恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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フルプレートの恐怖

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 白銀とかいう銀色のフルプレートアーマーを着込んだ女騎士がキレた。
 まぁ……原因は俺がバカにしたからだろう。
 とは言え、だ。
「ゴシップ記事を真に受けてっ! 人畜無害な人間に斬りかかってくるってっ! どう考えてもっ! 頭! おかしいだろっ!?」
 さらに付け加えれば、俺は女騎士に向かって剣を投げ付けたから丸腰である。
 が、バカにされた。というか、バカな女騎士は気にする素振りすら見せずに、
「人畜無害な四天王が居るわけがなかろう!」
「だから四天王じゃねぇよっ!!」
 女騎士は鎧を着込んでいるにも関わらず、少しでも気を抜けば追い付かれそうになるってのは、どんな体力をしているのだろうか。
 体力もバカなのかもしれない。
「絶対に斬り跳ばすっ!」
「騎士の風上にもおけねぇよっ!?」
 ここまでマーアに背負われていたお陰か、俺の体力は余裕がある。
 が、この調子で走り回されていれば、いつかはバテて、その時が人生最後になる。
 その前に女騎士がバテてくれればいいのだが……
「斬って斬って斬りまくるっ!!」
 鬼のような形相で迫ってくる様子からは、体力切れを待てるほどの猶予は無さそうに感じる。
「くそっ! おい、マーアっ!」
 と、他の兵士と戦っている黒いフルプレートのマーアへと声をかける。
「な、んだっ!!」
 マーアはマーアで、兵士の三人が斬りかかったにも関わらず、三本の剣を巨大なハンマーの柄で受け止め、さらに力業で弾き跳ばすという、なんとも狂戦士のような真似を繰り広げて見せる。
 絶対に聖女じゃない。分かっていたが、俺の確信が、さらに揺るぎないものになった。
「こっちは追い駆けっこをするほどの余裕はないぞっ!」
「こんな物騒な追い駆けっこがあってたまるかっ!?」
 ツッコミスキルのレベルアップ通知を聞き流しながら、俺はマーアに告げる。
「お前、デュラハンなんだからっ! 死の宣告で脅してやれっ!!」
「……それは使うまいと考えていたのだが…………致し方ないっ!」
「………………」
 妙な間があったような気がするんだが……ホントに考えてたのか?
「実は忘れ」
「食らうがいいっ! 『死の宣告』っ!!」
 なにも聞かれまいと、脅すよりも早く、死の宣告を発動させるマーア。
 それを半眼で見つめていた俺は、後で問い詰めようと心に決めました。
「貴様らの生殺与奪の権利はっ! たった今っ! 俺らが握ってやったっ!! 死にたくなければ! 王城まで道を開けてもらおうかっ!!!」
「なんてゲスな奴なのだ……」
「うるせぇ。元はお前のスキルなんだからな? ゲスの仲間だからな?」
 まぁいいや。これで王城で待っているモウ子や王子にも会うことが出来る。走り回っているうちに、城から遠ざかっちまったしな。
 と思っていたのだが、何故か雑兵どもが、ざわつき始める。
「……俺、なんともないぞ?」
「俺もだ」
 体に異変がないから、スキルが不発したと思われたのかもしれん。立ち止まっていた兵士らは、あらためて、武器を構え直し始めた。
「おっと早まるんじゃねぇぞ? こいつの効果はスキルカードに表示されんだよ」
 っと、兵士達に分かりやすくするため、俺は自前のスキルカードをヒラヒラと見せびらかす。

 剣術スキル:レベル十二
 ツッコミスキル:レベル九十七
 恐怖耐性スキル:レベル三千百二十八
 調理スキル:レベル百六十四
 ボケスキル:レベル八十五
 恐怖スキル:レベル三百四十三
 苦痛耐性スキル:レベル五十六

 獲得称号:猪突猛進、老いる者、怖い物知らず、可愛いモノ好き、十死一生、ぶれない心、畏怖、露出狂、耐える者、狂信者、乗り越える者≪恐怖≫、怖さ逸品、コックさん

 状態異常:死の宣告≪十二時間≫

「………………」
 あれ? あれれ? なぜか見覚えのある記載があるんですけど?
「……マーアさんや?」
「今度はなんだというのだ? フィル?」
「俺まで死の宣告を喰らってるんですけど? これはいったい?」
 混乱している俺を追い詰めるのは、半円状に広がりつつある雑兵どもの声だった。
「なにが死の宣告だっ!」
「あんな強力なスキルっ! 狂戦士が使えるわけがねぇ!」
「誰が狂戦士だっ!!」
 律儀にマーアは、雑兵に向かってツッコミを入れているが、俺はそれどころじゃなかった。
 何度も見返す『状態異常』の項目。

 状態異常:死の宣告≪十二時間≫

「………………」
 目にゴミが入ったんだろう。
 俺は目の端が擦り切れそうなほど擦り、スキルカードに穴が空きそうなほど、凝視する。

 状態異常:死の宣告≪十二時間≫

 何度見ても、
「……十二時間だな」
 俺の視界は、恐怖耐性のレベルアップアナウンスと共に暗転した。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

伊予二名
2019.09.26 伊予二名

当人の血でなくても構わないというのならば獣の血を素材に特注でインク作ればいいんじゃね?ってなった。

2019.09.26 シバトヨ

感想ありがとうございます!
確かにっ! その通りですね!

解除
咲
2019.09.14

なう(2019/09/14 06:35:41)
発想が非常に面白いですね!

2019.09.15 シバトヨ

感想ありがとうございます。
内容も、面白いモノが書ければと思いますので、暖かく見守っていただければ幸いです(^-^ゞ

解除

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