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恋のひとつも知らないような姫君〜アーロン視点⑴

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あれから3日後、サンドラ姫はやって来た。

姫は、女だからと手加減するなと申されるが、ただの女性騎士を相手にしているのとは訳が違う。

貴女様はご自分が、王女殿下であるとの自覚が足りないようですね。

しかし、俺もまだ若輩者とはいえ、騎士団の副団長を任される身。

騎士団の威光に関わるから負ける訳にはいかぬ。

俺は、姫君を決して傷付けることが無いよう細心の注意を払いながらも、剣の試合に勝ってみせた。

姫は、女性騎士の中では一、二を争う技術を体得なさっておられるようだ。いったいここまで、どなたがお育てになられたのだろう。相当な手練れと見たが、是非、その方とも一戦交えてみたいものだな。

「流石は騎士団副団長。良い腕をしておるな。よし、お前、我の婿になれ」

……姫君……。貴女様の夫を決めると言うのに、お見合いが剣の試合だけなのですか?

先日団長から、第三王女殿下が我が騎士団に見合いに来ると聞いたから、騎士たちは顔を赤らめて自分の趣味をなんと話そうか、どうやって自分をアピールしようかと色めきたっていたと言うのに……。

それが来るなり騎士団への殴り込みのような剣の試合だけで。みな、彼女を怪我させてしまった後を考え、本気を出せず負けてしまうという始末。

俺はこの国の騎士団が、このように弱いと思われるのが許せないから試合に勝ってみせたものの、いかがいたそうか……。

俺は姫君の行く末が心配になり、姫君に質問をすることにした。

「サンドラ姫、私を貴女様の夫にとの言、まことに光栄でございます。して、ひとつ質問をよろしいでしょうか?」

「かまわぬ。申してみよ」

「貴女様の先程の発言は、国の御意思でもあるのでしょうか?それならば私は王家に忠誠を誓っている身。今すぐにでも貴女様の夫となりましょう」

「国の意思などではない。我が、我より強い男を婿にしたいだけだ。お前が我を振ったとて、決してお前を咎めたりはせぬよ。なんだ、お前も綺麗に着飾った、なよなよしたおなごが好きと申すのか?それならば我は諦めて他を当たる事に致すが」

「いいえ、決してそのようなことは思っておりません。国民の宝であらせられます姫君には、幸せな結婚をして頂きたいだけでございます。ただ剣が姫君より強いというだけで、私を夫にしてしまえば、後々姫君が後悔なさってはいけませんから。国の意思による御命令でないというのでしたら、そう急がず、少し私とお付き合いしてみて決めてはいかがですか?」

私は恋のひとつも知らず、男がいかなるものかもよく分かっておいででないような姫君を諭すように、デートに誘ったのであった。


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