恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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入れ替りの恐怖 再び

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 死の宣告を解いたデュラハンは、モー子に詰め寄り、聖女の元へと駆け出した。
 そして、言われた家にお爺さんとお婆さんと共に談笑していた聖女をある場所に連れていったそうだ。

 そう、下り坂にね。

 で、一心不乱に坂を転がり回り、
「今に至るってことか?」
「そうじゃ」
「そんな事があったのか……むごいな、貴様」
 なぜか俺が責められていた。
 いやいや、元を正せば、デュラハンが死の宣告を無抵抗な人間に掛けたせいだろ?
 と、反論してやりたがったが……
「ひっ!?」
 視線を送っただけで更に震えを大きくさせる。
 こんな調子だと、責めるに責められねぇ。
 とはいえ、悪いことばっかでもない。
「まぁ、マーアに戻ったっぽいし、これでツッコミ役の安定感が増したってもんだ」
「誰がツッコミ役だ」
 ほら。これこれ。この感じ。
「まったく……それで、デュラハンの奴はどうするつもりなのだ?」
 聖女の体だから、元の家に帰るわけにもいかない。
「ってか、家があるのか?」
「確か、中央の大国より少し西にずれた場所にあるはずじゃぞ? 騎士の館だったかの?」
 モー子の質問に、震え続けている聖女はコクコクとうなずく。頷いてるよな?
「じゃが、あそこは高レベルの冒険者でなくては入れまい。それにじゃ。聖女の格好では、館の者共が受け入れてくれんじゃろう」
 それもそうだな。
 なら、聖女も連れて帰るか?
 だけど、俺の家だと、顔を会わせる度に震えそうだしなぁ……
「どうしたもんかな」
 そんな聖女の今後に頭を悩ませていると、
わしらが預かろうかの?」
 ここ二週間ほどお世話になっているお爺さんが、優しそうな表情で提案してくる。
「いいのか?」
「構わんよ。なぁ、婆さんや」
「あぁ、孫が増えたようなもんじゃよ」
「お爺さん、お婆さん……」
 急に入ってきたな。この二週間、一言も喋らなかったのに。
 俺が挨拶をしても、ニコニコしてるだけ。
 そんな人らが、まさか、受け入れを提案してくるとは。結構、驚きなんだが。
「……ここに居る方が安全かもしれんな」
 マーアは意外にも賛成らしい。
「この状態の者を放り出すよりも、知っている場所で療養してもらっていた方が安心だ」
「まぁ、元はお前の体だし、それで俺は構わんぞ?」
「なら決まりじゃな」
 五人で話し合いをした結果。

 ビクビク聖女様はお爺さんとお婆さんの孫になった。
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