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第一章 鍵を拾う夢
第四話 推しは栄養
しおりを挟む「えっと、今日から一時的に手伝って
貰う野川ケイトさんです。みんな色々
教えてあげてね~…」
「野川です。この業界は初めてですが…
よろしくお願いします。純恋さんとは
親戚で…昔からの顔馴染みです」
女の子たちの視線を奪うケイト様。
そりゃそうだ、気を失いそうな程
ハンサムだもの。
「ちょっとちょっと純恋さん~!!
なんですかあの超ハイスペ彼氏~!!」
「教えた事ほぼ全部一発でできるし、
モデルみたいに顔もカッコいいし、
超レディーファースト!」
まぁ、中世貴族だからね。と言いかけた
口を閉じる。
実際、ケイト様は凄かった。
私が1週間程度教えたPCの使い方は
すぐに覚え、取引先の会社や社長、
営業の顔もすぐに覚えてしまった。
ウチの会社のコンセプト、それぞれの
部署との細かいやり取りやビジネス
マナーもすぐに覚えた。
「超いいですよね~、普段無口なのに
"ありがとうございます"
"すみません""おはようございます"
"お疲れ様でした"は絶対言うし!」
「それにあの見た目に反して意外と
優しいし~!」
「う~ん、正直俺らも中途で30代の
男性ってどうなんだろ~って思った
けど、意外となんか男っぽい感じの人で
サバサバしてるしチャラついて無いし
真面目だし正直めっちゃカッケ~、
男らしい~!」
「ね、ね、実際どうなんです?
親戚って言ってたけどぉ~…ずっと
海外暮らししてて久しぶりに会ったん
でしょ?しかも一緒に暮らしてるって…
漫画ですか!?」
漫画じゃなくてゲーム…アニメです。
もう、朝からずーーーーっとこれ。
この人たち、ケイト様の正体言ったら
なんて言うだろう。私の頭がおかしく
なったと思うかな。
「純恋」
ケイト様の声が私を呼ぶ。みんなが私を
ニヤニヤしながら見ている。私は自分の
頬が染まってるのがわかった。
呼ばれるだけで、見られるだけで心臓が
止まりそうな程ドキドキする。
「帰ろう」
「…はい…」
私とケイト様は肩を並べて帰り道を
歩いた。時刻は18時、まだ町は夕暮れに
染まっていて、私とケイト様は夕飯の
事を話しながら駅までの道を歩いた。
電車に揺られて家に着くと、晩御飯の
準備をケイト様は自ら手伝ってくれた。
なんか、こうしてると夫婦みたいだ。
いや、ケイト様ハイスペすぎて流石に
おこがましいか。ご飯を食べた後、
ベランダから夜の街を眺めた。
ベランダから見える景色は街中で、
めちゃくちゃ綺麗な夜景!では無い
けど、人々の暮らしが感じられる。
「…不思議な世界だな。誰も戦争の話や
徴税の話をしていない…平和な場所
なんだな。女性も働いてて子供たちが
遊ぶ為だけの庭園もあって…何より、
経済格差はあっても身分制度は無い。」
「そうですね…だからこそ、ケイト様が
生まれたのかもしれませんね。人は
自分に無いものを求めますから…」
「…純恋」
ケイト様の視線が急に真剣になって、
私はキュッと心臓を掴まれたみたいだった
「ケイト様…」
「…今度、試したい事がある」
「ここですね」
私たちは、スタプリの作者"星☆玉子"
先生の作業場だと言われている
マンションに来ていた。星先生は、
謎が多いと言われている。メディアにも
ほとんど出ないし、スタプリは単行本や
ゲーム、アニメも大ヒットを飛ばして
いるのに星先生の素性は全くわからない
と言われている。このマンションも、
噂程度で審議はわからない。
「どうします?会いに行きますか?」
「…いや…来たのはいいけど、どう
話せばいいかわからないな…」
「…でも、会いたいですよね…何か
わかるかもしれないし…マンションの
3階に住んでるらしいです。入って…」
言いかけた私の頭に、何かぶつかった。
痛みで涙目になりながら振り向くと
小学生くらいの男の子が、私の頭に
みかんを投げてきた。
「純恋!!」
もう一度投げられたみかんを、
ケイト様がキャッチする。構わず、
少年はもう一つ投げるがケイト様は
華麗な身のこなしでそれを蹴り返す。
蹴り返されたみかんは少年の顔に
直撃し、少年は後ろにひっくり返った。
「け、ケイト様落ち着いて!」
「止めるな!女性に食べ物をぶつける
なんて、男の風上にも置けない。
立て!!次は女の純恋じゃなくて俺に
投げろ!!この姑息な卑怯者が!!」
「っるせぇ!!王子に近寄んなよ!!
お前ら記者だろ!!そういうやつに
生活めちゃくちゃにされて、
迷惑なんだよ!!帰れよ!!」
「っお前「ケイト様、帰りましょう」
私はケイト様の服の袖を掴んだ。
「純恋「ケイト様、警察を呼ばれたら
色々と面倒です。他の手を考えましょ」
既にかなり人の目が集まっていた。
私はケイト様の手を取って、少年の前に
みかんを置いた。
「ごめんね。鼻血が出ないといいけど…
でも君、女の子には優しくしないとね」
「っな「バイバイ、次は連絡して来る」
私はケイト様と走って帰った。電車に
乗り、一度会社に行ってケイト様と
2人で会議室に入った。ケイト様は
会議室の椅子に座って頭を抱えた。
「ケイト様、花を贈ってみましょうか」
「花?」
「ええ…メッセージカードを添えて、
花を贈ってみましょう。興味を持って
くれたら、コンタクトを取れるかも。」
「またあの子供に邪魔をされたら…」
「…大丈夫だと思いますよ。今回私達は
いきなりマンションに立ち入ろうとした
から彼は抵抗したんです。好意的な事に
あんな攻撃的にならないと思います」
「…だといいが…」
私はケイト様と一緒に黄色いゼラニウムを入れた
花束を作り、会社の名前と
連絡先を添えて贈った。
マンションの前が騒がしい。
カーテンを開けて窓から見下ろすと、
庵音が人と争う姿が見えた。
また記者が来たんだろう、よくやるよ。
ったく、締め切り前に迷惑だっつーの。
女の方が周囲の目を気にして男を
取りなし、男の手を引っ張った。
その時、男の顔がちゃんと見えた。
「!!?」
それは、私の作ったキャラクター
"ケイト"にあまりによく似た男だった。
私はスリッパを履いてエレベーターで
降り、急いで彼らを追った。死ぬほど
走ったが、彼らが電車に乗ったのが
見えて、私は座り込んだ。
間に合わなかった。コスプレか?
いや、そんなレベルじゃなかった。
「朱雀先生…!!」
私は電車に乗った彼の顔を思い出し
ながらそう言った。もう二度と呼ぶ事の
ない名前だと思っていたのに。
ケイトにはスタプリのキャラの中で
唯一、モデルになった人物がいた。
もう二度と会えない、私の大切な人。
いるはずない、なら彼は何者だ?
他人なはずない。全く同じ容姿をして
いた。あれは誰?
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