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王国の恐怖
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「まずはこの国の状態をお伝えします」
そう切り出した若き王様は、俺に国の内情を話してくれた。
街に住んでいるだけでは分からない。
たが、確実に腐敗している現状。
「この国は今、私の命令が届かない状況となっております」
命令が届かない?
「それは、私が若いというのもあるのですが……反乱分子が国政の内部まで浸透しているのも原因の一つなのです」
反乱分子ってのは、恐らく、俺の尋問を担当していたクラネルさんも、その一人なんだろう。
「財政と法案、それに外交。この三つは掌握されたと言っても過言じゃありません」
「うげぇ……」
金にルールに付き合いまで。ほぼ詰みじゃん。
俺ならとっくにギブアップなんだが。
「地方であれば、法案はともかく、外交や財政の影響は少ないかと思います。我々人とほとんど同じ魔人の方々が、害悪のように唱われているのは、外交官の策略に依るものなのです。他のところも……」
悲しげな表情で語る王様。
「この国を内側から崩し、最終的には大陸全土を我が物にしようと企んでいる者がいるのです。誰が黒幕かまでは……分かっていないのですが」
「黒幕なぁ~」
そんな奴がこの大陸に居るのだろうか。……全然分からん。
少なくとも、
「魔王ではなさそうだよなぁ」
「フィル君は魔王さんを知ってるんですか?」
「いんや。面識はねぇなぁ」
モー子からは、相当な変態って聞いているが。
「そういや、ミミックは魔王四天王の座を争っているんだよな?」
「争うってほど本腰を入れている訳じゃないけどね。他の人達は気合いいれてるよね」
あれ?
「モー子なんか、魔王から離れるために四天王を目指すのじゃっ! みたいな事を言っていたぞ?」
「まぁ……女性人には不人気かな…………ははは」
笑って誤魔化すミミック。
そんな変態なのか、魔王って奴は。
「私も魔王様に一度会いましたが……ははは」
若い王様も苦笑い。やべぇな、魔王って奴は。本当にヤバイ。
「そうですか? 私はお姉さんが出来たようで、楽しかったですよ?」
「お姉さん? え? 魔王って女なの?」
「「「そうですよ?」」」
そんな一般常識ですよ? みたいな感じで言われても。
「まぁ、魔王が大陸の支配を望んでは……あれ?」
なんで全員、思い悩んでいるんですかね?
「心当たりがゼロって訳でもないんですよね……ははは」
おい魔王。
「ただ、今回の黒幕は、少なくとも魔王さんでないですよ?」
「なんで言い切れるんだ?」
「だって魔王さん、今、この世界にいないですからね」
「「「はい?」」」
この世界にいない? どいうこと?
「今、魔王さん、異世界で勇者やってますから」
「「「………………」」」
訳が分からん。
は? 異世界で勇者? 魔王なのに?
「まぁ、経緯はともかく、今の魔王さんでは、この国の支配とかは出来ないですから」
「まぁ、いない人間が支配とか出来ねぇからな」
「やはり……国の内部に潜んでいるのでしょうか?」
自国民を疑うことに抵抗があるのか、姫様はうつむく。
「それより。今は反逆? だっけか? なにか策はねぇのか?」
ぶっちゃけ、戦闘とかならマーア辺りを引っ張ってこれば万事解決だろうが、政治になると点で力が発揮できねぇからなぁ。
「法案を押さえられているので、力業では勝負になりません。搦め手を利用しようにも、財政と外交も押さえられてますので……」
「助けを外に求めたくても、外に伝達できない。おまけに報酬を払うことも出来ないから、国とは独立している協会に依頼することも難しい。そんなところだね」
こんな状況でも、爽やかさを失わずにペラペラと話すミミック。
だが、言う通りなんだよなぁ~。
「せめて街中を巡られている聖女様がいらっしゃいましたら」
うん?
