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聖女の恐怖
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鎧さんの中身は女性だった。
鎧さんの長い長い回想で唯一覚えている事実はそれだけだ。
なんか、呪い? とか、なんとか言われたが、開口一番に巡礼かなんかで各町の教会を巡っていたとか。
その際に「聖女としての役目が」の単語で、性別を確認したところ、
「何処をどう見ても女だろう?」
と、鎧越しに真顔で言われた。真顔かどうかは確認できてないが、口調から冗談を言っている気はしなかった。
それ以降の話は、鎧さんの中身が女である。という事実に唖然としており、
「ふっ。聖女であるにも関わらず、こんな呪いを受けてしまうとは……」
気がつけば、いつの間にか日が暮れ、長い回想も終わっていた。
夜道をビクビクしながら家にたどり着いたが……今でも信じられない。
「本当に……」
鎧さんの中身は女なんだろうか。
「い、いら、いらっしゃいませぇ~」
気になりすぎて、一睡もできなかった。おかげで寝不足。恐怖云々ではなく、眠気が邪魔して力が入らない。
「おいおい、しっかりしやがれよ」
「は、はい……Zzz」
「言ったそばから寝るんじゃねぇよっ!」
ーーボケスキルのレベルが上昇しました。
レベル:三十四
親父さんに頭を小突かれ、少しだけ目が覚める。が、それも束の間。すぐにまぶたが下がってくる。
「顔でも洗ってきやがれ」
「はい、そうします」
ふらふらと足取りが覚束ないが、調理場の手荒い場で顔を洗う。
何度か冷水を浴びることで、なにもしないよりはマシになった気がする。
「仕事に戻るか……」
正直、この眠気なら仕事を休みたいところではあるが、鎧さんに明日は仕事があることを伝えてしまっている。
これでズル休みでもすれば、ボコボコにされる可能性も出てくる。
「あれ? 親父さん? 売り場はいいんですか?」
もう一度だけ顔を洗おうと水をすくっていると、売り場にいたはずの親父さんが引っ込んでくる。
「お、おう……お前も、売り場に出なくていいぞ?」
「はい?」
なに言ってんだ、親父さんは?
「売り場を空にしたら、モノが売れないだろ?」
「お、おいっ!」
と、俺は親父さんの横を通り抜けて売り場に出ていく。
そして、親父さんがトンチンカンな事を言い出した理由が分かった。
「今日は早いんですね、鎧さん」
呪われた鎧を着込んだ聖女。こと、鎧さんが、店に買い物に来ていたからだ。
親父さんはびびって、裏に引っ込んできたんだろう。
「あぁ。このあと、森に入る予定だからな」
「森に?」
「貴様、知らんのか?」
鎧さんから聞いた情報によると、今、ギルドでは森の異変を調査する依頼が張り出されているらしい。
なんでも、普段ならいない魔物が、突如として姿を表しているとか。
その原因追求のためにも、調査という名目で人を派遣している。
「私も旅路が心もとない。だから、この調査で補充しようと思ってな」
あんた、聖女じゃねぇのか?
そんな一文が脳裏をよぎったが、これを言うとツッコミスキルのレベルが上がりそうなので言わないことにした。
決して、ボコボコにされるのを心配した訳じゃない。
「そうだ。貴様も一緒にいくか?」
「えっ……いや、俺は無理だから」
「無理? なぜ無理なんだ?」
そういや俺の現状は、家族以外に伝えた覚えはないなぁ……。
鎧さんが聖女かどうかはともかく、いい人そうであるのは間違いない。
昨日、俺が前を通りすぎるまで、野鳥にパン屑を上げてた人だ。悪い人ではないはずだ。
「実は……」
「なるほど。そんな理由が……」
全てを正直に話したところ、鎧さんがいい人である確信が強まった。というか、俺の中での鎧さんの株が上昇した。
「ならばなおさら、森に入るべきだな」
おい。
「今の話を聞いてたのか?」
「むろんだ」
スパルタか? スパルタ聖女だったのか?
