43 / 45
俺はもう、この人しか愛せない〜セディ視点
しおりを挟む
「お願いです!セドリック様。このままではうちの家は没落してしまいます。わたくし、平民になるなど、とても耐えられません。だからあなたのお嫁さんにしてくださいまし。あの家にいる限り、また父がギャンブルで借金を作って同じ目に遭いますわ。あなたしか、頼れる男性はいないのです。どうか、またわたくしと付き合ってくださいませ」
俺は彼女の言葉を聞きながら、2年前の自分の愚かさを痛感していた。
青い顔をしながらも、俺と一緒にデートしてくれ、ハンカチで口を押さえながら俺と会話してくれた彼女を健気だと思ったのだ。家のためとはいえ、俺を拒まずいてくれたから、いつかは俺の内面に目を向けてくれ、容姿にも慣れて好きになってくれるかもしれない、と必死で彼女に尽くした俺は本当にバカだった。
彼女は最初から、俺の内面など見ようとはしていなかった。
彼女が我慢してでも手に入れたかったのは、公爵家の妻という立場だ。
俺が後継を辞退した途端、彼女はその場で俺から去っていくことだろう。
そう思った時、ふと、ゆいのことが頭に浮かんだ。
ゆいは?ゆいはどうだろう......。
俺がもし、公爵家の後継でもなく、騎士団の副団長でもなくなったら......。
俺は、俺という一人の人間として、ゆいに好きになってもらえているのだろうか......。
俺が思考に耽って返事が遅れたせいで、クレアは勘違いをしたみたいだ。
「セドリック様、私をお疑いなのですね?では、私に口づけをなさってください。私はもう、絶対に吐いたりしません。我慢してみせますわ!」
「クレア、生理的に受け付けないものは、何年経ってもきっと無理だと思いますよ。だから俺たちは別れたのでしたよね?それに、俺には今、好きな女性がいるのです。だから、申し訳ありませんが、他を当たってくれませんか」
俺がそういうと、彼女は涙を流して言う。
「私のような醜女を、貰ってくれる男性は他にはいませんもの!あなただって、いくら好きな女性がいたって、その女性が本心から好きになってくれるなんて思ってはいないでしょう?結婚できたとしても、それはきっと形だけで、指一本触れさせてはくれませんわよ?そんな女性と結婚するよりも、私なら、あなたの好きにさせて差し上げますわ。きっと耐えきってみせますから!」
俺は彼女の言葉に、随分酷いこと言うなあ......、と第三者のような気持ちで聞いていた。
傷つくと言うより、この女性に半年間も入れ込んだ、昔の俺がバカみたいで可笑しかった。
「さあ、セドリック様、わたくしに口づけをしてくださいませ」
クレアはそう言って、俺ににじり寄ってきた。
俺はそれに合わせて後退する。
「~~~もうガマンできないです!!」
近くの茂みの中からゆいが飛び出して来た。
「ゆ、ゆい?!」
俺が驚いていると、ゆいはスカートをはためかせながら一直線に俺に向かって駆けて来た。
両手を俺に向けて伸ばしている。
思わずそれに反応して、俺は両手を広げ、しゃがんだ。
ぽすん。
ゆいは俺の首に腕を絡めて胸の中に収まった。
俺もゆいの背中に手を回し、しっかりと固定する。
「ゆい?どうして貴女がここに?」
俺が問うも、ゆいはそれには答えず俺に言った。
「セディ!そのヒトとキスしてはいやデス!セディのクチビルは、わたしのデス!だれにもあげたくないっ!!」
ゆいはぎゅーっと力を込めて俺を抱きしめた。
それと同時に、俺の胸もぎゅっと締め付けられた。
「ああ、もちろんだ、ゆい。俺の心も身体も、すべて貴女のものだから...... 」
俺が答えると、ゆいはにっこり微笑んで、
「うれしい...... 」
そう言って、俺の額にそっと唇をくっつけた。
「ゆい?!」
俺はいつになく大胆なゆいに焦りながら、ゆいの顔を見つめた。
ゆいは黒曜石のように美しい瞳を揺らめかせながら、
「このヒタイも、わたしの」と言った。
そして鼻筋にキスして
「このオハナも、わたしの」
次は頬に口付ける。
「このほっぺもわたしの」
そう言った後、ゆいは頬を染めて言った。
「のこったばしょは、セディからしてもらいたいデス......はじめてだから...... 」
ああっ!なんて愛らしいんだろう!
