6 / 66
耐性の恐怖
しおりを挟む
速足で家に帰った俺は、ベッドに潜り込んだ。
「………………」
手に握り締めていたカードには、俺の名前ーーフィル・プリテの名前と、習得しているスキルが表記されている。
スキルは小さい頃に自然と習得しているものもあるらしく、恐怖耐性レベル一の他に、剣術レベル三。ツッコミレベル二があった。
剣術とツッコミは、子供の頃に剣を教えていた先生から習得させられたものだろう。
恐怖耐性はついさっき協会で習得したものだ。
体になんらかの変化があるようには感じられないが……これで街の外に出ても大丈夫なんだろうか?
正直、効果があるように感じられない。
「レベルが低すぎるのか……」
まぁ、精神魔法に長けた医者でも、恐怖耐性のレベル三から四は最低でも必要って言ってたしなぁ。
明日、耐性スキルのレベルアップ方法を聞くとしよう。
「ってか、ツッコミってなんだよ。いつの間に習得させられたんだよ」
と呟いた直後。
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:三
「………………」
なんか頭に響いてき。
え? 今の呟きでレベルが上がったのか?
「いやいやいやいや! ツッコミスキルなんかのレベルを上げてどうすんだよっ! 漫才師にでもなれってかっ!?」
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:四
「うるせぇ!」
どうせ上げるなら恐怖耐性のレベルをあげさせろっ!
日が明ける頃には、ツッコミスキルが十三になっていた。
日が登り、大通りも明るく活気付いていた時間帯に、俺は協会へと再び足を運んでいた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「す、スキルについて、き、聞きたいんですけど」
「かしこまりました。それでは奥のカウンターでご用件を承りますね」
昨日の女の人が対応してくれたが、昨日の事には一切触れないように気遣ってくれているようだ。
昨日俺は、冒険者の登録やスキルの付与に対するお金を払ったあと、逃げるように協会を飛び出したんだ。
家に帰るまでの道中も、周りから笑われているようで、気が気じゃなかった。
「それで、何を聞かれたいのですか?」
「た、耐性け、系のスキルって、どうやって」
「あぁ、レベリングについてでしたか」
「は、はい」
と、俺の聞きたかったことを代弁してくれた彼女は、カウンターの下に頭を潜り込ませ、数秒後には分厚い書物をテーブルの上に置く。
「えぇーっと……恐怖耐性、恐怖耐性……これですね」
今度はページを数十枚ほど捲ると、彼女はお目当てのページに指を走らせる。
「恐怖耐性とは書いて字のごとく、恐怖に対する耐性を付けるスキルです。そこまではお分かりですよね」
俺は首を縦に振る。
「そして、耐性系のスキルは、対象の状態異常をその身に受けると、経験値が積み重なり、レベルが上がっていきます」
「………………」
俺は唖然とした。
今の説明を俺に当てはめると、次のようになる。
恐怖耐性のスキルをレベルアップさせるには、恐怖状態に何度も掛かる必要がある。
街の中で状態異常を引き起こさせるのは、国の法律で禁止されている。だから、街の中で恐怖状態になることはない。
となれば、街の外でモンスターに恐怖の状態異常を引き起こさせるように仕向けるしかない。
だが俺は、街の外に出ることが出来ない。出ようとすれば、門の辺りで吐いてしまうか、気絶することになる。
十六になった俺だが、今でも門の側には近づくことが出来ない。
なんなら夜道を歩くことさえままならない。
結論を言うとーー恐怖耐性のレベルアップは、俺には出来ない。ということになる。
「それ以外にも、同じスキルを重ね掛けでレベルアップする方法があります。前者よりも費用は高くついてしまいますが、即死耐性なんかのスキルは、生死に関わってきますからね」
「恐怖耐性のスキルをあるだけ持ってきてくださいっ!」
「は、はい……」
少し引き気味だったが、受付のお姉さんは奥へと引っ込んでいった。
「………………」
手に握り締めていたカードには、俺の名前ーーフィル・プリテの名前と、習得しているスキルが表記されている。
スキルは小さい頃に自然と習得しているものもあるらしく、恐怖耐性レベル一の他に、剣術レベル三。ツッコミレベル二があった。
剣術とツッコミは、子供の頃に剣を教えていた先生から習得させられたものだろう。
恐怖耐性はついさっき協会で習得したものだ。
体になんらかの変化があるようには感じられないが……これで街の外に出ても大丈夫なんだろうか?
正直、効果があるように感じられない。
「レベルが低すぎるのか……」
まぁ、精神魔法に長けた医者でも、恐怖耐性のレベル三から四は最低でも必要って言ってたしなぁ。
明日、耐性スキルのレベルアップ方法を聞くとしよう。
「ってか、ツッコミってなんだよ。いつの間に習得させられたんだよ」
と呟いた直後。
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:三
「………………」
なんか頭に響いてき。
え? 今の呟きでレベルが上がったのか?
「いやいやいやいや! ツッコミスキルなんかのレベルを上げてどうすんだよっ! 漫才師にでもなれってかっ!?」
ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
レベル:四
「うるせぇ!」
どうせ上げるなら恐怖耐性のレベルをあげさせろっ!
日が明ける頃には、ツッコミスキルが十三になっていた。
日が登り、大通りも明るく活気付いていた時間帯に、俺は協会へと再び足を運んでいた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「す、スキルについて、き、聞きたいんですけど」
「かしこまりました。それでは奥のカウンターでご用件を承りますね」
昨日の女の人が対応してくれたが、昨日の事には一切触れないように気遣ってくれているようだ。
昨日俺は、冒険者の登録やスキルの付与に対するお金を払ったあと、逃げるように協会を飛び出したんだ。
家に帰るまでの道中も、周りから笑われているようで、気が気じゃなかった。
「それで、何を聞かれたいのですか?」
「た、耐性け、系のスキルって、どうやって」
「あぁ、レベリングについてでしたか」
「は、はい」
と、俺の聞きたかったことを代弁してくれた彼女は、カウンターの下に頭を潜り込ませ、数秒後には分厚い書物をテーブルの上に置く。
「えぇーっと……恐怖耐性、恐怖耐性……これですね」
今度はページを数十枚ほど捲ると、彼女はお目当てのページに指を走らせる。
「恐怖耐性とは書いて字のごとく、恐怖に対する耐性を付けるスキルです。そこまではお分かりですよね」
俺は首を縦に振る。
「そして、耐性系のスキルは、対象の状態異常をその身に受けると、経験値が積み重なり、レベルが上がっていきます」
「………………」
俺は唖然とした。
今の説明を俺に当てはめると、次のようになる。
恐怖耐性のスキルをレベルアップさせるには、恐怖状態に何度も掛かる必要がある。
街の中で状態異常を引き起こさせるのは、国の法律で禁止されている。だから、街の中で恐怖状態になることはない。
となれば、街の外でモンスターに恐怖の状態異常を引き起こさせるように仕向けるしかない。
だが俺は、街の外に出ることが出来ない。出ようとすれば、門の辺りで吐いてしまうか、気絶することになる。
十六になった俺だが、今でも門の側には近づくことが出来ない。
なんなら夜道を歩くことさえままならない。
結論を言うとーー恐怖耐性のレベルアップは、俺には出来ない。ということになる。
「それ以外にも、同じスキルを重ね掛けでレベルアップする方法があります。前者よりも費用は高くついてしまいますが、即死耐性なんかのスキルは、生死に関わってきますからね」
「恐怖耐性のスキルをあるだけ持ってきてくださいっ!」
「は、はい……」
少し引き気味だったが、受付のお姉さんは奥へと引っ込んでいった。
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる