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協会の恐怖
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意識は朦朧としていたが、なんとなくで状況は分かっていた。
片足ずつをゴブリン達が荒々しく掴み、上半身を地面に擦らせながら住みかに運ばれているんだろう。
このあと、俺の身に起こる出来事は、先生の話や噂話なんかでなんとなく知っている。
俺はことあと、ゴブリン達の玩具にされ、いたぶられながら殺される。
嫌だ。死にたくない。痛いのも。苦しいのも嫌だ。
叫び声を上げたいが、そんな体力も気力もない。
武器として渡されていた短剣は、ゴブリンの一匹が手で弄んでいる。奪うことなんか、絶対に無理だ。
他のゴブリンも、俺の顔を見下ろしてはケタケタ笑うだけ。
再び涙が溢れてくる。さっきまでは痛みで涙が出たけど、今の涙は違う。
苦しんで、傷つけられ、笑われて、そして殺される。
そんな命をグチャグチャにされながら殺される事に恐怖してるんだ。
嫌だっ! 死にたくないっ!! 助けてっ!!!
誰でもいいからっ! 俺をっ! 助けて下さいっ!!
そんな俺の必死な祈りが通じたのか。
突然、足が解放される。
力の入らない俺は、芝生に体を投げ出したように動けないでいた。
けたたましい叫び声と血飛沫を浴びながら、俺はその場で小さくなろうと、どこから溢れだしたのか、なけなしの体力で体を縮こまらせた。
「坊主っ! もう大丈夫だ!」
野太いけど、その一言で俺は意識を手放してしまった。
それから俺は、剣を握ることを止めた。
もっと言えば、最初の一ヶ月は家の外に出るのも怖かった。
まともに歩けるようになっても、あのゴブリン達が俺に襲い掛かってくるのでは? と、そんな恐怖心が植え付けられてしまったからだ。
そして、街の中であれば歩ける程度にまで回復した俺は、十六歳になった。
本当であれば、十五のときに協会で魔法の適正を視て貰う予定だったんだが、そのときは家の庭を歩くまでが限界だった。
敷地から出ようとすれば、突如、吐き気に襲われ、場合によっては、そのまま気絶した事もある。
そんな俺でも、少しずつ恐怖を克服し、街の中を歩けるようになった。
それでも街の中まで。それも大きな通りのみで、昼間の明るい時間帯しか歩くことが出来ない。
これでも俺にとっては大きな進歩だ。
話を戻そう。
ともかく、十六歳になった俺は、この状態異常と言っても過言ではない症状を治すべく、協会へと足を運ぶ事になった。
なんで協会にいく必要があるのか。
それは、協会が魔法以外にもスキルの付与を行っているからだ。
三年ほど前までは、スキルの販売や付与を行っている店があったんだが、そこが潰れてしまい、代わりに協会が販売や付与をすることになったんだとか。
で、そのスキルが、俺の目当てのものになる。
そのスキルの名は、『恐怖耐性』という。
名前の通り、恐怖に対する耐性を付けるスキルだ。
俺の症状が恐怖によるものであれば、このスキルのレベルを上げていけば回復する。という算段だ。
なお、耐性系のスキルには、上位の無効化スキルも存在する。恐怖耐性の上位スキルは、『恐怖無効化』という事になる。
だが、俺の症状は、その無効化スキルに頼ることが出来ない。
というのも、無効化系のスキルは相手から受ける際に効果を発揮するからだ。
すでに発症している以上は、恐怖無効化は効果を出してくれない。
だから、下位互換の恐怖耐性を付与してもらい、そのレベルを上げていく。という方法に落ち着いた。
あとは、どれだけのレベルを上げれば回復となるのか。
「所持金はあるんだ。まずは買えるだけ買って、それでも足りないなら街で仕事を貰えばいい」
街の中であれば、まだ動ける。大通りの店で、午前中に終わる仕事なら、俺でも働けるはずだ。
そして俺は、協会の門を押し開いた。
片足ずつをゴブリン達が荒々しく掴み、上半身を地面に擦らせながら住みかに運ばれているんだろう。
このあと、俺の身に起こる出来事は、先生の話や噂話なんかでなんとなく知っている。
俺はことあと、ゴブリン達の玩具にされ、いたぶられながら殺される。
嫌だ。死にたくない。痛いのも。苦しいのも嫌だ。
叫び声を上げたいが、そんな体力も気力もない。
武器として渡されていた短剣は、ゴブリンの一匹が手で弄んでいる。奪うことなんか、絶対に無理だ。
他のゴブリンも、俺の顔を見下ろしてはケタケタ笑うだけ。
再び涙が溢れてくる。さっきまでは痛みで涙が出たけど、今の涙は違う。
苦しんで、傷つけられ、笑われて、そして殺される。
そんな命をグチャグチャにされながら殺される事に恐怖してるんだ。
嫌だっ! 死にたくないっ!! 助けてっ!!!
