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休日申請 〜ジェラルド視点
しおりを挟む俺は毎夜、妖艶な夢に悩まされ続けた。
どれだけ欲求不満なんだ、情けない。
新米騎士たちと暴れまわって発散してはいるのだが、そろそろ限界かもしれない。
......仕方ない。近いうち、娼館に行って来るか……。
荒くれ者たちの相手が慣れている娼婦たちでさえ、俺の相手を恐れて難色を示すので、娼館には出来るだけ行かないようにしているのだが、俺の中の猛獣が暴れだしたら、人生が終了してしまうしな。
そういうことで、俺はアーロンに休日申請するため団長室にやって来た。
「ジェラルド様、休日申請とは珍しいですね」
アーロンはテキパキと書類を書き込みながらそう言った。
「ああ。久しぶりに発散してくるつもりだ」
俺の言葉を聞いたアーロンは、その手を止めて、意外そうに俺を見た。
「おや、これは珍しい。ジェラルド様は娼館がお嫌いだったはずでは?」
「嫌っているのは俺じゃなく、娼館の方だ。俺も一応男だから、たまには発散して来ないと溜まってしまう」
「ご自分で処理し切れない程に溜まるなんて、まだまだお若いですね。ジェラルド様」
「ふん、ほざけ。相手に困らないお前にだけは言われたくないな」
アーロンはハハハと軽く笑った後、ニヤリと表情を変えて俺に言った。
「娼館も良いですが、私はジェラルド様にお願いしたい事があるのです。休日申請に許可を出しますから、今度の公開訓練にアカネを連れ出してやってくれませんか?」
俺は思ってもいなかったアーロンの話に、不審な表情で尋ねた。
「どういう事だ?」
アーロンは持っていた筆を机に置いて、真面目な顔で事情を話した。
「アカネが保護室に入ってから、もう一月が来ようと言うのに、彼女は担当騎士たちに心を許さず、部屋に篭ったきりなんです」
「そうなのか?」
「心配した騎士たちが、どうして部屋から出ないのかと問えば、ジェラルド様以外と一緒なのは嫌だからと言っているそうなんです」
「......何でだよ」
「知りませんよそんなこと。ですが彼女、あの小さな部屋に閉じ篭ったままでは身体を悪くしてしまうでしょう。だから、休日申請の日に、敷地内ではありますが、アカネを誘ってデートでも楽しんで来て下さい」
俺はしばらく逡巡した後、アーロンに気になっていたことを尋ねた。
「あれから国の指示はないのか?」
「はい。3度ほど調査を重ねて報告書を提出しているのですが、アカネの供述からは何も進展はないですし、かと言って不審な行動を起こすでもないので、国も判断に困っているのでしょう」
「そうか……まあ、謎めいた出現が怪しいといえばそうなんだが、だからと言って彼女が間者には、とても見えないよなぁ、アーロン」
「それを見極めるためにも、ジェラルド様に彼女を部屋から連れ出して欲しいのです。外へ出れば、何者かと接触しようと動きを見せるかもしれません。数人見張りをつけて、ジェラルド様たちの動きを見張らせてもらいます」
「なんだ、俺は良いように使われるだけじゃないか。休日扱いはやめて、仕事でいいだろ」
「すみません。部下たちの目がありますから、それはちょっと......」
「フン、それなら今度、酒でも奢れよ?」
そんな訳で、娼館訪問の予定はとりやめとなり、俺はアカネを公開訓練に誘うため、約一月ぶりに彼女のいる保護室へと向かった。
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