恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

文字の大きさ
上 下
51 / 66

刑務所の恐怖 再び

しおりを挟む
 モウコ殿と本気の鬼ごっこをしたおかげか、到着予定に遅れるはずだった道程が、到着予定通りになった。
 もちろん、その代償は私とモウコ殿の体力を枯渇させるのだったが。
「す、少し、休んで、から、なの、じゃ」
「ど、同感、だ」
 二人ともが両膝に手をついて、呼吸を荒げる。
「つい、でに、これ、から、の、予定、を、話、すと、しよう」
「そう、じゃの」
 私は王都の門が見える近くの平原を陣取る。

 呼吸が落ち着いた私達は、王都に入ってからの予定を話し合う。
「まずは寝床の確保なのじゃ!」
 確かに、何日滞在するのか分からない以上、宿屋を確保しておく必要はある。
 しかし、私の財布はかなり厳しい状況に追い込まれている。
 道中の食事は、狩りをする事でなんとかしのいでいたが……。
 それに、王都での宿は需要と供給のバランスが崩れていると聞く。
 聖女の体であった時は、聖女という立場から、教会に一室を借りていたのだが……聞いた噂では、今、生活している私の宿屋の十倍。五万ゴールドほどするとか、しないとか。
 これが真実かつ、一泊の値段であるとするなら……
「二泊も出来んのだが?」
「宿の次は風呂じゃ! 湯浴みは出来ずとも、せめて水浴びはしたいのじゃ!」
「それは私も同感だ」
「……貴様の鎧、脱げるのかのぉ?」
「いつもは鎧のまま入っている」
「間違いなく我も追い出されるのじゃ」
「心配はいらん。風呂に行くと、大抵無人であるからな」
「……それは、貴様が恐ろしいからじゃろうて」
 モウコ殿には半分呆れられてしまっているが、入っても注意を受けないならば、堂々と入ればいいだけの事。
「私はやましいことを一切していないっ!」
「とても聖女とは思えぬ発言じゃのぉ……」
 モウコ殿に粘りっ気のある視線で見つめられるが……話を煮詰めた私達は、王都の門を潜る決意を固めた。
 フィル殿が連行されてから一ヶ月。
 罪状から考えるならば、懲役二年が最低ライン。
 もし脱獄をしているとすれば、王都から離れているはすだが。
「………………」
 王都の監獄から抜け出せるようなスキルを彼は所持していない。
 戦闘系に関しても、剣術スキルの下位レベル。むしろ冒険者と名乗るのも、おこがましい話だ。
 彼の一番協力なスキルは、恐怖耐性スキル。三千を越えるレベルは、まさしく超人。
 今までの最高レベルは一万五百三十八。
 それが、なんの、どんなスキルかまでは知らないが、そこまでレベルが上昇する可能性を秘めている。もっと言えば、さらに最高レベルその先も。
「ともかく」
「そうじゃの」
「フィル殿と合流するぞっ!」「最高級の宿屋じゃっ!」

 私はモウコ殿の首根っこを掴み上げ、刑務所へと歩いていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...