誰でもいいからっ! 俺をっ! 助けて下さいっ!!
そんな俺の必死な祈りが通じたのか。
突然、足が解放される。
力の入らない俺は、芝生に体を投げ出したように動けないでいた。
けたたましい叫び声と血飛沫を浴びながら、俺はその場で小さくなろうと、どこから溢れだしたのか、なけなしの体力で体を縮こまらせた。
「坊主っ! もう大丈夫だ!」
野太いけど、その一言で俺は意識を手放してしまった。
それから俺は、剣を握ることを止めた。
もっと言えば、最初の一ヶ月は家の外に出るのも怖かった。
まともに歩けるようになっても、あのゴブリン達が俺に襲い掛かってくるのでは? と、そんな恐怖心が植え付けられてしまったからだ。
そして、街の中であれば歩ける程度にまで回復した俺は、十六歳になった。
本当であれば、十五のときに協会で魔法の適正を視て貰う予定だったんだが、そのときは家の庭を歩くまでが限界だった。
敷地から出ようとすれば、突如、吐き気に襲われ、場合によっては、そのまま気絶した事もある。
そんな俺でも、少しずつ恐怖を克服し、街の中を歩けるようになった。
それでも街の中まで。それも大きな通りのみで、昼間の明るい時間帯しか歩くことが出来ない。
これでも俺にとっては大きな進歩だ。
話を戻そう。
ともかく、十六歳になった俺は、この状態異常と言っても過言ではない症状を治すべく、協会へと足を運ぶ事になった。
なんで協会にいく必要があるのか。
それは、協会が魔法以外にもスキルの付与を行っているからだ。
三年ほど前までは、スキルの販売や付与を行っている店があったんだが、そこが潰れてしまい、代わりに協会が販売や付与をすることになったんだとか。
で、そのスキルが、俺の目当てのものになる。
そのスキルの名は、『恐怖耐性』という。
名前の通り、恐怖に対する耐性を付けるスキルだ。
俺の症状が恐怖によるものであれば、このスキルのレベルを上げていけば回復する。という算段だ。
なお、耐性系のスキルには、上位の無効化スキルも存在する。恐怖耐性の上位スキルは、『恐怖無効化』という事になる。
だが、俺の症状は、その無効化スキルに頼ることが出来ない。
というのも、無効化系のスキルは相手から受ける際に効果を発揮するからだ。
すでに発症している以上は、恐怖無効化は効果を出してくれない。
だから、下位互換の恐怖耐性を付与してもらい、そのレベルを上げていく。という方法に落ち着いた。
あとは、どれだけのレベルを上げれば回復となるのか。
「所持金はあるんだ。まずは買えるだけ買って、それでも足りないなら街で仕事を貰えばいい」
街の中であれば、まだ動ける。大通りの店で、午前中に終わる仕事なら、俺でも働けるはずだ。
そして俺は、協会の門を押し開いた。
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