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1話 我が愛し婚約者は、婚約破棄をしたいらしい
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それは定例になっている、僕と婚約者とのお茶会での出来事だった。
お茶と言っても形式的な堅苦しいものではなく、気楽に雑談でもしつつ親交を深める意味合いのものであったが……。
「じ、実は私悪役令嬢なんです……!! だから私との婚約を破棄して下さいませ!!」
その場にそぐわない思い詰めたような表情で、そのようなことを言い出したのは、スミレ色の髪にアメジストのような瞳を持つ愛しい僕の婚約者だった。
彼女の名はラテーナ・カルア。カルア侯爵家の令嬢で、第二王子である僕エキセルソ・レオ・アムハルの幼い頃からの婚約者である。
「どうして急に婚約破棄なんて……」
「だから、それは私が悪役令嬢だからです……!!」
「……僕に何か不満でもあったのかい?」
「違います、殿下は悪くありません……私が悪役令嬢だからです……!!」
そう言いながら、首を振る彼女はうつむきがちで今にも泣きだしそうな顔だった。
そんな彼女の顔をそっと包み込んで、僕は目を見ながら彼女に優しく語り掛ける。
「ラテーナ……もっとちゃんと訳を話してくれないか? 一体何がそんなに君を不安にさせているんだ……それとも僕は頼りにならないだろうか」
「い、いえ……そんなことはありませんが……」
「では全て話してくれ、そして君の悩みを僕が一緒に解決しよう」
彼女を安心させるためにそう言ってみたものの、いまだに不安そうな表情のラテーナはおずおずと僕の顔を見る。
「殿下は私が急におかしなことを言い出したと……頭がおかしくなったとは思わないのですか?」
「確かに今の君の様子は少しおかしいが、僕はラテーナのことを信頼しているからね……君が話してくれるのであれば、どんな話でもちゃんと聞くよ」
「……どんなに信じられない馬鹿馬鹿しいような話でもですか?」
「ああ、だって君は真剣に向き合おうとしてる人間に、嘘を付くような性格ではないと知っているからね」
そう言って僕が笑いかけると、彼女はついに何かが堪えきれなくなったのかボロボロと涙を流し始めた。
僕はそんな彼女の涙をハンカチを取り出して優しく拭う。
「で、殿下……」
「あとその呼び方も違うだろ? いつも通りセルと呼んでくれ」
「っっっセル様ぁ……」
「うん、よくできました僕の可愛いラテ」
そこで僕が彼女の頭をそっと撫でると、ラテーナは今日初めて安心したような表情を見せたのだった。
「それでは、改めて聞かせておくれ君をこんなにも不安にさせた【悪役令嬢】とは一体何なのかを……」
例えそれが何であろうとも、彼女を苦しませるものなら絶対に取り除かなければならない。
そんな決意を秘めて、僕は愛しの婚約者に優しく微笑みかけたのだった。
お茶と言っても形式的な堅苦しいものではなく、気楽に雑談でもしつつ親交を深める意味合いのものであったが……。
「じ、実は私悪役令嬢なんです……!! だから私との婚約を破棄して下さいませ!!」
その場にそぐわない思い詰めたような表情で、そのようなことを言い出したのは、スミレ色の髪にアメジストのような瞳を持つ愛しい僕の婚約者だった。
彼女の名はラテーナ・カルア。カルア侯爵家の令嬢で、第二王子である僕エキセルソ・レオ・アムハルの幼い頃からの婚約者である。
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「……僕に何か不満でもあったのかい?」
「違います、殿下は悪くありません……私が悪役令嬢だからです……!!」
そう言いながら、首を振る彼女はうつむきがちで今にも泣きだしそうな顔だった。
そんな彼女の顔をそっと包み込んで、僕は目を見ながら彼女に優しく語り掛ける。
「ラテーナ……もっとちゃんと訳を話してくれないか? 一体何がそんなに君を不安にさせているんだ……それとも僕は頼りにならないだろうか」
「い、いえ……そんなことはありませんが……」
「では全て話してくれ、そして君の悩みを僕が一緒に解決しよう」
彼女を安心させるためにそう言ってみたものの、いまだに不安そうな表情のラテーナはおずおずと僕の顔を見る。
「殿下は私が急におかしなことを言い出したと……頭がおかしくなったとは思わないのですか?」
「確かに今の君の様子は少しおかしいが、僕はラテーナのことを信頼しているからね……君が話してくれるのであれば、どんな話でもちゃんと聞くよ」
「……どんなに信じられない馬鹿馬鹿しいような話でもですか?」
「ああ、だって君は真剣に向き合おうとしてる人間に、嘘を付くような性格ではないと知っているからね」
そう言って僕が笑いかけると、彼女はついに何かが堪えきれなくなったのかボロボロと涙を流し始めた。
僕はそんな彼女の涙をハンカチを取り出して優しく拭う。
「で、殿下……」
「あとその呼び方も違うだろ? いつも通りセルと呼んでくれ」
「っっっセル様ぁ……」
「うん、よくできました僕の可愛いラテ」
そこで僕が彼女の頭をそっと撫でると、ラテーナは今日初めて安心したような表情を見せたのだった。
「それでは、改めて聞かせておくれ君をこんなにも不安にさせた【悪役令嬢】とは一体何なのかを……」
例えそれが何であろうとも、彼女を苦しませるものなら絶対に取り除かなければならない。
そんな決意を秘めて、僕は愛しの婚約者に優しく微笑みかけたのだった。
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