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二人の同居生活が始まった。
しおりを挟む見た目に似合わず、家事が苦手な愛羅と、ずっと一人暮らしで家事があまり苦ではない雅人との奇妙な同居生活が始まった。
愛羅はマンションの家賃の1/3を居候費として払わせてほしいと雅人に提案していた。
雅人は1ヶ月限定の同居なので、払わなくても構わないと言ったのだが、そう言うわけにはいかないと、愛羅に現金をグイグイと押し付けられた。
考えてみれば、恋人でもない赤の他人に、施しを受けるのは嫌なのかもしれないと雅人は考え、結局それを受け取ることにした。
そして、初日の寝る場所を決めるのにも一悶着あった。
このところ寒くなって来たので、ベッドを彼女に譲ろうと、雅人は自分の布団を退けたのだが、愛羅は居候の身でそんな図々しいことはできないと言う。
だが、こればかりは譲れないと雅人は強い口調で言った。
恋人でもない男女が同居するのだから、寝室で、ちゃんと鍵をかけて寝て欲しいと雅人が伝えたところ、愛羅は申し訳なさそうに頷いた。
雅人は日中は布団を畳んで寝室に置かせてもらい、寝る時間になるとそれを持って出て、ソファをずらし隙間に布団を敷いて寝ることにした。雅人は少し窮屈に感じたが、1ヶ月の辛抱だと割り切った。
そして、雅人はストーカーよけに、毎日愛羅の出勤の送迎をすることにした。
絶世の美女と、超絶不細工の男が並んで歩いているので、通り過ぎる人々が、思わず振り返って二度見して行く。
雅人はそんな反応も予測がついていたので気にしていない。その道中、小説の役に立ってくれると言う愛羅に、参考になりそうな、女性目線の話を聞いたりしていた。
「好きな男が一番輝いて見える時ってどんな時?」
「好きな人は、いつだって輝いて見えるわ。たとえば後ろ姿だってね。その背中に抱きついて、グリグリ顔を擦り付けたいですね」
「そう言うもんか。愛羅は草食系と肉食系、どちらの男がタイプなんだ?」
「そうですね。一見草食系だけど、自分限定で肉食系なのが希望ですね」
「なるほど。ギャップ萌えか」
そんな会話をしながら、雅人は愛羅の職場が見える場所まで送って来た。入り口まではまだ距離があるが、少し手前で立ち止まる。
「じゃあ、俺はここで。建物に入るまでちゃんと見てるから」
「もう、雅人さん、気にしなくて良いって言ってるのに」
「いや、近くまで行くと、こんな不細工と一緒に来てるって、愛羅がみんなに笑われてしまうから」
愛羅は、雅人が自分を卑下する言葉にため息をついた。
「......じゃあ、行って来ますね」
「ああ。また7時前にはここで待っているから」
「ありがとう、雅人さん」
そんな感じで、雅人と愛羅の同居生活が始まっていたーー。
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