恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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モウコ・ロデオの恐怖

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「ほらっ! さっさと歩けっ!」
「ま、待てっ! もう少しだけこの光景を楽しませてくれっ!!」
「そん、なっ! 蔦同士がっ! 絡んで、いる! 光景をっ! 眺め、てっ! なにが、楽しいと、言うのだっ!!」
 マーアには蔦同士が絡んでいるだけの光景に見えるらしいが、俺には、
「子供が大切にぬいぐるみを抱いている姿を見て、愛くるしいとか、愛しいとか! 聖女の端くれなら思わねぇのかっ!?」
「聖女の端くれとはなんだっ!? 貴様こそっ! 蔦が絡んでいるだけではないかっ! 正気に戻らんかっ!!」
 と、俺の必死の抵抗に諦めたのか、パッと腕を離される。
 が、マーアは諦めたわけではなく、
「こうしてやるっ!!」
「あぁ!!」
 背負っていたハンマーで叩き潰した。
「これが聖女のやることかぁぁぁあああ!!!」
「貴様が動かぬからわるいのだろぉぉぉおおお!!!」
 取っ組み合いになりかけたが、ハンマーの重たい一撃を喰らい、俺はピヨりながら、マーアに腕を引かれていった。

「……ずいぶん騒がしい奴等じゃのぉ」
 既に仁王立ちで待機されていた魔人。
「さっきは逃がしてやったが……今度は逃がしてやらんからの」
 言葉は重々しく聞こえる。
 ただ……

「お嬢ちゃん、そんな物騒な事を言うもんじゃねぇぞ? なぁ?」
「誰がじゃっ! 誰がお嬢ちゃんじゃっ!!」
 背伸びがしたい年頃なんだろう。俺にも昔は似たような時期があったもんだ。
「目を瞑ってウンウン頷いておるでないわっ!!」
 しびれを切らした魔人は、俺に向かって指を指しては、
「もう一度恐怖に支配されるがよいわっ! 『カースド・フィア』っ!!」
「フィルっ!」
 俺は特に抵抗することなく、幼女の魔法を全身で浴びた。

 昨日受けた時は、周囲の音や光が全て奪われていた。
 だが、俺の恐怖耐性スキルのレベルは百を突破している。
 いくら魔人の魔力が凄くても、俺に恐怖を与える魔法が聞くはずがない。

「は、離れろっ! このっ! 変態がぁー!!」
 気が付けば、幼女を頬擦りしていた。
 ボコスカと殴られるが、一撃一撃が致命傷のはずだが、俺はあまり痛みを感じていない。
 これはあれか、
「孫を眼に入れても痛くない。ってやつか」
「誰が孫じゃっ! ええい! いい加減にせよっ!」
 無理だった。
 俺の意思と本能が、幼女を撫で回すという目的ーーいや、使命と認識しているので、俺は俺の体をどうこうできる余裕はない。

 むしろもっとナデナデしたいっ!

「変態っ! 何処を触っておるのじゃ!? やめ! やめんかぁぁぁあああ!!!」

 幼女の魂の叫びが、森全体を震えさせた。
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