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王様の恐怖 再び
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「おい、マーアっ! どうすんだよっ!!」
城門までは、なんとか走って逃げ切ったマーアと俺だった。のだが、
「貴様は走ってないだろうがっ!」
……城に入るための桟橋は上げられており場内に入れない。周囲は囲まれているから逃げ場もない。
「貴様を棄てていけば、」
「今見捨てたらお前に取り付いてやるからな」
「くっ……!」
背後は堀。まさしく背水の陣ってやつだ。
……これはあれだな。
「俺の恐怖スキルが覚醒する瞬間だな……!」
ーーボケスキルのレベルが上昇しました。
レベル:八十五
「ボケてねぇからっ!」
わりと本気で言ったんだがっ!?
「この状況下でボケをかませるとは……っ!」
「そこっ! 驚愕してんじゃねぇよっ!」
俺の発言をボケ扱いで処理をされたところをみると、覚醒するのは今ではないらしい。
……俺の時代は、いつか来るのだろうか?
「しょげるなっ! それよりも武器を構えろっ!」
強制的に降ろされた俺は、しぶしぶ、アクセサリー感覚で腰に下げていた剣を両手で持つ。
俺が増えたところで、二対二十以上。どう考えても勝てん。勝てるわけがねぇ。
「ってかモー子は? あいつ、なにしてんだよ?」
「モウコ殿は城内にいるはずだ。魔力の回復に専念している」
「あぁー……」
一ヶ月前までは、ほぼほぼ毎日、魔力を吸い取り上げてたからなぁ~あいつ。
かなりの魔力を使えるようだから、俺の家に住み着いた当初は、半日くらいで元の姿に戻ってたし。
ただ、毎日の習慣が、毎週の習慣みたいに、回数が極端に減っていったのも事実。ecoモード機能でも搭載されたのだろうか?
「その回復速度を圧倒する勢いで魔力を枯渇させていた、貴様の能力に恐怖するばかりだ……」
「うるせぇ」
俺だって、好きで魔力を奪い……いや、わりと好きに奪い取ってたな。うん。
「ともかくっ! 助っ人はいないっ! 私達でこの窮地をしのぐぞっ!」
「しのげる気がしねぇ……」
と言いつつも、マーアが予備の武器を取り出しては……
「おい」
「なんだ?」
「なんでもっとマシな武器を持ってねぇんだよ?」
今マーアが手にしているのは、どう見ても角材だ。角材で奮闘するつもりか?
ちなみに、闘技場で使用していた武器は、ここまで逃げる際に投てきして失っている。主に俺のせいだけど。
「……私に武器を売るような人間が居るとでも?」
と言われ、俺は見慣れてしまった全身鎧の戦闘狂を見詰める。
「……ごめん」
「分かればいい」
そんなくだらない会話をしていると、俺達を囲んでいた兵士らが次々と斬りかかってきた。
「このっ!」
俺はなんとか応戦するが、鎧にアクセサリー的な武器ではダメージは与えられない。少なくとも、怯ませることはムリだ。
だからといって、手を伸ばして魔力を奪える訳でもない。……駆け出しの兵士に負けるような冒険者だぞ?
どいつもこいつも、一番弱そうな奴でも、俺より強いだろうなぁ……。
「ぐすん」
「泣いとる場合っ! かっ!!」
俺に叱責を飛ばしながら、兵士二人を角材で殴り飛ばす。
「角材強ぇえ!」
が、すぐにへし折れてしまう。
「角材弱ぇえ……」
「いちいちリアクションしてないで! 真面目に戦えっ!!」
完全な素手になったマーアは、それでも兵士達を拳でしばいていく。
「えぇい! まずは罪人から仕留めろっ!」
馬に乗っている上官から指示が下される。
ってか、すでに指示通りに近い行動をしているんですけど? はじめから、俺を狙ってきている奴の方が大半ですけどっ!?
「待たせたのう!」
と、主人公が仲間のピンチを救いに来たかのような声を、燦々と輝く青空へと響かせる声!
