恐怖耐性を上げ過ぎると、恐怖の対象になるようです

シバトヨ

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耐性の恐怖

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 速足で家に帰った俺は、ベッドに潜り込んだ。
「………………」
 手に握り締めていたカードには、俺の名前ーーフィル・プリテの名前と、習得しているスキルが表記されている。
 スキルは小さい頃に自然と習得しているものもあるらしく、恐怖耐性レベル一の他に、剣術レベル三。ツッコミレベル二があった。
 剣術とツッコミは、子供の頃に剣を教えていた先生から習得させられたものだろう。
 恐怖耐性はついさっき協会で習得したものだ。
 体になんらかの変化があるようには感じられないが……これで街の外に出ても大丈夫なんだろうか?
 正直、効果があるように感じられない。
「レベルが低すぎるのか……」
 まぁ、精神魔法に長けた医者でも、恐怖耐性のレベル三から四は最低でも必要って言ってたしなぁ。
 明日、耐性スキルのレベルアップ方法を聞くとしよう。
「ってか、ツッコミってなんだよ。いつの間に習得させられたんだよ」
 と呟いた直後。

 ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
   レベル:三

「………………」
 なんか頭に響いてき。
 え? 今の呟きでレベルが上がったのか?
「いやいやいやいや! ツッコミスキルなんかのレベルを上げてどうすんだよっ! 漫才師にでもなれってかっ!?」

 ーーツッコミスキルのレベルが上昇しました。
   レベル:四

「うるせぇ!」
 どうせ上げるなら恐怖耐性のレベルをあげさせろっ!

 日が明ける頃には、ツッコミスキルが十三になっていた。



 日が登り、大通りも明るく活気付いていた時間帯に、俺は協会へと再び足を運んでいた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「す、スキルについて、き、聞きたいんですけど」
「かしこまりました。それでは奥のカウンターでご用件を承りますね」
 昨日の女の人が対応してくれたが、昨日の事には一切触れないように気遣ってくれているようだ。
 昨日俺は、冒険者の登録やスキルの付与に対するお金を払ったあと、逃げるように協会を飛び出したんだ。
 家に帰るまでの道中も、周りから笑われているようで、気が気じゃなかった。
「それで、何を聞かれたいのですか?」
「た、耐性け、系のスキルって、どうやって」
「あぁ、レベリングについてでしたか」
「は、はい」
 と、俺の聞きたかったことを代弁してくれた彼女は、カウンターの下に頭を潜り込ませ、数秒後には分厚い書物をテーブルの上に置く。
「えぇーっと……恐怖耐性、恐怖耐性……これですね」
 今度はページを数十枚ほど捲ると、彼女はお目当てのページに指を走らせる。
「恐怖耐性とは書いて字のごとく、恐怖に対する耐性を付けるスキルです。そこまではお分かりですよね」
 俺は首を縦に振る。
「そして、耐性系のスキルは、対象の状態異常をその身に受けると、経験値が積み重なり、レベルが上がっていきます」
「………………」
 俺は唖然とした。
 今の説明を俺に当てはめると、次のようになる。

 恐怖耐性のスキルをレベルアップさせるには、恐怖状態に何度も掛かる必要がある。
 街の中で状態異常を引き起こさせるのは、国の法律で禁止されている。だから、街の中で恐怖状態になることはない。
 となれば、街の外でモンスターに恐怖の状態異常を引き起こさせるように仕向けるしかない。
 だが俺は、街の外に出ることが出来ない。出ようとすれば、門の辺りで吐いてしまうか、気絶することになる。
 十六になった俺だが、今でも門の側には近づくことが出来ない。
 なんなら夜道を歩くことさえままならない。

 結論を言うとーー恐怖耐性のレベルアップは、俺には出来ない。ということになる。

「それ以外にも、同じスキルを重ね掛けでレベルアップする方法があります。前者よりも費用は高くついてしまいますが、即死耐性なんかのスキルは、生死に関わってきますからね」
「恐怖耐性のスキルをあるだけ持ってきてくださいっ!」
「は、はい……」
 少し引き気味だったが、受付のお姉さんは奥へと引っ込んでいった。 
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