上 下
44 / 45

さっきの続きをしようよ

しおりを挟む

私はあれから、セディに手を引かれ、馬車乗り場まで向かった。

頭に血が上っていたとはいえ、随分大胆なことをしてしまって恥ずかしくてたまらない。


セディも無言で私の前を歩いているけれど、耳が赤く染まっていていたたまれない。

繋がれた手が熱くて、すっごくドキドキしちゃう。


馬車乗り場まで着くと、セディが手を添えて馬車に乗せてくれた。

いつもはその後一緒に乗り込んでくるはずなんだけど、セディはためらいがちに言った。

「今日は俺、馬で並走するから...... 」

「えっ」

私はあんなことをして、セディに引かれてしまったのかと青ざめた。

セディはそんな私の表情を見て察してくれたみたいだ。


「違うんだ。その......。今、ゆいとふたりきりになったら、屋敷まで我慢できそうにないから...... 」

「えっ」

今度は私は真っ赤になって声を発した。


セディはその後にこりと微笑んで、

「ちゃんとゆいのことは守るから安心して。それじゃあ、またあとで......」

「は、はい、またあとで......」

私は心臓が苦しかったけど、何とかセディに答えた。



◇◇◇


「ただいまです、ママさん...... 」

セディが馬車から手を添えて下ろしてくれたまま、私の手を離さなかったので、私は恥ずかしくてママさんの顔をまともに見られない。

「あら、早かったのね、ふたりとも......あらあら」

出迎えてくれたママさんは、私たちの繋がれた手を見てにやりと微笑んだ。

「今日は私がゆいちゃんをエスコートする必要はなさそうね?」

ママさんがセディに言うと、

「俺がゆいを部屋まで連れて行きます」

そう言って私の手を引いて歩き出した。



私の部屋までたどり着くも、セディは一向に私の手を離そうとしない。

「ゆい......一緒に部屋に入れてくれるか?」

私はこくんと頷いた。


そうしてやっと解放された手で、ドアノブをひねって扉を開く。

セディを上目遣いに見上げると、セディは無言で部屋に入った。


私は静かにドアを閉める。

セディはそれを見届けると、私に向かって真顔で言った。

「ドアを......完全に閉めたね。それは、さっきの続きをして良いってことだと受け取るよ?」


セディの瞳には、いつもとは違う熱がこもっている。

(ううっ......。セディが男性だ!紳士じゃなくて男性だあ~!トキメキが爆発しちゃいそう!)


私は恥ずかしさのあまり、両手で顔を隠して言った。

「わたしから、おねがいしたことです、から......いいにきまってマス...... 」

私が言い終わるか終わらないかのうちにセディに抱きしめられた。


「ゆい......!そんなに可愛いことばかり言ったら、俺はもう貴女を離せなくなってしまうよ......?」


私はセディの言葉を聞いて、それでいい、と思った。

これまで、もしも前の世界に帰れることになったら、迷いなくセディを選べるのか自信がなかった。

でも今は、この先もずっとセディと居たいと思う。


「わたしも......セディとずっといっしょ、いたいです......。わたしを、あなたのおヨメさん、してくれますか......?」


「ゆいっ!!」

セディは堪えきれないという風に、私に唇を押し付けて来た。

「んんっ!」

目を閉じる間もなくて、私は身体がぶるりと震えた。


「ゆいっ!ゆいっ......!!」

離れては私の名を叫び、そしてまた口付けてくる。


私はそんなセディが切なくて涙が出て来た。

「セディ...... 」

私が囁くように名を呼んだ瞬間、セディの熱い舌がするりと入り込んできた。

その後は頭がぼうっとして、何が何だか分からなくなったーー。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人

花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。 そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。 森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。 孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。 初投稿です。よろしくお願いします。

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

処理中です...