恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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マーアの恐怖 再び

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「決行っ!」

 その叫び声が聞こえたのと、私が武器を投げつけたのは、ほとんど同じタイミングであった。
 いつもハンマーだの、トンカチだのと間違われていた私のメイスは、縦に回転しながらも、男の首に迫る刃を打ち砕く。
 爆発でもしたかのような騒音を撒き散らし、処刑台は倒壊。泣きわめいていた男は、なにが起こったのか分からずに辺りをせわしなく見渡す。
 仕方がない。正体を明かしてやることにしよう。

「フィル殿っ!」

 手枷を力業で壊し、フィル殿の拘束を剥がしていく。
「ま、マーア……なのか?」
「こんな鎧姿の聖女など、二人も居るはずがなかろう」
 処刑から救われるとは思っていなかったのか、半ば混乱しているフィル殿を担ぎ上げる。
「聞けっ! 反逆者共っ!!」
 私は、
「貴様らの野望は、我らが食い破るっ!」
 ハンマーを一人の男へと向け、
「このっ! 聖女っ! マーア・サイトがっ! 貴様ら全員を牢屋に入れてやるとしようっ!!」
 宣戦布告した。



 処刑場では、王国の兵士ではなく、反逆者共に囲まれた状況に陥っていた。
「どうすんだよっ!? これっ!?」
 この現状に追いやった確信犯へと文句を垂れるが、その確信犯はと言えば、
「ふはははっ! これがっ! 本当の戦いというものだぁぁぁあああっ!!」
 嬉々として戦闘狂になっていた。
 間違いない。あれは聖女と言うだけのバーサーカーだ。
「うおっ!?」
 久しぶりに扱う長さ五十センチちょっとの剣で、降りかかってきた火球を切り落とす。
「おいっ! 魔法兵まで居るじゃねえかっ!?」
「そんなことはどうでもよいっ!」
 どうでもよくねぇよっ!
 魔法兵というのは、書いて字のごとく、魔法を攻撃手段として用いてくる兵士の事だ。
 俺の知っている顔の中では、意外にも、モー子が魔法兵という扱いになる。
 あいつ、いつもは肉体の強化に魔法を盛り込んでいるが、実際には遠距離からの魔法乱射も可能。という、遠近どちらもこなせる人材なんだよなぁ。
 ほんと、ミノタウロスの進化種というだけの事はある。
「ちっ……鬱陶しいな。おいっ!」
「なんだようわっ!?」
 再び、それも突然に担ぎ上げられた俺は、魔法兵が束になっている方向に体ごと向けられる。
「おい……まさかじゃねぇだろうな?」
 まるで、大砲で敵の陣地へと狙いを定められたかのような。というか、砲弾の気分なんだが?
「そいやっ!」
「そいやっ! じゃねぇぇぇえええよぉぉぉおおお!!!」
 投げ飛ばされ、俺は顔面から魔法兵の中央に着弾した。
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