恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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『怖さ逸品』の恐怖

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 まさか尋問官が魔人で、国の反逆を進めてるとは思わなかった。
 まぁ、正確には、反逆をくわだてている事は、誘われた時点でなんとなく理解していたが。
「でも、なんで俺なんだ? 自分で言うのもなんだが、戦闘系スキルはほとんど無いし、隠密とか先導、陽動とかも無理だぞ?」
「戦闘系に関しては期待されてねぇだろうな」
 あんだと?
「ってか、今挙げたどれでも、おめぇは役立たずだよ」
「ちょっと表に出ろや」
 俺がどれだけ戦えるか試してやる。
「おめぇが惨敗する時間が無駄だから却下だ。話を戻すが、おめぇの獲得した称号の一つが、アイツらの目的だろうな」
「あんだと、この野郎! 新しい称号?」
「説明が終わったら治療院送りにしてやるから覚悟しとけ。あぁ、怖さ逸品って称号が、アイツらの目的だろうな」
「上等だっ! ってか、俺の獲得した称号の説明を聞いても?」
「よし分かった。時間が惜しいから、ざっと三つ。反逆者どもの欲しがっている称号についてだけ説明してやる」
 と、不良同士の口喧嘩を交えながらも、支部長は三枚の紙をテーブルの上に置く。
「まずはコイツだ」
 指を突かれたのは、
「怖さ逸品。こいつは恐怖付与スキルを一定レベルまで上げることで得られる称号な訳だが、そいつの効果は、相手の耐性系スキルを一段階下げるってなもんだ」
「耐性系スキルを?」
「そうだ」
「ってことは、無効化なら下位の耐性スキルにするってことか?」
「いや、無効化の一段階下は回避だな。その次は半減。さらに下に耐性だ」
 耐性スキルって意外と下なんだな。
 まぁ、俺の恐怖耐性スキルは、無効化に等しいのレベルだからな。
「ってか、それだと、相手を異常状態に掛けやすくなるってことか?」
「そうだな。おめぇみたいなキチガイなレベルの耐性持ちならともかく、無効化スキルは例外なく、スキルレベル一で頭打ちだからな」
 無効化だからな。受けて発動する耐性系スキルの集大成みたいなもんか。
「そんで……残りの二つはまだ未獲得になるわけだが」
 支部長は、指で突いていた紙をテーブルの端にどけ、残りの二枚を並べる。
「恐怖魔王と窮鼠きゅうそだ」
「魔王にネズミ?」
 っと、突如として、俺に一つの疑問が沸き上がる。
「なんで俺が、その二つの称号を獲得することになるんだ? ってか、そんなのが分かるのか?」
 獲得している称号なら、そいつらを鑑定する事で情報を書き起こす事が可能なのも理解できる。
 だが、俺の手元にあるスキルカードには、今言われた称号はどこにも記載されていない。裏側も確認したから、確認漏れはない。
「これはここだけの話なんだがな……鑑定スキルの亜種に予知鑑定ってのがある。そいつの応用で、スキルカードのカードを調べて貰ったわけだ」
「……そんなのがあるのか?」
「あぁ。内部機密だから、てめぇが知らねぇのも無理はねぇ。……外で喋んなよ?」
 喋れば制裁されそうだ。黙っておくことにしよう。
「でだ。恐怖魔王の効果は、簡単に言やぁ、怖さ逸品の上位版だ。逸品と効果を重複させて、合計で二段階の耐性系スキルを弱体化させる。おまけに、魔力系のステータスをレベル分だけ倍増させる。まぁ、レベルの数値のまま倍増って訳じゃねえが、おめぇのスキルレベルだと……ざっと五十倍くらいにはなるんじゃねぇか?」
「ご、五十倍っ!?」
 なんだそれっ! もう無敵じゃねえかっ!
「元がザコだから、大して脅威でもねぇがな」
「ザコ言うなし」
 ま、まぁ。魔法に頼った戦闘なんか、俺の柄じゃねぇからな。……今までろくな戦闘をした記憶もねぇが。
「っと、もう一つの窮鼠だが……こいつが、おめぇを仲間に誘ってる理由だろうな」
 淡々と話していた支部長は、テーブルに肘をついて両手を組む。
「こいつの効果は、特定の条件時に、スキルレベル分のダメージを周囲に撒き散らすってもんだ。その特定の条件ってのも、おめぇの体力量が一定値未満になった時に発動する。言わば逆転の一撃だな」
「……なぁ」
「なんだ?」
「スキルレベルってのは、単体のスキルレベルの事を言ってるのか?」
 今までの説明は、あくまでも獲得称号の説明だ。
 称号にはレベルって概念がないし、そもそもスキルじゃねぇし。
 となれば、称号を獲得する際の条件に当てはまるスキルのレベル。そう考えるのが自然だろう。
 そして、もう一つは、
「この二つの称号は、おめぇが所持しているスキルの合計値を指してる。だから……あぁ…………人が集まる街中で、死ぬんじゃねぇぞ?」
「そのときは周りの人間を巻き沿いにしてやるよっ!」
「それをすんなっつってんだよっ!」
 テーブルを叩いて威嚇してくる支部長だが、俺への攻撃は自滅覚悟で行ってもらう必要があるな。
「まだ未所持だから、今殺せば万事解決だな」
「この人殺しっ!」
「じょ、冗談に決まっとるだろうがっ!」
 殺意めいたもの感じ取ったんですが?
「まぁいい。ともかく、お前がこれから獲得してくであろう称号を、クラネル共は狙ってんだ」
 くれぐれも注意しとけよ。と言われたが、俺にどうしろと?
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