恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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フィルの恐怖

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「……それで、連れてきてしまったと」
 場所は森の中央から協会の仕事受発注の受付カウンターに。
 俺とマーア。それから角の生えた幼女の三人で、受付のお姉さんを困らせていた。
「「一番困らせておるのは貴様だがな」お主じゃからなっ!?」
  二人して俺を口悪く罵ってくる。
「詐欺聖女に言われたくねぇよ」
「あ゛?」
「今の睨みで恐怖を覚える俺じゃありませぇーん」
「待て、この鎧の奴は女なのか?」
 三人が三人ともで、好き勝手話し始めるため、閑散としていた協会が一気に騒がしくなる。
「……うるさい」
「「「あ゛?」」」
「うるせぇっつってんだよっ!! 分からねぇのかっ!! あ゛ぁ゛?」
「「「すみませんでした」」」
 協会のお姉さんが一番怖かったです。
「さて……まずは貴女の事を知るところから始めましょうか」
 と、怒りを納めてくれたお姉さんが、俺が抱き抱えている角の生えた魔人の幼女を
「誰が幼女じゃっ!」
 ……魔人を指を差して言う。いわゆる事情聴取みたいな事をするのだろう。
「まずは名前ね」
「我はモウコ・ロデオ! 魔王軍四天王の座を争う七人の内の一人じゃ!!」
「というロールプレイをしている幼女だっ!」
「ロールプレイではないわっ!!」
 モー子にかかとすねを蹴られる。地味に痛い。
「その、四天王の座を争うというのは、具体的にどのような方法で行われているのですか?」
「む? あぁ、恐怖を集めるのじゃよ」
「「恐怖?」」
「うむ」
 と、俺の腕から逃げようとするモー子。
 だが、俺はガッチリと両脇から腕を通してホールドしているので逃げることが出来ない。
 もちろん、こんな可愛い魔人を逃がすつもりもない!
「えぇい! 締まらんじゃろうがっ!!」
「ばか。子供が渋いことをするもんじゃねでよ」
「うるさいっ! だいたい、我は百を越えておるっ!!」
「そうかそうか」
「生暖かい眼で見るなっ!?」
 二人でイチャイチャしていると、隣で爆発でもしたのではないか。と思えるほどの爆音が鳴り響いた。
 恐る恐る、お姉さんの方へと視線を向ければ、
「話が進まないのでじっとしていて貰えますでしょうか?」
 とてもにこやかなお姉さんが見えた。

 ただし、受付の台が粉々になっているのも、視界の端に映っていたが。

「なるほど。話を整理しますと、七人で四つの席を奪い合っていて、その決着方法が、期限までにどれだけ特定のスキルレベルを上げられたか。という方法なのですね」
「うむ」
 ここにモー子を連れてきてから一時間。
 お姉さんの事情聴取はサクサクと進み、やがて、避けては通れないあの質問をすることとなる。

「それで、何故フィルさんに大人しく捕獲されているのですか?」
「「「……黙秘権を行使します!」」」
 三人が三人ともの思惑で、一つの権利を使おうとした。
 が、
「受付台の代わりに、誰か選ばせて頂いても?」
 受付のお姉さんが脅してくるので、三人が三人ともの推測で話をすることになった。
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