恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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脱獄の恐怖

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 ミミックの脱獄方法は、彼の持つスキルを利用した方法だった。
「僕のスキルには、箱移動というものがあってね。箱の中に入って、任意の箱に移動できるってものなんだ」
 それは何て言うテレポートなんだ?
 そして、彼の言っていた条件というのは、
「僕が入れる大きさの箱が必要なんだよ」
 というもの。
「刑務所内で、そんな大きな箱があるのか?」
 出入りをしているということを考えると、ミミックが行ける範囲であるということになる。
 が、そんな大きな箱を見た記憶が俺にはない。まぁ、意識の外だった。ということも考えはできるが。
「あるよ。というより、作ると言った方が正しいかもしれないね」
「作る?」
 いよいよ分からなくなってきた。

 だから、
「試してくれとは言ったが……」
 なんでトイレに行かなきゃならんのだ?
「まぁまぁ。騙されたと思って、奥から二番目の個室に入ってよ」
「はぁ……」
 騙されたとしか思えないんだが。
「で? 一緒に個室に入って、どうすんだよ?」
「その後ろの壁なんだけど、軽く角を突っついてみてよ」
「こうか?」
 ミミックに指を指された箇所を、軽く押し込んでみる。
 すると、壁から一枚の板が剥がれ落ちてくる。
「おっと」
 俺に当たる前に、後ろから腕を伸ばして倒れてくる板を支えてくる爽やかイケメン。
 同じ施設のシャワーを浴びているだけにも関わらず、なんで石鹸の良い匂いがするんだよ。
「この剥がれてきた板を、天井に……っと」
 ミミックは板を馴れた手付きで個室の上に乗せる。
 確かに、上は塞がれた。
 ただでさえ僅かに差し込んでいた光は、今の板で完全に遮られている。
 が、
「足元は? がら空きなんだが?」
 床から二十センチほど、扉や囲っている壁の板は浮いている。
 完全な箱とは言い難い状態だ。
「実はね……よっと」
 爽やかイケメンミミックは、剥がれ落ちた壁の側面に腕を伸ばしていく。
 すると、細い隙までもあったのか、長方形の板が三枚も現れる。
 長さや大きさから考えると、丁度、浮いている場所に合いそうな大きさである。
 と、俺の思考を読み取ったかのように板を置いていくミミックは、
「ほらね?」
 俺にドヤァ! と言わんばかりの表情を見せてくる。
「これで移動が出来るようになったよ」
「なら早速移動してくれねぇか?」
「う~ん……移動するのは別の日にしないかい?」
「なんでだ?」
「フィル君を王様に会わせてみたいからね。そうなると、今日は移動できないんだよ」
 なにか別の制約があるのだろうか。
 そんな疑問が顔に表れていたのか、ミミックが解答してくれる。
「毎週決まった時間に、王様の部屋に箱を用意してくれるんだよ。だけど、今日は用意されてないから、移動できないんだ」
「なるほどな……」
 まぁ、別に王様に会う必要もないのだが、ミミックが会わせたいって言うぐらいだし、別に会ってはダメな理由もない。
「なら、その日に俺も同行させてもらうとするか」
「やったね。王様も喜ぶよ」
 そんな気さくな王様だったのか?
 俺が引きこもっている間に世代交代された。みたいな話を聞いた覚えがあるが、その辺りの記憶はあやふやだ。
 なんせ、自分の事すらままならない状況だったしな。仕方がないか。
「そんじゃ、今日は戻るとしようか」
「あぁ」
 男二人で同じ個室を長時間も利用するのは、なにかと問題だしな。
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