恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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新しい称号の恐怖

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 被害者のモウコ・ロデオである!
 鎧の奴めっ! 腹にとんでもなく重たい一撃を入れおって!
 白い肌に青アザでも出来たらどうすると言うのじゃ。
「うん?」
 たまたま触れた地面の側には、我の体をまさぐった男のスキルカードが……
「こ、これは……」
 そこに記載されたステータスを眼にし、我は頭を抱えた。
「どうした?」
 我を殴った鎧が、我を心配して覗き混んでくる。
 故に、我は男のスキルカードを見せつけてやる。

 剣術スキル:レベル十二
 ツッコミスキル:レベル九十一
 恐怖耐性スキル:レベル百五十六
 調理スキル:レベル八
 ボケスキル:レベル八十三
 恐怖スキル:レベル三

 獲得称号:猪突猛進、老いる者、怖い物知らず、可愛いモノ好き、十死一生、ぶれない心

「………………」
 鎧の奴が頭を抱えおったわ。
 とはいえ……
「なんじゃ、こやつのスキルは。肝心の戦闘系スキルが剣術一つな上に、レベルが十二とは」
 情けないにも程があるぞ。
 これでは、我を傷付けるのは到底不可能。
「それに引き換え、ツッコミスキルとボケスキルが二番目三番目に高いとは……こやつ、冒険者ではなく、お笑い芸人を目指しておるのか?」
「あ、いや、冒険者は大抵、両方のスキルを習得しており、本人の性格上、どちらかのレベルが高くなる傾向があるのだ」
「冒険者ギルドは芸人育成機関を兼ねておるのか……」
「そんなことはないからな? ……っち、またツッコミスキルのレベルが上がってしまった」
 そんな情報を聞いては、この鎧の奴のスキルカードも気になってくるのぉ……そうじゃ!
「おい鎧の。貴様がヒーラーだと言うなら、スキルカードをみせてみぃ。そうすれば、一発で分かるじゃろ?」
「別に構わないが……ほら」
 我は提示された鎧のスキルカードを見る。
「……本当に芸人育成機関ではないのか?」
 ヒーラー云々うんぬんの話ではなかった。

 回復スキル:レベル二百三十
 ツッコミスキル:レベル千三十二
 祝福スキル:レベル五十一
 初級魔法スキル:レベル三十
 中級神聖術スキル:レベル四
 斧スキル:レベル三百四十
 ボケスキル:レベル百八十

 獲得称号:駆け出しヒーラー、猪突猛進、老いる者、特攻副隊長、木こり、平凡ヒーラー、特攻隊長(笑)、天然ですか?、特攻隊長、真・特攻隊長、特攻隊長・リターンズ、天然ですね、中級ヒーラー、盗賊の頭、特攻隊長列伝、語り継がれる者、呪われし者

 最後の呪われし者という称号も気になるのじゃが……
「ツッコミスキルが四桁じゃと……!」
「冒険者家業の長い者は、五桁、六桁にも届くそうだぞ」
「なんとっ!?」
 そんな奴等は、冒険者ではなく芸人になった方が幸せではないのか? 芸人も、ある意味冒険者であろうが。
「とはいえ……鎧の、本当にヒーラーだったのだな」
「そうだ。私はヒーラーだ」
「じゃが……ヒーラーのくせして、なぜに斧スキルなんかレベルを上げておるのじゃ? 上げるなら杖スキルであろうに」
 斧スキルは名前のごとく、斧の扱いに関係するスキルじゃ。
 その斧では、ヒーラーの能力を左右する精神系のステータス、特に、魔力や精神力は補強されまい。
 もし、魔力や精神力を補強するのであれば、杖を装備する方が有効であり、杖スキルすら持っておらんのは、ヒーラーとして間違っておる。
「……色々と事情があってだな。それは別の機会にでも話すとしよう」
「別の機会? そんなもの、あるわけがなかろう?」
「なに?」
 こうして話をしておったのは、
「我の魔力を溜め込むための時間稼ぎよっ!!」
 この男のセクハラによって、大量の魔力を消費させられたからのぉ。
「貴様を倒せば、立つ者はおらんっ! そこの男をボコスカ殴って、ストレスの発散でもしてやるのじゃっ!!」
「『キュア』」
 なぜか我に状態回復魔法を掛けてくる鎧のヒーラー。
「バカなのじゃ。我に状態回復など、必要ないのじゃっ! 行くぞっ!!」
 と、腕を前に伸ばした直後。

「可愛いよぉ~」

 背後から抱き付かれた。
 そう、我の後ろにいた、鎧のヒーラーに頭部を殴られ気絶していたはずの男が、我に大量の魔力を消費させたセクハラの男が。
「こ、こらっ! やめんかっ!! き、貴様っ! 卑怯だぞっ!! は、離せっ!」
 さっきの回復魔法は我ではなくっ!?
「可愛いよぉ~」
 後ろで気絶していたこの変態に対してのものだったのかっ!?
「えぇい! 離せっ! このっ! うわぁ!? 何処を触っておるのじゃっ!!?」
 鎧は指を我に向けてくる。
「な、……何をする気じゃ?」
 いや。我は予期しておる。
 この鎧は、我をさらに窮地へと追いやる魔法を使う。と。
「『カースド・フィア』」
「この外道がぁぁぁあああ!!!」
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