恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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レベルアップの恐怖 再び

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 どうやって街にたどり着いたのか。
 言葉を話す魔物から、どうやって逃げたのか。
 そんな事が一切分からない。不思議で堪らない状況だが、一つだけ理解できているのは、
「あんな魔物を前にして、私達二人が生きている。ということだな」
 と、俺の隣で噛み締めるように口にするマーア。
 鎧の表面はほとんど無傷だが、中の人は骨折までする重症だとか。
「なぁ……俺達、どうやって逃げ延びたんだ?」
 気になっていたことをマーアに聞いてみる。
 ただ、マーアの方もかなりの重症を負っていたはずだから、もしかしたら記憶にないかもしれない。
「……私がうっすらと覚えているのは、あの魔物が私達二人を森の外へ転送した瞬間ぐらいだな」
 と。意外にも逃げ延びたという感じではなく、逃がした。というのが正しいらしい。
 となれば、さらに疑問が湧いてくる。
「森の入り口で倒れている私達を、たまたま通り掛かった冒険者が拾ってくれたようだ。その者達には後程、金銭で応えることにしよう」
 マーアは言っているが、実際のところは俺よりも頭の回転が速い。だから気付いているはずだ。

 なぜ、あの魔物は、俺達二人を生かしたのか。

 あの魔物が目的や名前を言っていた気もするが、記憶には全くない。
 あるのは恐怖のみ、それも、とびっきり濃い恐怖だ。子供の頃に襲われた恐怖よりも強いかもしれん。
「そういやギルドへの報告は済ませたのか?」
「いや。昨日は直接、治療所へ運ばれたからな。これからギルドへ報告するところだ」
 マーアの言う通り、街に運んでくれた冒険者達により、治療所へと運び込まれ、一晩治療所のベッドで過ごした。
「勝手に抜け出して、大丈夫か?」
 俺は精神的に追いやられたが、マーアの方は物理的に、しかも重症な怪我だ。
 先生の指示なしで動いていいのだろうか。
「勝手ではない。きちんと医者に許可を貰っている。それに、あんな魔物が森に住み着いたというならば、出来る限り速い報告が必要だ」
 と、そこまで言うマーアは、寝ていたベッドから腰を上げる。
「俺も行こう」
「……そうだな。フィルの方が奴に関する情報を持っているようだからな」
 話がまとまり、まずは協会へと足を運ぶこととなった。
 どうせ協会にいくなら、あの魔物の対策になりそうなスキルを習得するのも……
「……は?」
 俺は自身のスキルカードを眺め、ベッドから上げた腰をすぐに下ろした。
「どうした? まさか、スキルが盗まれでもしたのか? 魔物の中には、スキルを奪う魔物もいるらしいからな。まぁ、再度習得すれば、レベルは元の値で覚えることが出来るらしいがな。スキルランクが高ければ、費用が高いか、ギルドでは販売されていないかのどちらかに別れるようだがな。……で?」
 淡々と説明していたマーアが、スキルカードを持って固まっている俺へと視線を向ける。というか、俺のスキルカードを除き込んでくる。
「お、おいっ! なんだ、そのスキルレベルはっ!?」
「俺だって知らねぇよっ!?」
 スキルカードに記載されていたのは、以下の通りだ。

 剣術スキル:レベル十二
 ツッコミスキル:レベル九十一
 恐怖耐性スキル:レベル百二十八
 調理スキル:レベル八
 ボケスキル:レベル八十三

 獲得称号:猪突猛進、老いる者、怖い物知らず、可愛いモノ好き

「協会で色々と聞くことが出来たな……」
「うむ……」
 俺とマーアの二人は、無言で速足で協会へと向かった。
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