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私はセクシー女優並みの容姿って、冗談ですよね。
しおりを挟む私たちが王宮の窓口で名前を告げると、ひとりの文官が恭しく挨拶をして来た。
「これはこれは、稀人様。ようこそおいで下さいました。私はここでご案内係を致しますマルセルと申します。今日はよろしくお願い致しまする」
マルセルさんは、細っこいもやしタイプの中年男性で、目尻の皺が優しげな人だ。
ほんとこの世界には、デブかヤセの男性しかいないのかしら。女性は美しい人が多いみたいなのに不思議だわ。私のようなデブスな女はまだ見たことないから、セディとは真逆の意味で私も少数派なのかも知れない。
そんなことを思いながら文官マルセルさんに付いて歩く。
ひとつのドアの前でマルセルさんは立ち止まった。
「こちらで稀人様には、調査文官と面会をしていただきます。その時にこの世界に来た時の服装などもお見せ下さい」
「分かりました」
私は入室すると、ペコリと頭を下げた。緊張しながらも、この世界の言葉でたどたどしく挨拶をした。
「花野 唯、です。ことば、覚えたて、です。うまく、話せないかも、です。よろしくです」
私の前には、緑、青、紫の服を着た文官たちが長机に座っていた。
文官たちは、それぞれに目を見開いて頬を染めた。
「おお、これは……。先代の稀人様は女神か天女の如き美しさだと伝え聞いていたが、此度の稀人様は、肉感的で男の情欲を唆るお姿だな。まるでモリリン・マンローの再来だ」
半分くらいしか私には理解できない言葉だった。
何?肉づきが良い?
デブで悪かったわね!
モリリン・マンローって(笑)
誰よそれ。
私に何の関係があるの?
私は困惑しながら、隣についてくれていたセディに首を傾げて見せた。
本来なら、ひとりだけで質疑応答するらしいのだけど、私は言葉がまだまだ不自由なので、通訳的な役割で特別にセディの付き添いが許されたのだ。
アランはマルセルさんに呼ばれて、どこかへ行った。
セディは少し言いにくそうに私に説明してくれる。
「あー、先代の稀人様は、とても美しいお方だったんだが、ゆいはまた違った美しさだと言っているんだ。モリリン・マンローは昔の女優で、その姿を見た男たちはみんな虜になったという伝説の女優の名なんだが、ゆいはその人のように魅力的だと言っている」
「えっ、うそ、ゆい、きれいないのに」
「ゆいは自分のことを分かってない。よく気をつけておかないと、男たちから狙われやすい容姿をしているんだってこと、忘れないで」
……よく分からないけれど、この世界では私はマリリン・モンロー級のセクシー美女ってこと?まさかね。
この国の人たちはきっとお世辞的な冗談が好きなのね。
セディまで一緒になって真面目な顔して言うから、信じてしまうところだったわ。
「もうおせじ、おわりしてください。はなし、すすめましょ」
私は文官たちに言うと、皆さんしゅんとして謝ってくれた。
ほら、やっぱり冗談だったじゃない。
私はその後、セディたちに聞かれたこととほぼ同じような事を聞かれ、来た時の服を見せて稀人で間違いないと判定を受けた。
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