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王様の恐怖
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そして、王様の元へと移動する日がやって来た。
ミミックから移動方法を聞いて二日後。
俺とミミックは、例のトイレで準備を着々と進めていた。
「今更だけど、二人で移動って出来るのか?」
板を馴れた手付きではめ込みながら、
「うん。以前、王子にごねられてね。試してみたら出来たんだよ。まぁ、箱の外には出ないで、フタを開いてすぐ帰宅。だったけどね」
王様との面識だけでなく、その子供とも面識があるとは。
ってか、魔人って、そんな国の中枢に居て問題ないのか?
まぁ、魔王が攻めてくるっ! みたいな話は聞かねぇけど。
「さて、準備が出来たから、早速向かおうか」
「そんじゃ、よろ」
「着いたよ」
「………………」
はえぇ~。
よろしくって単語すら言い切れずに着いちまったぞ。
思わず無言でミミックを見つめるが、彼は天井ーー箱のフタを押し開く。
「先に行くけど、許可を貰うまではここに居てね。フタは開けとくから」
「おう」
勝手に出ていって、逮捕される。なんてオチは要らねぇからな。
爽やかイケメン万能ミミックさんを見送り、俺は箱の底に腰を下ろした。
フタは言われた通り、開け放っているので、部屋の天井に綺麗な星の装飾が施されている事が分かる。
逆に言うと、それ以外はまったく分からん。
そんな状態で、待つこと十数分。
「お待たせ」
体育座りで待っていると、天井にミミックが顔を覗かせて声をかけてきた。
「もう出て良いのか?」
「うん。王様にも許可を得たから」
言われて、俺は箱の角に手をかけて這い出ていく。
ミミック以外に二人の子供がいた。
一人は王冠を頭に乗せている男の子。もう一人は女の子だ。
「その子らが、王子と……姫様? なのか?」
「う~ん……元王子様と姫様かな? 今は王様をしているよ」
「へぇ~……」
は?
「王様?」
「うん」
「マジで?」
「マジで」
そんなやり取りをミミックとしていると、件の王様が自己紹介を始める。
「はじめまして。私が大陸国家の国王に就任した、フォード・カンネと申します。フォードとお呼びください」
めちゃくちゃ丁寧!
王様というからには、もっと偉そうな態度をしてくると思っていたんだが……まぁ、よく考えれば、魔人を中に入れたり、見知らぬ人間を中に入れたりするような人だからな。
それに、俺より年下だ。年齢的なものも関係しているのかもしれない。
「はじめまして。フォードの妹になります、イブ・カンネと申します。以後お見知りおきを」
ドレスの端を軽く持ち上げ、膝を折って挨拶をするイブちゃん。
うん。今のモー子と同い年くらいに見える。
もし機会があれば、モー子を連れてくることにしよう。
「っと、お……私から挨拶をするべきでしたね」
「ふふ。俺で構いませんよ。口調も、挨拶の順序も、対して気にしませんから」
「そ、そうか? なら、いつも通りの感じで」
俺は半ば恐れながら、
「お、俺はフィル・プリテ。この国から西の方に位置する街に住んでいる。まぁ、今は刑務所に入れられているが」
「婦女暴行と殺人未遂……だったかしら?」
「確か、そう、だったけど……」
なんで一般人の罪状を知っているんだ?
そんな疑問を吹き飛ばすような一言が、姫様の口から出てくる。
「見方によっては、捉えられなくもないですが、実際は聖女様とデュラハンの体を入れ替えさせたい一心。殺人未遂に関しては、死の宣告を受けていたのです。気が狂っていたと考えられるでしょう」
「そうそう。そうなんだよ……」
あれ?
「姫様って、」
「イブでよろしいですわ」
「……イブちゃんって、その場に居たっけ?」
いや、居なかったのは知っているんだが、あまりにも詳細に見解を言ってくるから……
「あぁ、尋問の結果を読んだんだな」
と、一人で答えを導きだし、それを口にして見るが、
「いいえ。尋問の内容は、まったく知らされておりません」
俺の答えを悲しげな表情で否定する王子いや、王様のフォード。
「私はその人の過去を俯瞰して観ることが出来るのです」
「ほぉえ~」
あまりにも突飛な解答に、俺は間抜けな溜め息で返答してしまう。
他人の過去を観る。そんな能力を持っているのは、とんでもなく凄いな。
「そして、あなたがこの国の情勢を変えてくれる可能性が高いと、私は考えているのです」
「……はい?」
国王と姫様の話は、俺の生活が一変するほどの内容であった。
ミミックから移動方法を聞いて二日後。
俺とミミックは、例のトイレで準備を着々と進めていた。
「今更だけど、二人で移動って出来るのか?」
板を馴れた手付きではめ込みながら、
「うん。以前、王子にごねられてね。試してみたら出来たんだよ。まぁ、箱の外には出ないで、フタを開いてすぐ帰宅。だったけどね」
王様との面識だけでなく、その子供とも面識があるとは。
ってか、魔人って、そんな国の中枢に居て問題ないのか?
