恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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隣の村の恐怖

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  マーアが受けた依頼の魔女とやらを捕まえるため、俺とマーアとモー子の三人は、隣の村へと足を運んでいた。
 隣と言っても、馬車で二日ほどかかる場所だ。
 俺の恐怖耐性が三桁でなければ、足を運ぶなんて事は出来なかっただろう。
「この近辺で目撃されてるのか?」
「うむ。最新情報によればな」
 マーアは逐一、協会で情報収集をしていたらしく、手伝えと言われた三日後には馬車の手配までしていた。
 よほど魔女の事を捕まえたいらしい。
「それにしても。何故デュラハンなんぞを自称しておるのじゃ?」
「そう言えばそうだな」
 どうせ名乗るなら、魔女にちなんだ魔人を名乗れば良いのに。例えば、リッチーとか。
「デュラハンを名乗ることに意義があるのであろう」
 とかなんとか、マーアは言っているが……どう考えてもおかしい。
 なによりも、魔女は魔法を主体とした戦い方をするし、戦闘でなくとも、魔法や薬学で名声を得ることが圧倒的だ。
 対して、デュラハンは首と体が分離した騎士。
 俺は見たことないが、全身を覆い隠すフルプレートアーマーを身に付けており、片手で自身の頭を抱え持つ。と聞いている。
 なにより特徴的なのは、即死系のスキルが強力だということだろう。
 マーアとは別で、協会に情報を貰いに行った際も、
「もし、魔女ではなく本物のデュラハンでしたら、死の宣告というスキルには気を付けてください。指を指されてスキルを発動されますと、高確率で死の呪いが掛かりますので」
 と言われた。
 ちなみに解呪方法は、魔人に宣告を取り消してもらうか、解呪スキルのレベル五百以上の人に頼むかの二択になるらしい。
 前者はともかく、後者は心当たりがゼロだ。相場の金額も一生奴隷として付き従う必要がありそうな金額だとか。
 マジで気を付けよう。
「で? まずは何処に向かうのじゃ?」
「うむ。まずはこの村の教会へと向かうつもりだ」
「なんでだ?」
「このような村や小さな街では、ギルドのような仕事の斡旋は教会で行っておる。また、人の集まりやすい場所でもあるからな。情報収集にはもってこいの場所なのだ」
 意気揚々と説明するマーア。
 さすがに色々な街を巡っていた経験が、今、生きている。
「……なにか失礼な事を考えておらぬか? フィルよ?」
「いんや」
 意外と鋭いんだよなぁ……なに、歴戦の戦士の勘? 怖いんだが?
「ほら、あの民家が教会を兼ねているそうだ」
 目の前の一般的な民家にたどり着いた。
 その扉をマーアは押し開き、

「神よ、邪心様よ。私のから」

 直ぐに閉じた。
「おい」
「うむ? いやいや、すまない。私ともあろうことか、まずは広場へ行くことを忘れておった」
「中に人が居った気がするのじゃが?」
 モー子がマーアの横をすり抜け、扉を押し開く。

「らちの姿にもど」

「こらっ!」
 モー子の首根っこを掴み上げ、外へと押し戻す。
「マーア、お前、中の人が誰かを知ってるだろ?」
 俺の指摘に、マーアは体をビクッと震わせる。
 もう確定だ。
「お邪魔しまーす」
「お、おいっ!」
 マーアの制止も振り切り、俺は扉を押し開いて中へと入る。

「なにかご用でしょう……おい」
 あれ?
 ファーストコンタクトは、かなり可愛らしい、それこそマーアとは正反対のまさしく聖女様って感じだったのだが。
 今はメチャクチャ睨んできてる。それこそ、路地裏で出会ってしまったチンピラのようだ。
「会いたかったぞ」
 え、俺に?
「どれだけ探したことか……お前に想像がつくか?」
 相当苦労を掛けてしまったんだなぁ。大変、申し訳ない。

「サントラ・サイトっ!!」

 って、
「誰だよっ!?」

 ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
   レベル:九十二
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