「居たらなんとかなるのか?」
「はい。協会とは別の独立組織である教会は、聖女様を中心に構成されている民なのです。慈善活動が目的の組織でもありますし、政の知識にも富んでいる方なのです」
あれが? あのヤンキー聖女が?
全然、政治に疎そうな感じだったが。
むしろ、喧嘩上等っ! 俺が法案っ! 文句のある奴は掛かって来いやぁっ!! みたいな感じなんだが。
「聖女なら俺が住んでいる街の近くの村で、療養しているぞ?」
「り、療養っ!?」
あれ? 意外とオーバーなリアクションをされるんですね。
「け、怪我をされたのですかっ!?」
「い、いや~……心の怪我?」
言えない。俺のせいとは言えない。
「って、姫様のスキル? で、俺の過去を観れるんだろ?」
「観ることは出来るのですが、使用するのにいくつかの条件があるのです」
あんたもか。
「条件としては、一日三回まで。一度の使用から二度目の使用まで三時間は時間が必要なこと。それと、一度で観れるのは、名前を存じ上げている方の一ヶ月以内の過去までなのです。大まかな制約はこんなところですわ」
「なら、もう一度観るには、少なくとも三時間は間を開ける必要があるんだなぁ」
便利であればあるほど、ルールが厳しくなるんだな。
「フィル君、そろそろ戻らないと」
「あ? あぁ、もうそんな時間か?」
消灯前の人員点呼に間に合わなければ、高確率で罰が課せられる。
トイレに行っていて遅れました! では、間違いなく罰が下る。
ってか、四日前にトイレに行っていた囚人の一人が罰を受けていた。内容は定かじゃないが。
「そんじゃ、外に出れたら聖女を連れてくる」
「お願いします、フィル様」
「様はいらねぇよ。そんじゃ、な」
ミミックと共に、開けっぱなしだった箱へと体を入れていく。
そして、箱のフタを閉じた。
時間的には、まだ五分ちょっとはあるはずだ。
ついでにトイレで用を済ませて、点呼に行けばオーケーだろう。
そう切り出した若き王様は、俺に国の内情を話してくれた。
街に住んでいるだけでは分からない。
たが、確実に腐敗している現状。
「この国は今、私の命令が届かない状況となっております」
命令が届かない?
「それは、私が若いというのもあるのですが……反乱分子が国政の内部まで浸透しているのも原因の一つなのです」
反乱分子ってのは、恐らく、俺の尋問を担当していたクラネルさんも、その一人なんだろう。
「財政と法案、それに外交。この三つは掌握されたと言っても過言じゃありません」
「うげぇ……」
金にルールに付き合いまで。ほぼ詰みじゃん。
俺ならとっくにギブアップなんだが。
「地方であれば、法案はともかく、外交や財政の影響は少ないかと思います。我々人とほとんど同じ魔人の方々が、害悪のように唱われているのは、外交官の策略に依るものなのです。他のところも……」
悲しげな表情で語る王様。
「この国を内側から崩し、最終的には大陸全土を我が物にしようと企んでいる者がいるのです。誰が黒幕かまでは……分かっていないのですが」
「黒幕なぁ~」
そんな奴がこの大陸に居るのだろうか。……全然分からん。
少なくとも、
「魔王ではなさそうだよなぁ」
「フィル君は魔王さんを知ってるんですか?」
「いんや。面識はねぇなぁ」
モー子からは、相当な変態って聞いているが。
「そういや、ミミックは魔王四天王の座を争っているんだよな?」
「争うってほど本腰を入れている訳じゃないけどね。他の人達は気合いいれてるよね」
あれ?