俺の中で鎧さんの株価は紙切れ同然になろうとしていた。
「森の中にバッドバードと呼ばれる魔物がいる。そいつから発せられる不快な音波には、聴いた者を恐怖に陥れる効果がある」
「……マジで?」
「うむ。貴様一人では無理だろうから、私も着いていく。貴様のスキルアップと森の調査を同時平行に行えば、一石二鳥であろう?」
「………………」
マジかぁ……鎧さん、マジでいい人じゃん。俺、感動もんだよ。
「分かった。なら、明日まで待ってくれ。親父さんに明日は休みにしてもらうから」
「うむ。私もギルドにて、調査計画の変更を伝えてくるとしよう」
こうして、鎧さんの提案により、俺は森へのリベンジを結構することとなった。
鎧さんの長い長い回想で唯一覚えている事実はそれだけだ。
なんか、呪い? とか、なんとか言われたが、開口一番に巡礼かなんかで各町の教会を巡っていたとか。
その際に「聖女としての役目が」の単語で、性別を確認したところ、
「何処をどう見ても女だろう?」
と、鎧越しに真顔で言われた。真顔かどうかは確認できてないが、口調から冗談を言っている気はしなかった。
それ以降の話は、鎧さんの中身が女である。という事実に唖然としており、
「ふっ。聖女であるにも関わらず、こんな呪いを受けてしまうとは……」
気がつけば、いつの間にか日が暮れ、長い回想も終わっていた。
夜道をビクビクしながら家にたどり着いたが……今でも信じられない。
「本当に……」
鎧さんの中身は女なんだろうか。
「い、いら、いらっしゃいませぇ~」
気になりすぎて、一睡もできなかった。おかげで寝不足。恐怖云々ではなく、眠気が邪魔して力が入らない。
「おいおい、しっかりしやがれよ」
「は、はい……Zzz」
「言ったそばから寝るんじゃねぇよっ!」
ーーボケスキルのレベルが上昇しました。
レベル:三十四
親父さんに頭を小突かれ、少しだけ目が覚める。が、それも束の間。すぐにまぶたが下がってくる。
「顔でも洗ってきやがれ」
「はい、そうします」
ふらふらと足取りが覚束ないが、調理場の手荒い場で顔を洗う。
何度か冷水を浴びることで、なにもしないよりはマシになった気がする。
「仕事に戻るか……」
正直、この眠気なら仕事を休みたいところではあるが、鎧さんに明日は仕事があることを伝えてしまっている。
これでズル休みでもすれば、ボコボコにされる可能性も出てくる。
「あれ? 親父さん? 売り場はいいんですか?」
もう一度だけ顔を洗おうと水をすくっていると、売り場にいたはずの親父さんが引っ込んでくる。
「お、おう……お前も、売り場に出なくていいぞ?」
「はい?」
なに言ってんだ、親父さんは?
「売り場を空にしたら、モノが売れないだろ?」
「お、おいっ!」
と、俺は親父さんの横を通り抜けて売り場に出ていく。
そして、親父さんがトンチンカンな事を言い出した理由が分かった。
「今日は早いんですね、鎧さん」
呪われた鎧を着込んだ聖女。こと、鎧さんが、店に買い物に来ていたからだ。
親父さんはびびって、裏に引っ込んできたんだろう。
「あぁ。このあと、森に入る予定だからな」
「森に?」
「貴様、知らんのか?」
鎧さんから聞いた情報によると、今、ギルドでは森の異変を調査する依頼が張り出されているらしい。
なんでも、普段ならいない魔物が、突如として姿を表しているとか。
その原因追求のためにも、調査という名目で人を派遣している。
「私も旅路が心もとない。だから、この調査で補充しようと思ってな」
あんた、聖女じゃねぇのか?
そんな一文が脳裏をよぎったが、これを言うとツッコミスキルのレベルが上がりそうなので言わないことにした。
決して、ボコボコにされるのを心配した訳じゃない。
「そうだ。貴様も一緒にいくか?」
「えっ……いや、俺は無理だから」
「無理? なぜ無理なんだ?」
そういや俺の現状は、家族以外に伝えた覚えはないなぁ……。
鎧さんが聖女かどうかはともかく、いい人そうであるのは間違いない。
昨日、俺が前を通りすぎるまで、野鳥にパン屑を上げてた人だ。悪い人ではないはずだ。
「実は……」
「なるほど。そんな理由が……」
全てを正直に話したところ、鎧さんがいい人である確信が強まった。というか、俺の中での鎧さんの株が上昇した。
「ならばなおさら、森に入るべきだな」
おい。
「今の話を聞いてたのか?」
「むろんだ」
スパルタか? スパルタ聖女だったのか?
俺の中で鎧さんの株価は紙切れ同然になろうとしていた。
「森の中にバッドバードと呼ばれる魔物がいる。そいつから発せられる不快な音波には、聴いた者を恐怖に陥れる効果がある」
「……マジで?」
「うむ。貴様一人では無理だろうから、私も着いていく。貴様のスキルアップと森の調査を同時平行に行えば、一石二鳥であろう?」
「………………」
マジかぁ……鎧さん、マジでいい人じゃん。俺、感動もんだよ。
「分かった。なら、明日まで待ってくれ。親父さんに明日は休みにしてもらうから」
「うむ。私もギルドにて、調査計画の変更を伝えてくるとしよう」
こうして、鎧さんの提案により、俺は森へのリベンジを結構することとなった。
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