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初めて出会った理想の男性(絶対逃したくない!)。by愛羅
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雅人が入った後のお湯に入りたかった愛羅(変態の素質あり?)は、ゆずの香りの入浴剤を入れ、肩までしっかりと湯に浸かって温まっていた。
「ああ、なんて優しくて、カッコよくて、強くて、素敵なんだろう......。私の好みを体現したような雅人さん。絶対に1ヶ月の間に振り向かせたいわ!」
愛羅は今日の一連の出来事を思い浮かべて、ほうっとため息をつきながら呟いた。
愛羅は雅人の部屋に入った時、さりげなく女の影がないかチェックをしていた。愛羅の好みは、一般の人と正反対だとわかっている。だから雅人がモテるとは思っていないのだが、もしかしたら自分のようなマニアックな女が雅人を狙ってるかもしれないと警戒したのだ。
「あんなにかっこいいのにこの世では不細工の部類に入るのでしょうね.....。でもそのおかげで誰にも雅人さんを取られてなかったのだからそれで良かったのかもしれないわ」
ほんの少し、雅人に嘘をついて罪悪感を感じる愛羅だが、それでも今、彼を振り向かせられなかったら、彼との接点がなくなってしまうのだと自分に言い聞かせた。しかし、この歳になるまで全く男性と付き合ったことがない。どうやって彼を振り向かせたら良いのか愛羅にはわからない。
「いっそのこと、私を襲ってくれたら良いのかも。そうなれば、雅人さんなら、責任をとって結婚してくれそう」
そんなことまで考えるほどに、愛羅は雅人に一目惚れし、人柄にも惹かれ、初めての恋をしたのだったーー。
「雅人さん、良いお湯をありがとうございました」
愛羅はまだ、濡れた髪をタオルで包み込むようにして、パジャマ姿で雅人の前に現れた。
雅人はタオルからはみ出した後毛で、色っぽさを増した愛羅に一瞬目を見張る。そして、見てはいけなかったという風に視線を外した。
「......大したものはできないけど、夕食が出来ているから食べると良いよ」
広いLDKのテーブルに、ご飯とお味噌汁、焼き魚とハンバーグ、野菜がたっぷり入った煮物とお浸しが並んでいた。
「うわ~! 雅人さん、ちゃんと自炊しているのですね!すごいわ」
「褒められるようなものは作れないが。今日は買い物に行っていないから有り合わせで作ったんだ。魚かハンバーグ、好きな方を選んで」
愛羅は迷ったが、自分ではあまり作らない焼き魚の方を選んだ。
「いただきます」
二人は向かい合って座り、手を合わせてからご飯に手をつけた。
「美味しいわ。雅人さん」
「そうか。それなら良かった」
愛羅は箸を進めながら、雅人に今後のことを相談した。
「雅人さん、私、居候するのだから、ちゃんと家賃を払うし、本当はお料理だってしたいところなんだけど、私あまり家事が得意じゃないのよ」
「......だろうね。さっき君のアパートについて行って、それは十分わかったよ」
ゴミ屋敷、とまでは行かないまでも、愛羅の部屋は、結構な汚部屋だったのだ。
「う、でもね、ちゃんと生ゴミとか、匂いを発するものだけは捨ててるのよ。だけど整理整頓が苦手で、いろんなものをあちこちに置いてしまうから、汚く見えるだけなんだから」
家事が得意でないことを肯定されてしまった愛羅は、自分の印象がこれ以上落ちない様にと言い訳をした。
「......君が嫌じゃなければ、ここでは君の持ち物も俺が整理してあげるけど」
「本当? じゃあ、いつか私のアパートを綺麗にするのも手伝ってくれる?」
「ストーカー問題が解決したら、手伝うよ」
「じゃあ、掃除は私、頑張るわ」
「いいよ。君は仕事があるんだから俺がやる」
「雅人さんはお仕事してないの?」
理想の彼が、まさかのニートだったらどうしよう、と愛羅は不安に思いながら尋ねた。
「俺は物書きだから外へは出ない。だから家のことは俺がやるよ」
「小説家ってことだよね? すごい! かっこいいね、雅人さん!」
「別に。最近は落ち目なしがない物書きだよ」
「何で落ち目なの?」
「最近は恋愛小説が人気でそう言う仕事をよく頼まれるんだが、俺は女性と付き合ったことがないから、リアリティが足りないんだ」
「じゃあ、私が1ヶ月の間、雅人さんの彼女になってあげるわ! ここに置いてもらうのに、何もかも雅人さんにしてもらうのが心苦しかったから、私を小説の役に立てて!」
