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過去の女性、クレア男爵令嬢の訪問〜セディ視点
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デート初っ端からトラブル続発で、それが全て俺のせいだという事実に、かなり凹んでしまった。
しかも好きな人の前でストーカー呼ばわり、不埒者呼ばわりされるとは......。
だけど俺が貶されるたびにゆいが否定してくれたのは嬉しかった......。
今までは仕方ないと諦め、それでも人を悪く思わないように、認めてもらえるように努力しようと自分一人で心の整理をしなければならなかった。
それは途方もなく孤独で、苦しい道のりだった気がする。
だが、今はゆいがいつも俺を素晴らしいもののように扱ってくれる。
だから他からどんなに貶められても傷付かないでいられる。
きっと今の俺を心底傷つけることができるのは、ゆいただ一人だけだと思う。
ゆいが俺を嫌いになったら、前よりももっと深い傷を作って、再起不能になるのではないだろうか......。
そんな気持ちから、俺はゆいを神聖視するあまり、動物園でのデートでも、くっつかない、邪な感情を抱かない、不埒ものから守りきる......そんな騎士道真っ只中な行動に徹していた。
ミントグリーンのスカートを揺らしながらはしゃぐゆいは本当に美しい。
静かで温かい微笑みを絶やさず、優しく俺を見つめる妖精は、時折自然の中に溶けて消えてしまいそうだ......。
ある日突然やってきた彼女だから、ある日突然消えてしまうのではなかろうか......。
そうして俺は、彼女を失いたくなくて、男としての欲望は心の奥深く仕舞い込んだ。
◇◇◇
「それで?坊ちゃん、デートはどうだったのですか?」
「あ、ああ。色々トラブルはあったのだが、最終的には良いデートができたのではないかと思うが」
俺がマークにそう報告すると、マークの瞳がキラリと鈍く光った。
「トラブルが?......では、それを生かして、先に進めたのですね?」
マークの恋愛講座では、トラブルを生かして先に進め!という教えがあった。
だが、俺はそんなうまいこと振る舞えるはずもなかった。
「いや......。マークが期待するようなことは何一つしていない」
「はっ?せめてキスくらいまでは致したのでございましょう?」
「そんなことできるわけないだろ」
「で、では、せめて抱きしめ合うくらいのことは......?」
デパートでゆいを抱擁したのは、そういう男女のやつじゃなかったからノーカウントだよな......。
「いや、していない」
「なっ......、では、デート中は手を繋いで歩いたりとかは...... 」
「......いや...... 」
マークは目を見開いて、信じられないという顔をした。
「では坊ちゃんは、デートで一体何をして来たというのです?」
「......ゆいを見守り、ゆいがぶつかるのを避け、不埒ものがナンパしていたのを追い払った」
「............ 」
マークはハアーと大きくため息をつき、眉間にしわを寄せて言い放った。
「それは素晴らしい騎士道精神でございましたね」
「はは......まあな」
マークは一気に仕事のやる気をなくしたようだ。
「坊ちゃん。今日の仕事はこれで終いに致しましょう。私は疲れが溜まっているようです」
仕事を終わらせるかどうか判断するのは副団長である俺だろと突っ込むところだろうが、恋愛講座を一つも生かせなかった俺はマークに頭が上がらなかった。
「そうしよう...... 」
俺はいつもより早く仕事が済んだので、アランに預けているゆいのところへ迎えに行くことにした。
◇◇◇
副団長室から出て廊下を歩いていると、新米騎士がやって来た。
「副団長、クレア男爵令嬢が副団長にお会いしたいと訪ねて来られています。いかが致しますか?」
「クレアが?」
俺は眉を寄せて聞き返した。
クレア男爵令嬢......。
俺が2年前、見合いをして断られまくっている中、唯一デートを重ね、結婚を考えた女性だ......。
彼女は身分が低いため、本来なら公爵家の息子である俺とは釣り合わないのだが、俺がこんな容姿で嫁の来てがないと密かに噂が立ったため、下心ある男爵に俺に取り入って結婚しろと命令されたのだ......。
クレアは家のために、好きでもない俺と付き合い、必死に俺の容姿に耐えようと努力してくれた女性だ。
俺は彼女に好かれていないことは承知していたが、努力してくれる彼女を見て、いつかは俺の容姿に慣れてくれるかもしれないと、彼女に好かれるため、あらゆる努力をしたのだった。
だが、俺が彼女の額に口付けようと顔を近づけた時、彼女は我慢しきれず吐き戻してしまった......。
やはり、生理的に受け付けないものは、どんなに努力しても無駄なのだとわかり、俺はクレアのために俺がクレアを振ったことにして、男爵家が抱えていた借金を肩代わりして別れたのだった。
若い時の失恋は、俺の心に深く傷を残したが、それが今になってゆいに手を出すことをためらう原因なのかもしれない、と思った。
今はクレアに対して恋愛感情など持ってはいないが、ともに歩み寄ろうと努力した同志のような感情を抱いている。