こんなにも俺を好きだと表現してくれる人はゆいしかいない!
「ゆい......本当にいいのか......?」
俺は最終確認をすると、
「セディ、だいすきです......」
そう言ってゆいは少し顔を上げ気味にして瞳を閉じた。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
そしてゆっくりとゆいの顔に近づいて.....ためらいながらもそっと可愛らしい唇に自分の唇を当てた。
大丈夫か......?
俺は不安な気持ちでゆいを見つめる。
ゆいはそっと瞳を開けてはにかんだ。
「はずかしいけど、きもちよかったデス。もっといっぱいしてほしいデス」
ゆいは俺を悶え殺す気か?!
俺はグッと力を入れてゆいを抱きしめた。
「ああ、俺ももっとたくさんしたい。だけどここには何人か見ている奴がいるようだ。残念だが、続きは後にしよう」
「ひえ?!わ、わたしっ......?は、はずかしいっ......!!」
ゆいは顔どころか耳まで真っ赤にして俺の胸に顔を隠した。
俺はゆいを抱いたまま、クレアに向かって言った。
「クレア、俺はもう、この人しか愛せない。申し訳ないが帰ってくれ」
クレアは青ざめた顔で立っている。
「マリエル。そこにいるんだろ?彼女を馬車までお送りしてくれ。それからアラン、俺は仕事が終わったから、ゆいをこのまま連れて屋敷へ帰るから。後はよろしく頼む」
茂みに隠れていた二人は、バツが悪そうに姿を現して敬礼をしたーー。
俺は彼女の言葉を聞きながら、2年前の自分の愚かさを痛感していた。
青い顔をしながらも、俺と一緒にデートしてくれ、ハンカチで口を押さえながら俺と会話してくれた彼女を健気だと思ったのだ。家のためとはいえ、俺を拒まずいてくれたから、いつかは俺の内面に目を向けてくれ、容姿にも慣れて好きになってくれるかもしれない、と必死で彼女に尽くした俺は本当にバカだった。
彼女は最初から、俺の内面など見ようとはしていなかった。
彼女が我慢してでも手に入れたかったのは、公爵家の妻という立場だ。
俺が後継を辞退した途端、彼女はその場で俺から去っていくことだろう。
そう思った時、ふと、ゆいのことが頭に浮かんだ。
ゆいは?ゆいはどうだろう......。
俺がもし、公爵家の後継でもなく、騎士団の副団長でもなくなったら......。
俺は、俺という一人の人間として、ゆいに好きになってもらえているのだろうか......。
俺が思考に耽って返事が遅れたせいで、クレアは勘違いをしたみたいだ。
「セドリック様、私をお疑いなのですね?では、私に口づけをなさってください。私はもう、絶対に吐いたりしません。我慢してみせますわ!」
「クレア、生理的に受け付けないものは、何年経ってもきっと無理だと思いますよ。だから俺たちは別れたのでしたよね?それに、俺には今、好きな女性がいるのです。だから、申し訳ありませんが、他を当たってくれませんか」
俺がそういうと、彼女は涙を流して言う。
「私のような醜女を、貰ってくれる男性は他にはいませんもの!あなただって、いくら好きな女性がいたって、その女性が本心から好きになってくれるなんて思ってはいないでしょう?結婚できたとしても、それはきっと形だけで、指一本触れさせてはくれませんわよ?そんな女性と結婚するよりも、私なら、あなたの好きにさせて差し上げますわ。きっと耐えきってみせますから!」
俺は彼女の言葉に、随分酷いこと言うなあ......、と第三者のような気持ちで聞いていた。
傷つくと言うより、この女性に半年間も入れ込んだ、昔の俺がバカみたいで可笑しかった。
「さあ、セドリック様、わたくしに口づけをしてくださいませ」
クレアはそう言って、俺ににじり寄ってきた。
俺はそれに合わせて後退する。
「~~~もうガマンできないです!!」
近くの茂みの中からゆいが飛び出して来た。
「ゆ、ゆい?!」