そんな提案に、雅人は面食らったが、こんなチャンスは二度とないだろうと、愛羅の提案を受け入れた。
「ああ、なんて優しくて、カッコよくて、強くて、素敵なんだろう......。私の好みを体現したような雅人さん。絶対に1ヶ月の間に振り向かせたいわ!」
愛羅は今日の一連の出来事を思い浮かべて、ほうっとため息をつきながら呟いた。
愛羅は雅人の部屋に入った時、さりげなく女の影がないかチェックをしていた。愛羅の好みは、一般の人と正反対だとわかっている。だから雅人がモテるとは思っていないのだが、もしかしたら自分のようなマニアックな女が雅人を狙ってるかもしれないと警戒したのだ。
「あんなにかっこいいのにこの世では不細工の部類に入るのでしょうね.....。でもそのおかげで誰にも雅人さんを取られてなかったのだからそれで良かったのかもしれないわ」
ほんの少し、雅人に嘘をついて罪悪感を感じる愛羅だが、それでも今、彼を振り向かせられなかったら、彼との接点がなくなってしまうのだと自分に言い聞かせた。しかし、この歳になるまで全く男性と付き合ったことがない。どうやって彼を振り向かせたら良いのか愛羅にはわからない。
「いっそのこと、私を襲ってくれたら良いのかも。そうなれば、雅人さんなら、責任をとって結婚してくれそう」
そんなことまで考えるほどに、愛羅は雅人に一目惚れし、人柄にも惹かれ、初めての恋をしたのだったーー。
「雅人さん、良いお湯をありがとうございました」
愛羅はまだ、濡れた髪をタオルで包み込むようにして、パジャマ姿で雅人の前に現れた。
雅人はタオルからはみ出した後毛で、色っぽさを増した愛羅に一瞬目を見張る。そして、見てはいけなかったという風に視線を外した。
「......大したものはできないけど、夕食が出来ているから食べると良いよ」
広いLDKのテーブルに、ご飯とお味噌汁、焼き魚とハンバーグ、野菜がたっぷり入った煮物とお浸しが並んでいた。
「うわ~! 雅人さん、ちゃんと自炊しているのですね!すごいわ」
「褒められるようなものは作れないが。今日は買い物に行っていないから有り合わせで作ったんだ。魚かハンバーグ、好きな方を選んで」
愛羅は迷ったが、自分ではあまり作らない焼き魚の方を選んだ。
「いただきます」
二人は向かい合って座り、手を合わせてからご飯に手をつけた。
「美味しいわ。雅人さん」
「そうか。それなら良かった」
愛羅は箸を進めながら、雅人に今後のことを相談した。
「雅人さん、私、居候するのだから、ちゃんと家賃を払うし、本当はお料理だってしたいところなんだけど、私あまり家事が得意じゃないのよ」
「......だろうね。さっき君のアパートについて行って、それは十分わかったよ」
ゴミ屋敷、とまでは行かないまでも、愛羅の部屋は、結構な汚部屋だったのだ。
「う、でもね、ちゃんと生ゴミとか、匂いを発するものだけは捨ててるのよ。だけど整理整頓が苦手で、いろんなものをあちこちに置いてしまうから、汚く見えるだけなんだから」
家事が得意でないことを肯定されてしまった愛羅は、自分の印象がこれ以上落ちない様にと言い訳をした。
「......君が嫌じゃなければ、ここでは君の持ち物も俺が整理してあげるけど」
「本当? じゃあ、いつか私のアパートを綺麗にするのも手伝ってくれる?」
「ストーカー問題が解決したら、手伝うよ」
「じゃあ、掃除は私、頑張るわ」
「いいよ。君は仕事があるんだから俺がやる」
「雅人さんはお仕事してないの?」
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「俺は物書きだから外へは出ない。だから家のことは俺がやるよ」
「小説家ってことだよね? すごい! かっこいいね、雅人さん!」
「別に。最近は落ち目なしがない物書きだよ」
「何で落ち目なの?」
「最近は恋愛小説が人気でそう言う仕事をよく頼まれるんだが、俺は女性と付き合ったことがないから、リアリティが足りないんだ」
「じゃあ、私が1ヶ月の間、雅人さんの彼女になってあげるわ! ここに置いてもらうのに、何もかも雅人さんにしてもらうのが心苦しかったから、私を小説の役に立てて!」
そんな提案に、雅人は面食らったが、こんなチャンスは二度とないだろうと、愛羅の提案を受け入れた。
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