「わかった。俺の方が会いに行こう」
俺は騎士団窓口の方へ歩き出した。
しかも好きな人の前でストーカー呼ばわり、不埒者呼ばわりされるとは......。
だけど俺が貶されるたびにゆいが否定してくれたのは嬉しかった......。
今までは仕方ないと諦め、それでも人を悪く思わないように、認めてもらえるように努力しようと自分一人で心の整理をしなければならなかった。
それは途方もなく孤独で、苦しい道のりだった気がする。
だが、今はゆいがいつも俺を素晴らしいもののように扱ってくれる。
だから他からどんなに貶められても傷付かないでいられる。
きっと今の俺を心底傷つけることができるのは、ゆいただ一人だけだと思う。
ゆいが俺を嫌いになったら、前よりももっと深い傷を作って、再起不能になるのではないだろうか......。
そんな気持ちから、俺はゆいを神聖視するあまり、動物園でのデートでも、くっつかない、邪な感情を抱かない、不埒ものから守りきる......そんな騎士道真っ只中な行動に徹していた。
ミントグリーンのスカートを揺らしながらはしゃぐゆいは本当に美しい。
静かで温かい微笑みを絶やさず、優しく俺を見つめる妖精は、時折自然の中に溶けて消えてしまいそうだ......。
ある日突然やってきた彼女だから、ある日突然消えてしまうのではなかろうか......。
そうして俺は、彼女を失いたくなくて、男としての欲望は心の奥深く仕舞い込んだ。
◇◇◇
「それで?坊ちゃん、デートはどうだったのですか?」
「あ、ああ。色々トラブルはあったのだが、最終的には良いデートができたのではないかと思うが」
俺がマークにそう報告すると、マークの瞳がキラリと鈍く光った。
「トラブルが?......では、それを生かして、先に進めたのですね?」
マークの恋愛講座では、トラブルを生かして先に進め!という教えがあった。
だが、俺はそんなうまいこと振る舞えるはずもなかった。
「いや......。マークが期待するようなことは何一つしていない」
「はっ?せめてキスくらいまでは致したのでございましょう?」
「そんなことできるわけないだろ」
「で、では、せめて抱きしめ合うくらいのことは......?」
デパートでゆいを抱擁したのは、そういう男女のやつじゃなかったからノーカウントだよな......。
「いや、していない」
「なっ......、では、デート中は手を繋いで歩いたりとかは...... 」
「......いや...... 」
マークは目を見開いて、信じられないという顔をした。
「では坊ちゃんは、デートで一体何をして来たというのです?」
「......ゆいを見守り、ゆいがぶつかるのを避け、不埒ものがナンパしていたのを追い払った」
「............ 」
マークはハアーと大きくため息をつき、眉間にしわを寄せて言い放った。
「それは素晴らしい騎士道精神でございましたね」
「はは......まあな」
マークは一気に仕事のやる気をなくしたようだ。
「坊ちゃん。今日の仕事はこれで終いに致しましょう。私は疲れが溜まっているようです」
仕事を終わらせるかどうか判断するのは副団長である俺だろと突っ込むところだろうが、恋愛講座を一つも生かせなかった俺はマークに頭が上がらなかった。
「そうしよう...... 」
俺はいつもより早く仕事が済んだので、アランに預けているゆいのところへ迎えに行くことにした。
◇◇◇
副団長室から出て廊下を歩いていると、新米騎士がやって来た。
「副団長、クレア男爵令嬢が副団長にお会いしたいと訪ねて来られています。いかが致しますか?」
「クレアが?」
俺は眉を寄せて聞き返した。
クレア男爵令嬢......。
俺が2年前、見合いをして断られまくっている中、唯一デートを重ね、結婚を考えた女性だ......。
彼女は身分が低いため、本来なら公爵家の息子である俺とは釣り合わないのだが、俺がこんな容姿で嫁の来てがないと密かに噂が立ったため、下心ある男爵に俺に取り入って結婚しろと命令されたのだ......。
クレアは家のために、好きでもない俺と付き合い、必死に俺の容姿に耐えようと努力してくれた女性だ。
俺は彼女に好かれていないことは承知していたが、努力してくれる彼女を見て、いつかは俺の容姿に慣れてくれるかもしれないと、彼女に好かれるため、あらゆる努力をしたのだった。
だが、俺が彼女の額に口付けようと顔を近づけた時、彼女は我慢しきれず吐き戻してしまった......。
やはり、生理的に受け付けないものは、どんなに努力しても無駄なのだとわかり、俺はクレアのために俺がクレアを振ったことにして、男爵家が抱えていた借金を肩代わりして別れたのだった。
若い時の失恋は、俺の心に深く傷を残したが、それが今になってゆいに手を出すことをためらう原因なのかもしれない、と思った。
今はクレアに対して恋愛感情など持ってはいないが、ともに歩み寄ろうと努力した同志のような感情を抱いている。
「わかった。俺の方が会いに行こう」
俺は騎士団窓口の方へ歩き出した。
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