俺が驚いていると、ゆいはスカートをはためかせながら一直線に俺に向かって駆けて来た。
両手を俺に向けて伸ばしている。
思わずそれに反応して、俺は両手を広げ、しゃがんだ。
ぽすん。
ゆいは俺の首に腕を絡めて胸の中に収まった。
俺もゆいの背中に手を回し、しっかりと固定する。
「ゆい?どうして貴女がここに?」
俺が問うも、ゆいはそれには答えず俺に言った。
「セディ!そのヒトとキスしてはいやデス!セディのクチビルは、わたしのデス!だれにもあげたくないっ!!」
ゆいはぎゅーっと力を込めて俺を抱きしめた。
それと同時に、俺の胸もぎゅっと締め付けられた。
「ああ、もちろんだ、ゆい。俺の心も身体も、すべて貴女のものだから...... 」
俺が答えると、ゆいはにっこり微笑んで、
「うれしい...... 」
そう言って、俺の額にそっと唇をくっつけた。
「ゆい?!」
俺はいつになく大胆なゆいに焦りながら、ゆいの顔を見つめた。
ゆいは黒曜石のように美しい瞳を揺らめかせながら、
「このヒタイも、わたしの」と言った。
そして鼻筋にキスして
「このオハナも、わたしの」
次は頬に口付ける。
「このほっぺもわたしの」
そう言った後、ゆいは頬を染めて言った。
「のこったばしょは、セディからしてもらいたいデス......はじめてだから...... 」
ああっ!なんて愛らしいんだろう!
こんなにも俺を好きだと表現してくれる人はゆいしかいない!
「ゆい......本当にいいのか......?」
俺は最終確認をすると、
「セディ、だいすきです......」
そう言ってゆいは少し顔を上げ気味にして瞳を閉じた。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
そしてゆっくりとゆいの顔に近づいて.....ためらいながらもそっと可愛らしい唇に自分の唇を当てた。
大丈夫か......?
俺は不安な気持ちでゆいを見つめる。
ゆいはそっと瞳を開けてはにかんだ。
「はずかしいけど、きもちよかったデス。もっといっぱいしてほしいデス」
ゆいは俺を悶え殺す気か?!
俺はグッと力を入れてゆいを抱きしめた。
「ああ、俺ももっとたくさんしたい。だけどここには何人か見ている奴がいるようだ。残念だが、続きは後にしよう」
「ひえ?!わ、わたしっ......?は、はずかしいっ......!!」
ゆいは顔どころか耳まで真っ赤にして俺の胸に顔を隠した。
俺はゆいを抱いたまま、クレアに向かって言った。
「クレア、俺はもう、この人しか愛せない。申し訳ないが帰ってくれ」
クレアは青ざめた顔で立っている。
「マリエル。そこにいるんだろ?彼女を馬車までお送りしてくれ。それからアラン、俺は仕事が終わったから、ゆいをこのまま連れて屋敷へ帰るから。後はよろしく頼む」
茂みに隠れていた二人は、バツが悪そうに姿を現して敬礼をしたーー。
44
お気に入りに追加
1,525
あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。


私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。


ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

天使は女神を恋願う
紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか!
女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。
R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m
20話完結済み
毎日00:00に更新予定

捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる