魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第14話 魔術師の情報収集 1

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 私が手に残るモフモフの余韻を噛みしめていたところ、セルバンさんが声をかけてくれた。

「少し驚かれただけだと思いますので、そのうち戻ってくるでしょう」

 客観的に見ると自分はアルフォンス様が出て行ってからその場で立ったまま固まっているという、やや可愛そうにも見える状況だったため気を使ってくれたのかもしれない。


 セルバンさんの戻ってくるという言葉を受けて、この部屋に残ることにした私は折角だからと使用人の皆さんに聞き込みすることを思い立った。

「呪いの状態を詳しく知りたいので、お一人ずつお話をお聞かせ願いたいのと呪いで変わってしまった体の様子も少し拝見させて頂きたいのですがよろしいでしょう?」

 先程のアルフォンス様とのやりとりもあり、少し不安だったが皆さん快諾してくれたため、私は上機嫌で調査に乗り出した。


 えっ、なぜ上機嫌かって?
 いや、実は気になっていたんですよー
 人間を無機物に変える呪いの仕組みとか、その無機物になった体の状態がどうなっているのかとか……。
 不謹慎だと思われるかも知れないけど、好奇心旺盛な魔術師に興味を持つなと言うほうがむしろ無理な話ですよ!!
 だって普通出来ないですよ!? 聞いたこともなかったですからね、そんな魔法も魔術も!! 
 私の推測と経験則では、常人には再現出来ない大精霊だからこそ行使可能な術だと思うのですが、そのような未知の術だからこそ興味は尽きないというもの……ふふふっ。


 それに目下の懸案事項でもある、アルフォンス様のご意向がどうなるかという部分もある。
 彼はやはり私に呪いを解いて欲しくないというかもしれない……。
 そうなってしまうのは大変残念ではあるけど、私は受け入れるしかない。


 だけどこれだけ魔術的にも特殊な事例を発見しておいて、なんの情報も得られなかったというのは大きな損害になるだろう。だからそうなった場合を想定して、今のうちに彼らから得られる情報を出来る限りの手に入れておきたい。
 これについて魔術師としての責務とプライドの問題でもある。


 魔術師は未来のため、その知識を必要とする人々のため、自分が新たに発見した魔法や魔術にまつわるものや、それらを研究した記録をしっかりと残し伝えていく義務があると考えている。
 それは今ある技術を先人達が我々に残してくれたように、現在の積み重ねがこれから先の多くの人を助けと救いになるように、という大いなる信念を背負っているのである。


 ちなみにこれは私の故郷で魔術を学ぶ者が必ず教えられる魔術師の理念であり、私の有り余る探究心を肯定するための免罪符にもしている……ゴホゴホッ。

 おっと、聞き取りも忘れないようにしないとね。


「あのどうでしょうか……」

 ただいま体をみせて頂いている燭台さんこと、セルバンさんが不安げにこちらを伺う。

「無機物なのに動けるということでゴーレムのような回路でももっているかと思いましたが違うようですねー」

「あのそれは呪いと関係あるのでしょうか」

「たぶんな……現時点ではハッキリとは分かりません」

 あぶない、あぶない……うっかり『たぶん無い』って言いかけてしまった。


 そんなこんなで身体検査兼聞き取り調査を進めていたのだけれど、ふとした拍子に調査に必要不可欠なものが足りてないことに気付いてしまった。

「すみません、紙と筆記用具が手元にないので急いで取ってきます!!」

 目の前の研究対象に夢中で記録ためには絶対的に必要な紙と筆記用具の存在を忘れていたとはなんていう失態をしてしまったのだろうか。
 一瞬で筆記用具のことで頭がいっぱいになった、私は返事も待たずに部屋を飛び出していたのだった。


 むかったのは私が貸してもらった部屋。
 そして目当ては置きっ放しにしてしまっていた私の(着用しているローブ以外の)荷物。
 ここで取り出すのは面倒なので、全部まとめて持っていく。

 よし、紙と筆記用具確保!! 急いで戻ろう。

 颯爽と廊下を駆け抜けているところで、向かい角から歩いてくる存在に気付き慌てて足を止める。

 もはやスレスレだったのに咄嗟で衝突を回避できた自分を褒めたい。

「……なんでここに!?」

 そこに立っていたのは先程、突如部屋を飛び出したアルフォンス様でした。

 いや、私も今さっき同じ部屋を飛び出してきた所ではあるけどね。
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