恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

文字の大きさ
上 下
64 / 66

王様の恐怖 再び

しおりを挟む
「おい、マーアっ! どうすんだよっ!!」
 城門までは、なんとか走って逃げ切ったマーアと俺だった。のだが、
「貴様は走ってないだろうがっ!」
 ……城に入るための桟橋は上げられており場内に入れない。周囲は囲まれているから逃げ場もない。
「貴様を棄てていけば、」
「今見捨てたらお前に取り付いてやるからな」
「くっ……!」
 背後は堀。まさしく背水の陣ってやつだ。

 ……これはあれだな。
「俺の恐怖スキルが覚醒する瞬間だな……!」

 ーーボケスキルのレベルが上昇しました。
 レベル:八十五

「ボケてねぇからっ!」
 わりと本気で言ったんだがっ!?
「この状況下でボケをかませるとは……っ!」
「そこっ! 驚愕してんじゃねぇよっ!」
 俺の発言をボケ扱いで処理をされたところをみると、覚醒するのは今ではないらしい。
 ……俺の時代は、いつか来るのだろうか?
「しょげるなっ! それよりも武器を構えろっ!」
 強制的に降ろされた俺は、しぶしぶ、アクセサリー感覚で腰に下げていた剣を両手で持つ。
 俺が増えたところで、二対二十以上。どう考えても勝てん。勝てるわけがねぇ。
「ってかモー子は? あいつ、なにしてんだよ?」
「モウコ殿は城内にいるはずだ。魔力の回復に専念している」
「あぁー……」
 一ヶ月前までは、ほぼほぼ毎日、魔力を吸い取り上げてたからなぁ~あいつ。
 かなりの魔力を使えるようだから、俺の家に住み着いた当初は、半日くらいで元の姿に戻ってたし。
 ただ、毎日の習慣が、毎週の習慣みたいに、回数が極端に減っていったのも事実。ecoモード機能でも搭載されたのだろうか?
「その回復速度を圧倒する勢いで魔力を枯渇させていた、貴様の能力に恐怖するばかりだ……」
「うるせぇ」
 俺だって、好きで魔力を奪い……いや、わりと好きに奪い取ってたな。うん。
「ともかくっ! 助っ人はいないっ! 私達でこの窮地をしのぐぞっ!」
「しのげる気がしねぇ……」
 と言いつつも、マーアが予備の武器を取り出しては……
「おい」
「なんだ?」
「なんでもっとマシな武器を持ってねぇんだよ?」
 今マーアが手にしているのは、どう見ても角材だ。角材で奮闘するつもりか?
 ちなみに、闘技場で使用していた武器は、ここまで逃げる際に投てきして失っている。主に俺のせいだけど。
「……私に武器を売るような人間が居るとでも?」
 と言われ、俺は見慣れてしまった全身鎧の戦闘狂を見詰める。
「……ごめん」
「分かればいい」



 そんなくだらない会話をしていると、俺達を囲んでいた兵士らが次々と斬りかかってきた。
「このっ!」
 俺はなんとか応戦するが、鎧にアクセサリー的な武器ではダメージは与えられない。少なくとも、怯ませることはムリだ。
 だからといって、手を伸ばして魔力を奪える訳でもない。……駆け出しの兵士に負けるような冒険者だぞ?
 どいつもこいつも、一番弱そうな奴でも、俺より強いだろうなぁ……。
「ぐすん」
「泣いとる場合っ! かっ!!」
 俺に叱責を飛ばしながら、兵士二人を角材で殴り飛ばす。
「角材強ぇえ!」
 が、すぐにへし折れてしまう。
「角材弱ぇえ……」
「いちいちリアクションしてないで! 真面目に戦えっ!!」
 完全な素手になったマーアは、それでも兵士達を拳でしばいていく。
「えぇい! まずは罪人から仕留めろっ!」
 馬に乗っている上官から指示が下される。
 ってか、すでに指示通りに近い行動をしているんですけど? はじめから、俺を狙ってきている奴の方が大半ですけどっ!?

「待たせたのう!」

 と、主人公が仲間のピンチを救いに来たかのような声を、燦々さんさんと輝く青空へと響かせる声!

「この私! サン・ディオール・マキナ! 今こそ! 巨悪を打ち倒そうぞっ!!」

「誰だよっ!?」

 ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
 レベル:九十五

 見知らぬ女兵士に向かって、俺はツッコミと共に剣を投げつけた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...