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戦女神のような姫君
しおりを挟むサンドラ姫13歳、俺はもう20歳になったーー。
カン、カン、キンッ、カン……。
サンドラ姫と剣を交えながら、俺は姫君に見惚れていた。
燃えるような赤髪に深みのあるブラウンの双眸。
姫君は、炎が燃え盛っているような動きで俺に向かって来る。
まるで、戦女神ーー。
俺がそんな事を考え油断しているとーー。
ガッ ‼︎
俺の剣は手を離れ、空高く舞い上がった。そして、ゆっくり弧を描き、大地に突き刺さる。
「お見事でございます。姫君、ますますご上達なされましたね」
俺は片膝をつき、頭を下げて述べた。
「当然じゃ。イグナスなどに負けはせぬからな」
相変わらず姫君は胸を張って答えた。
俺は悔し紛れに、姫君にひとつ忠告をする事にした。
「なれど、姫君。最後の最後で油断なさっておいでです。そのような時が一番危ないのでございますよ」
俺が仕込まれているのは必勝の剣ではなく、必殺の剣である。
普通に貴族や騎士たちが振るう剣とは全くの別物。
もし、今のサンドラ姫が我が敵であれば、命が絶えていたのは姫君の方である。
「私の手から剣が離れた時、姫は剣の方に意識を取られましたね。私だからそれで済みましたが、本物の暗殺者であれば、わざとそのようにして、意識がそれた瞬間を狙って別の凶器が飛んで参ります。ですから先程の姫君がすべきことは、剣の行方を追うのではなく、私の喉元に剣を突き立てることです」
「負けたくせに堂々と正論を吐きおってからに。……だが、イグナスの言う通りだな。次は容赦せずイグナスの喉を狙ってやる」
姫君は剣の素質がある上に、とても真摯に向き合って訓練なさる。
だから俺も正統派の剣術では、わざと負けなくても油断すれば、このような結果になることが多々起きるのだ。
けれど主人を守る際にはどんな手を使っても相手を殺す必要があり、俺が実践で剣を振るう時には様々な武器との併用になる。
姫君は正統派の中ではかなり上をいくようになられたけれど、俺のような暗殺者に狙われることも想定しておかなければ。
姫君の性格を鑑みれば、いつ、危険の中に入り込んで行かれるかわかったものではない。
そんな時、万が一にでも悪の手に姫君が囚われでもしたら、男が拷問を受けるよりも酷い扱いを受けることになるだろう。
そんなことにならないように、姫君自身にもお強くなっていただくに越したことはない。
もちろん、絶対にそのようなことには俺がさせはしないが。
お美しく成長していく姫君を、ますますお守りしなければ、と俺は早朝、夜間に自分の鍛錬も怠らず続けた。
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