恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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王都の恐怖

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 俺は困惑していた。
「……どうだ?」
「どうだ……って言われても」
 いつも通りの何度も繰り返された尋問が始まると思いきや、その日の尋問は違った。
 いや、今俺が受けているのは尋問じゃない。
「いや、だって……」
「な~に、トカゲの尻尾切りにはしねぇさ。なんせ四天王候補の魔人を二人も無力化してるんだからな。ここまで出来るなら、相手なら楽勝だろ?」
「………………」
 そう。
 クラネルさんの依頼は、俺の恐怖スキルを用いて反乱を起こす事だ。
 こんな尋問室で、なにを堂々と反逆の提案をしてくるんだ。
 だいたい、俺は、恐怖スキルを意図的に使ったことはない。
 恐怖耐性スキルを上げる際に身に付いて、勝手にレベルが上がっていった代物だ。
 それを……魔物ではなく人間にって…………。
「まぁいい。時間はたっぷりあるからな、いつものように旨い飯を作りながら考えてくれ」
「………………」
 その日の尋問は、ほとんど喋ることなく終わっていった。

 なぜ。国王に間接的とはいえ、雇われているクラネルさんが、反逆を企んでいるのか。
 俺にはまったく分からない。
 そんなに、この国は腐っているのだろうか。
 そもそも、俺は直接刑務所に連れてこられたから、街の様子を一切知らない。
 街に行くにも、脱獄をするわけにもいかねぇしなぁ。
「ってか、俺にそんなスキルはねぇし」
 戦闘系は間違いなく、巡回をしている兵士達の方が上だろう。
 それに、扉には鍵が掛かっているはずだ。鍵開けのスキルはもちろんない。
 せめてスキルカードがあれば、習得出来たかどうかが分かるんだが……いや、分かったところでどうしようもねぇか。
「はぁ~」
「どうしたんだい? 溜め息なんかついて」
「いや、今の王都って、どんな感じなんだろうなって」
「今の王都?」
「あぁ」
 ってか、クラネルさんの話を他の奴に話して良いのか?
 特に口止めをされた覚えは……ねぇな。
 こういう話は、他の奴に打ち明けて、胸の重石を分かち合う方が断然良いに決まっている。
 それに、爽やかイケメンミミックの事だ。俺に協力してくれるかもしれねぇ。
「なぁ」
「なんだい?」
「これが終わったら、少し話があるんだが」
「告白かい?」
「そうだな。俺の熱い想いをって、そんな訳あるか」
「君の想い。確かに受け取ったよ」
「のるなっ!」

 そんな小さな漫才をした俺らは、調理の仕事を終えて、中庭の芝生へと腰を下ろす。
「それで?」
「あぁ」
 俺は今日の尋問で受けた話の内容を説明した。
「う~ん。今の王様は、かなりいい人だと思うんだけどなぁ」
「お前、王様と面識があるのか?」
「うん。ちょくちょくお邪魔してるよ? 先週も、顔を見に行ったしね」
「そんな遊びに行くような仲なのかっ!?」
「うん。まぁ、毎日って訳にはいかないけどね」
 いや違う。俺よ、今のは俺のツッコミが間違っているぞ。
 ツッコミすべきは、ミミックと王様の仲ではなく、
「先週も? お前は脱獄常習犯かっ!」
 そう。これが正解だ。
「いやいや違うっ! ツッコミの内容じゃねぇ!」
 俺は爽やかイケメンの両肩を掴み、
「お前、さらっと脱獄なんか出来るのかよっ!?」
「君は忙しい人だね」
 ほっとけ。
 爽やかイケメンは、俺の問いにこう答えた。
「条件付きだけど、百パーセント。脱獄できるよ」
「………………」
 マジかよ。
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