まぁ、魔王が攻めてくるっ! みたいな話は聞かねぇけど。
「さて、準備が出来たから、早速向かおうか」
「そんじゃ、よろ」
「着いたよ」
「………………」
はえぇ~。
よろしくって単語すら言い切れずに着いちまったぞ。
思わず無言でミミックを見つめるが、彼は天井ーー箱のフタを押し開く。
「先に行くけど、許可を貰うまではここに居てね。フタは開けとくから」
「おう」
勝手に出ていって、逮捕される。なんてオチは要らねぇからな。
爽やかイケメン万能ミミックさんを見送り、俺は箱の底に腰を下ろした。
フタは言われた通り、開け放っているので、部屋の天井に綺麗な星の装飾が施されている事が分かる。
逆に言うと、それ以外はまったく分からん。
そんな状態で、待つこと十数分。
「お待たせ」
体育座りで待っていると、天井にミミックが顔を覗かせて声をかけてきた。
「もう出て良いのか?」
「うん。王様にも許可を得たから」
言われて、俺は箱の角に手をかけて這い出ていく。
ミミック以外に二人の子供がいた。
一人は王冠を頭に乗せている男の子。もう一人は女の子だ。
「その子らが、王子と……姫様? なのか?」
「う~ん……元王子様と姫様かな? 今は王様をしているよ」
「へぇ~……」
は?
「王様?」
「うん」
「マジで?」
「マジで」
そんなやり取りをミミックとしていると、件の王様が自己紹介を始める。
「はじめまして。私が大陸国家の国王に就任した、フォード・カンネと申します。フォードとお呼びください」
めちゃくちゃ丁寧!
王様というからには、もっと偉そうな態度をしてくると思っていたんだが……まぁ、よく考えれば、魔人を中に入れたり、見知らぬ人間を中に入れたりするような人だからな。
それに、俺より年下だ。年齢的なものも関係しているのかもしれない。
「はじめまして。フォードの妹になります、イブ・カンネと申します。以後お見知りおきを」
ドレスの端を軽く持ち上げ、膝を折って挨拶をするイブちゃん。
うん。今のモー子と同い年くらいに見える。
もし機会があれば、モー子を連れてくることにしよう。
「っと、お……私から挨拶をするべきでしたね」
「ふふ。俺で構いませんよ。口調も、挨拶の順序も、対して気にしませんから」
「そ、そうか? なら、いつも通りの感じで」
俺は半ば恐れながら、
「お、俺はフィル・プリテ。この国から西の方に位置する街に住んでいる。まぁ、今は刑務所に入れられているが」
「婦女暴行と殺人未遂……だったかしら?」
「確か、そう、だったけど……」
なんで一般人の罪状を知っているんだ?
そんな疑問を吹き飛ばすような一言が、姫様の口から出てくる。
「見方によっては、捉えられなくもないですが、実際は聖女様とデュラハンの体を入れ替えさせたい一心。殺人未遂に関しては、死の宣告を受けていたのです。気が狂っていたと考えられるでしょう」
「そうそう。そうなんだよ……」
あれ?
「姫様って、」
「イブでよろしいですわ」
「……イブちゃんって、その場に居たっけ?」
いや、居なかったのは知っているんだが、あまりにも詳細に見解を言ってくるから……
「あぁ、尋問の結果を読んだんだな」
と、一人で答えを導きだし、それを口にして見るが、
「いいえ。尋問の内容は、まったく知らされておりません」
俺の答えを悲しげな表情で否定する王子いや、王様のフォード。
「私はその人の過去を俯瞰して観ることが出来るのです」
「ほぉえ~」
あまりにも突飛な解答に、俺は間抜けな溜め息で返答してしまう。
他人の過去を観る。そんな能力を持っているのは、とんでもなく凄いな。
「そして、あなたがこの国の情勢を変えてくれる可能性が高いと、私は考えているのです」
「……はい?」
国王と姫様の話は、俺の生活が一変するほどの内容であった。
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