「モー子なんか、魔王から離れるために四天王を目指すのじゃっ! みたいな事を言っていたぞ?」
「まぁ……女性人には不人気かな…………ははは」
笑って誤魔化すミミック。
そんな変態なのか、魔王って奴は。
「私も魔王様に一度会いましたが……ははは」
若い王様も苦笑い。やべぇな、魔王って奴は。本当にヤバイ。
「そうですか? 私はお姉さんが出来たようで、楽しかったですよ?」
「お姉さん? え? 魔王って女なの?」
「「「そうですよ?」」」
そんな一般常識ですよ? みたいな感じで言われても。
「まぁ、魔王が大陸の支配を望んでは……あれ?」
なんで全員、思い悩んでいるんですかね?
「心当たりがゼロって訳でもないんですよね……ははは」
おい魔王。
「ただ、今回の黒幕は、少なくとも魔王さんでないですよ?」
「なんで言い切れるんだ?」
「だって魔王さん、今、この世界にいないですからね」
「「「はい?」」」
この世界にいない? どいうこと?
「今、魔王さん、異世界で勇者やってますから」
「「「………………」」」
訳が分からん。
は? 異世界で勇者? 魔王なのに?
「まぁ、経緯はともかく、今の魔王さんでは、この国の支配とかは出来ないですから」
「まぁ、いない人間が支配とか出来ねぇからな」
「やはり……国の内部に潜んでいるのでしょうか?」
自国民を疑うことに抵抗があるのか、姫様はうつむく。
「それより。今は反逆? だっけか? なにか策はねぇのか?」
ぶっちゃけ、戦闘とかならマーア辺りを引っ張ってこれば万事解決だろうが、政治になると点で力が発揮できねぇからなぁ。
「法案を押さえられているので、力業では勝負になりません。搦め手を利用しようにも、財政と外交も押さえられてますので……」
「助けを外に求めたくても、外に伝達できない。おまけに報酬を払うことも出来ないから、国とは独立している協会に依頼することも難しい。そんなところだね」
こんな状況でも、爽やかさを失わずにペラペラと話すミミック。
だが、言う通りなんだよなぁ~。
「せめて街中を巡られている聖女様がいらっしゃいましたら」
うん?
「居たらなんとかなるのか?」
「はい。協会とは別の独立組織である教会は、聖女様を中心に構成されている民なのです。慈善活動が目的の組織でもありますし、政の知識にも富んでいる方なのです」
あれが? あのヤンキー聖女が?
全然、政治に疎そうな感じだったが。
むしろ、喧嘩上等っ! 俺が法案っ! 文句のある奴は掛かって来いやぁっ!! みたいな感じなんだが。
「聖女なら俺が住んでいる街の近くの村で、療養しているぞ?」
「り、療養っ!?」
あれ? 意外とオーバーなリアクションをされるんですね。
「け、怪我をされたのですかっ!?」
「い、いや~……心の怪我?」
言えない。俺のせいとは言えない。
「って、姫様のスキル? で、俺の過去を観れるんだろ?」
「観ることは出来るのですが、使用するのにいくつかの条件があるのです」
あんたもか。
「条件としては、一日三回まで。一度の使用から二度目の使用まで三時間は時間が必要なこと。それと、一度で観れるのは、名前を存じ上げている方の一ヶ月以内の過去までなのです。大まかな制約はこんなところですわ」
「なら、もう一度観るには、少なくとも三時間は間を開ける必要があるんだなぁ」
便利であればあるほど、ルールが厳しくなるんだな。
「フィル君、そろそろ戻らないと」
「あ? あぁ、もうそんな時間か?」
消灯前の人員点呼に間に合わなければ、高確率で罰が課せられる。
トイレに行っていて遅れました! では、間違いなく罰が下る。
ってか、四日前にトイレに行っていた囚人の一人が罰を受けていた。内容は定かじゃないが。
「そんじゃ、外に出れたら聖女を連れてくる」
「お願いします、フィル様」
「様はいらねぇよ。そんじゃ、な」
ミミックと共に、開けっぱなしだった箱へと体を入れていく。
そして、箱のフタを閉じた。
時間的には、まだ五分ちょっとはあるはずだ。
ついでにトイレで用を済ませて、点呼に行けばオーケーだろう。
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