恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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フィルの恐怖 再び

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 どうも。フィル・プリテです。
 僕は今、大陸の中央にある一番大きな国に来ています。それも一人でです。
 いつもなら、マーアかモー子と一緒に街の外に出掛けたりするのですが、特急馬車で三日もかかるこの大陸の中央には、さすがの二人も着いてくる気力が無かったようです。
 それにしても、マーアやモー子が、今頃何をしているのか。凄く気になります。
 本日で二枚目となる手紙を書いている最中ですが、昨日送った手紙の返信は、まったく来る様子がありません。まだ、届いてないのでしょうか? ちゃんと届くのかどうかも不安です。
 もしかしたら、僕が王都に単独で来ていることも知らないかもしれません。
 それはそれで、突然姿を消した仲間の心配をしないということになるわけですが……あの二人は、僕がいなくても寂しくないのでしょうか? 僕は正直、もの凄く寂しいです。
「おい、五百十二番っ!」
「はいっ!」
「さっさと寝ろっ!」
「すみませんでしたっ!」
 僕はこの二日間。番号で呼ばれています。
 なぜなら、ここは。

 王都の刑務所ですからっ!



 なぜ俺が、王都の刑務所なんかに入れられているのか。
 それは五日前にさかのぼる。

「あぁ~久しぶりの我が家だぁ~」
「なんだかんだで長居をしたからのぉ~」
 二人して報酬で買ったソファーへと腰を沈めていく。
「「ふぁ~」」
 フカフカのソファー。
 今までは木製の堅くて冷たい椅子しか無かったが、俺の家にも暖かくふかふかの椅子が導入されたのだ。
「これなら買って損は無かったな」
 お値段以上だ。まさしくプライスレス。
 ……いや、三万ゴールドほど失ってはいるが。
「ふむ……このふかふか具合。新しい必殺シュートが思い付きそうなのじゃ!」
「それは良かったな」
 なんだかんだで、あと五ヶ月で試合となる。
 ちなみに、試合出場のための登録は今から二ヶ月ほど後。
 告知は大々的に、酒場や中央通りの出店なんかにポスターが貼りまくられている。
 さすがに隣の村までは貼られてなかったが、行商人なんかが噂をばら蒔いているらしい。
 人が沢山集まる祭りなら、それなりに金が落ちるそうだ。
「む? 誰か来たようじゃのぉ」
 俺がソファーで瞳を閉じていると、玄関扉がノックされる。
 手紙か? 荷物はなにも頼んで無いはずだから、誰かが送らない限り、配達の人間が来ることはない。
「う、うむ。確かに追い回されたのじゃが……」
 モー子は来客に何かを尋ねられているようだ。
 追い回された? もしかして、モー子にストーカーでも付いたのか?
 ……あり得なくはない。
 というのも、モー子の固有スキル『アザと可愛い』には、他者を魅了する力が強力だ。
 そして、俺のような爽やかイケメンが隣を歩いていれば、醜いブタ共が嫉妬の炎を燃やすに違いないっ!
「ここは……」
 俺が全力で守らねばっ!
 謎の使命感に駆られた俺は、玄関先へと赴いた。
 そして、突き付けられる一枚の紙と、

「貴方を婦女暴行ならびに、殺人未遂の容疑で確保させて貰います」

 よく見れば……その紙は、逮捕状だった。
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