス様は何ともいえない顔で本と私を交互みたあとに考える仕草を見せつつ口を開いた。
「…………なぜ、旅をするのに児童書を持ち歩いるか分からないのだが」
「それはもちろん、お気に入りの小説だからですよ!!」
「…………それにはどんな意味があるんだ」
「読みたいときに、いつでも読めるようにするためですね!!」
「…………なるほど、私には理解できないということが分かった」
アルフォンス様は息を吐き出しながら深くうなずいた。それはどこか諦めた感じというか、うっすら呆れたような風にも見える。
このままではよくない!! そもそも児童書を軽視しているような気がするし、なにより私イチオシの小説の素晴らしさを知ってもらう機会がなくなってしまう……!!
「仕方ありませんね、それじゃあ懇切丁寧にこの小説を持ち歩く意義についてご説明をいたしましょう……!!」
「いや、いい!! 必要ない!!」
私の言葉を聞いた瞬間、アルフォンス様が勢いよく首を振った。
も、物凄い勢いで拒否されてしまった……!! そんなにスッパリ言われると流石にツラい。
「そもそも、そんなことに時間を割いている場合ではないだろ……。まずはこの本の山をどうにかする方が優先ではないのか?」
続いて本の山を示されてしまっては、流石の私も反論できなかった。
だとしても……!! オススメの本だけはどうにか読んで欲しい。
「分かりました……諦めてこちらを優先する代わりに本を読んで下さい」
「なぜか交換条件のようになっているが本来の目的に立ち返っただけだぞ!?」
そんなことは知っている、だけど個人的な心情の問題で引くわけには行かないのだ。
「お願いします……!!」
「……分かった、そこまで言うのなら読もう!!」
渋々という風ではあるが私の本を受け取ってくれた。片手で頭を抑えながら。
よし、やったー!! やったぞー!!
「ありがとうございます!! お陰で心置きなく作業に入れます」
「それはよかった……」
全くそう思ってなさそうなため息まじりの言葉だったが、本は読んでもらえるようなので放っておくことにした。
「それでは早速取りかかりますね」
私は本を読むために椅子に腰掛けて、ローブのフードを目深にかぶった。
「なぜ、わざわざローブをかぶったんだ?」
「このローブをかぶると集中力が増して、作業効率が上がるんですよ」
「ほう、そうなのか……」
「気持ち的にですがね~」
「…………」
先程まで感心したようにうなずいていたアルフォンス様が一転、無言で何ともいえない目を向けてきた。
むむ、そんな反応しなくても良いじゃないの!!
「気持ちはとっても大事なんですよ!!」
「そうだな、よく分かったから日が暮れないうちに作業を始めてくれ」
コチラから視線を外したアルフォンス様は、ちょっと前のめりになった私に対して手で追い払うような仕草をした。
あっ! まるで庭先のカラスでも追い払うようにシッシってされた!!
これは傷付いた……入れたお茶がちょっと熱すぎた時くらいには傷付いたからね!?
とは言うものの事実アルフォンス様の言う通り、いつまでもくだらないこと考えていては日が暮れてしまう。
自分でやると決めたことなのだから、しっかりやらなくては……!!
うん、そうやって切り替えられる自分偉いぞ~
よーしやるぞと、内心で意気込んだ私は、手近な本を引き寄せて目の前に置いた。
だがしかし本格的に始める前に、アルフォンス様がちゃんと本を読んでくれているのか気になっていたのでそちらを確認した。
アルフォンス様は手に持った本の表紙をじっと見つめていた。
まだ読んでなかったの?……と抗議代わりの視線を送る。
すると視線に気付いたのか、アルフォンス様は一瞬こちらに目を向けて眉を寄せつつ本を開いた。
「分かっている、今から読む」
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