「この私! サン・ディオール・マキナ! 今こそ! 巨悪を打ち倒そうぞっ!!」
「誰だよっ!?」
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:九十五
見知らぬ女兵士に向かって、俺はツッコミと共に剣を投げつけた。
城門までは、なんとか走って逃げ切ったマーアと俺だった。のだが、
「貴様は走ってないだろうがっ!」
……城に入るための桟橋は上げられており場内に入れない。周囲は囲まれているから逃げ場もない。
「貴様を棄てていけば、」
「今見捨てたらお前に取り付いてやるからな」
「くっ……!」
背後は堀。まさしく背水の陣ってやつだ。
……これはあれだな。
「俺の恐怖スキルが覚醒する瞬間だな……!」
ーーボケスキルのレベルが上昇しました。
レベル:八十五
「ボケてねぇからっ!」
わりと本気で言ったんだがっ!?
「この状況下でボケをかませるとは……っ!」
「そこっ! 驚愕してんじゃねぇよっ!」
俺の発言をボケ扱いで処理をされたところをみると、覚醒するのは今ではないらしい。
……俺の時代は、いつか来るのだろうか?
「しょげるなっ! それよりも武器を構えろっ!」
強制的に降ろされた俺は、しぶしぶ、アクセサリー感覚で腰に下げていた剣を両手で持つ。
俺が増えたところで、二対二十以上。どう考えても勝てん。勝てるわけがねぇ。
「ってかモー子は? あいつ、なにしてんだよ?」
「モウコ殿は城内にいるはずだ。魔力の回復に専念している」
「あぁー……」
一ヶ月前までは、ほぼほぼ毎日、魔力を吸い取り上げてたからなぁ~あいつ。
かなりの魔力を使えるようだから、俺の家に住み着いた当初は、半日くらいで元の姿に戻ってたし。
ただ、毎日の習慣が、毎週の習慣みたいに、回数が極端に減っていったのも事実。ecoモード機能でも搭載されたのだろうか?
「その回復速度を圧倒する勢いで魔力を枯渇させていた、貴様の能力に恐怖するばかりだ……」
「うるせぇ」
俺だって、好きで魔力を奪い……いや、わりと好きに奪い取ってたな。うん。
「ともかくっ! 助っ人はいないっ! 私達でこの窮地をしのぐぞっ!」
「しのげる気がしねぇ……」
と言いつつも、マーアが予備の武器を取り出しては……
「おい」
「なんだ?」
「なんでもっとマシな武器を持ってねぇんだよ?」
今マーアが手にしているのは、どう見ても角材だ。角材で奮闘するつもりか?
ちなみに、闘技場で使用していた武器は、ここまで逃げる際に投てきして失っている。主に俺のせいだけど。
「……私に武器を売るような人間が居るとでも?」
と言われ、俺は見慣れてしまった全身鎧の戦闘狂を見詰める。
「……ごめん」
「分かればいい」
そんなくだらない会話をしていると、俺達を囲んでいた兵士らが次々と斬りかかってきた。
「このっ!」
俺はなんとか応戦するが、鎧にアクセサリー的な武器ではダメージは与えられない。少なくとも、怯ませることはムリだ。
だからといって、手を伸ばして魔力を奪える訳でもない。……駆け出しの兵士に負けるような冒険者だぞ?
どいつもこいつも、一番弱そうな奴でも、俺より強いだろうなぁ……。
「ぐすん」
「泣いとる場合っ! かっ!!」
俺に叱責を飛ばしながら、兵士二人を角材で殴り飛ばす。
「角材強ぇえ!」
が、すぐにへし折れてしまう。
「角材弱ぇえ……」
「いちいちリアクションしてないで! 真面目に戦えっ!!」
完全な素手になったマーアは、それでも兵士達を拳でしばいていく。
「えぇい! まずは罪人から仕留めろっ!」
馬に乗っている上官から指示が下される。
ってか、すでに指示通りに近い行動をしているんですけど? はじめから、俺を狙ってきている奴の方が大半ですけどっ!?
「待たせたのう!」
と、主人公が仲間のピンチを救いに来たかのような声を、燦々と輝く青空へと響かせる声!
「この私! サン・ディオール・マキナ! 今こそ! 巨悪を打ち倒そうぞっ!!」
「誰だよっ!?」
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:九十五
見知らぬ女兵士に向かって、俺はツッコミと共に剣を投げつけた。
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