女忍茜、西洋風異世界へ行く〜強面元騎士のお嫁様になります

花野はる

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オケアニスの女神のような 〜ジェラルド視点

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 俺はジェラルド・マーティン30歳、以前は王立騎士団で団長をしていた。

 俺が団長だった時、王家の跡目争いが勃発していた。とある舞踏会で、王太子殿下が襲われた。少し離れた場所にいた俺は、反撃は間に合わないと判断して、身を呈して防いだ。

 そのため脚を負傷し、団長職を退いた。まだまだ若い兵士には負けない程度に戦えるのだが、俺が戦闘班に残っては次の団長もやりにくかろう。

 そういう事で、今はもう俺は騎士ではなく、若い兵士たちの教師として騎士団に残っている。


 俺は戦闘訓練の授業を終えて、寮内の自室でシャワーを浴びていた。

 バスタブに湯を張った覚えがないのに水音がしたので振り返ると、そこにはオケアニスの女神のような、黒髪黒目の女が風呂に入っていた。

 俺が呆然と佇んでいると、女は「ご機嫌よう。良いお湯ですわね」と優雅に微笑んだ。

 俺は驚愕と羞恥で、思わず叫んで浴室から脱出した。そして最も恥ずべき部位をバスタオルで隠した。

 そして、中の女をどうするべきか悩んでいると、中から鼻歌が聞こえてきた。どうやら身体を洗っているらしい。そしてまた、ちゃぷんと湯に浸かる音がした……。

 ......この状況で、何も動じてないあの女はなんだ。

 俺は混乱の中、とにかくあの女が出て来たら話を聞かねばと思っていたら、扉をガタガタ言わせている。

 開け方がわからないのか? 俺は折りたたむような作りの扉を開けてやった。

 全裸の女は少しも隠そうとせずに、水を滴らせながら脱衣所に入ってきた。

 そして扉を開けてやったお礼を言うと、拭くものと着るものを貸してくれという。

 俺は腰に巻いたものと同じ柄のバスタオルを渡したのだが、女は一緒眉を寄せたように見えた。気にいらなかったのか? しかし、女は気をとりなおしたように礼を言ってきたので、俺のシャツも手渡してやった。

 俺は脱衣所から出て、リビングでお茶を飲みながら女を待っていると、俺のシャツを羽織った女がやってきた。見るとボタンを合わせてないので胸の谷間や大切なところが覗いている。俺は焦って、視線を女から外すと、女は困ったように俺に言った。

「あの、この着物を止めるための帯を貸してもらえませんか?」

 帯? よく分からないが、ボタンの合わせ方がわからないのか?

「ボタンを閉めれば良かろう?」

 俺がそういうと、女はボタンのついた部分を摘んで持ち上げて見ている。そんなにしたら、身体がもっと見えてしまうではないか……。俺は顔を背ける素振りをしながらも、つい、視線は女の方を見てしまっていた。

 すると女は「この固くて丸いものがボタンですか? これをどのようにするのですか?」と聞く。

「反対側に穴が開いているだろう。そこにボタンを通すのだ」

 女は「ああ」と納得して、しばらくごそごそしていたが、慣れない様子で上手くいかない。ボタンが違う位置に嵌められ、かけ違いになって困っている。

「度々心苦しいのですけれど、一度、やって見せてくれませんか?」

 そう言って、俺の目の前にすいっと寄って来た。

 ......この女に恥じらいという概念はなさそうなので、俺は目の前のこの生き物は大きな子供であると位置づけて、素早くボタンを嵌め直してやった。すると......。

「まあ、お侍さんは器用ですわねぇ」

 女は屈託のない表情で、コロコロと笑ったーー。


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