恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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報酬の恐怖

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「それで……また連れてきたと?」
 モー子を抱き抱えた俺と、ハンマーを背中に背負っているマーアの二人で協会の受付へと来ていた。
 理由は三つある。まずは一つ目。
「ミノタウロスの角、四十ちょっとある。換金をしてくれ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
 布袋に包まれた角を奥へと持っていくお姉さん。
 一つ目は素材の換金だ。
 そして、二つ目。これも金絡み。
「依頼の報酬も一緒に貰おうか」
 今回のミノタウロスの軍勢は、緊急の依頼として街の税金から報酬が支払われることになっている。
 解決に尽力した暁には、百万ゴールドを分配することになっている。……って、
「分配って、今考えるとセコイよなぁ」
「仕方がなかろう。市政の財源は民の血と汗でまかなわれているのだ」
 さすが自称聖女のマーア。言うことは聖女っぽく聞こえなくもない。
「それに、今回は参加人数が少ない。山分けであったとしても、それなりの金が入ってくるであろう」
「確か……三十人くらいだっけか?」
 となると、一人当たり三万ゴールド前後か。
 まぁ、焼き鳥の日当が三千ちょっとなので十日ほど働いたことになるな。
 さて。金絡みはこの二つのみ。
 最後の一つは、俺が抱き抱えているモー子についてだ。
「我は宿を所望するぞっ!」
「分かった! 俺の家に案内しようっ!」
「ならば野宿じゃっ!!」
「庭はそこそこの広さがあるっ! ドンと来いっ!!」
「貴様の敷地内になんぞ、入って堪るかっ!!」
 モー子の住む場所の提案をしている合間に、マーアが受付のお姉さんと話を進めていく。
「とまぁ……フィルに魔物を飼育する許可証を発行して頂きたい」
 マーアいわく。
 この世界には魔物使いなる職業があるそうだ。
 その職業は、魔物や魔人の力を借りて、他の魔物や薬草採取などをして生計を建てているらしい。
 だが、馴染みのない街では、そいつが魔物を招き入れていると勘違いをされてしまう。
 単なる勘違いで済めばまだいいが、実は街を陥落させるための刺客だとしたら目も当てられない。
 だから、協会が直々に、魔物を街中に連れても大丈夫だっ! という許可証を発行している。
 マーアがそのような知識を得ているのは、各地を巡礼しているからだ。と言われたが、本当に巡礼の旅なのだろうか。俺はマーアが女であるところから疑っている。
「許可証を発行するのは構いませんが……フィルさんで大丈夫なのですか?」
 おい。
「それはどういうことだ? 俺だとレベル不足だってか?」
「いえ、レベルではなく……その…………」
 なんだか煮え切らないお姉さんだ。
「そういえば、称号の鑑定時にうやむやにした称号があったな」
 マーアに言われ、俺はポケットからスキルカードを取り出す。
「おい、ふざけんなよ?」
 俺は新しく獲得した称号に文句をつけた。

 剣術スキル:レベル十二
 ツッコミスキル:レベル九十一
 恐怖耐性スキル:レベル百五十八
 調理スキル:レベル八
 ボケスキル:レベル八十四
 恐怖スキル:レベル七

 獲得称号:猪突猛進、老いる者、怖い物知らず、可愛いモノ好き、十死一生、ぶれない心、畏怖、露出狂

 なにが「露出狂」だっ! ふざけんなよっ!!
「狂ってんのは、称号の名前だろうがっ!!」

 ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
   レベル:九十二

「やかましいっ!」
「あぁやって、ツッコミスキルが磨かれていくのじゃなぁ」
「冒険者であれば、誰もが通る道だな」
 二人が別のところで感心している。
「じゃなくてだなっ! おい、お姉さんっ!!」
「は、はい」
「こいつの情報は、ミノタウロスが攻めて来る前に書面にしていたよな?」
「……こちらでございます」
 どうやら準備は万端だったようだ。
「では気を取り直して……称号、露出狂ですが、装備によって効果の増減が変わってきます。防具を減らせば減らすほど、その方の筋力と魔力が上昇していきます。逆に、防具や装飾品を装備していきますと、その分だけ減少していくことになります」
 つまり、
「全裸になれば、筋力と魔力が最大で補正されるということか」
「公共の場では捕まりますけどね」
「脱がねぇから」
 全裸になっていたので捕まった。なんて事になったら、違う意味で街に住めなくなるだろうが。
「称号については理解した。そんじゃ、報酬の半額程度の金額で、魔法の才能がなくても使える魔法を見繕ってくれねぇか?」
「かしこまりました」
「貴様は……またなにかの悪だくみか?」
 悪だくみ言うなし。
「なんにもたくらんでねぇよ。強いて言うなら、俺の最強スキルの試しだな」
「おい変態」
「そんなことを言うのは、この口かなぁ~?」
 子供をあやすような口調で、俺はモー子の頬をプニプニと揉みしだいてやる。
「やめい。それよりもじゃ、その試しとやらは、どのようにするのじゃ?」
 それはもちろん、
「モー子が魔力を回復したら、今のサイズになるまで試すだけだが?」
 俺の回答を聞いたモー子は、なにもない空間をじっと眺めていた。
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