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美醜感覚のズレは、物心ついた時からです(by 愛羅)
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「愛羅ちゃん、今日もお疲れ」
【青い鳥こどもデンタルクリニック】の中野院長が何とも言えない表情で愛羅に声をかけた。愛羅もまた、苦虫を噛み潰したような表情をした後、作り笑いをしてみせた。
中野院長は、クールビューティな女医だ。ここは女性とこどもばかりの職場なのだが、最近、急に大人の男性患者が増えていた。
「私ネットで見たんですけど、うちの歯科の評判コメントに、[金髪碧眼の美女の歯科衛生士がいる]って書き込みがあったんですよ。だからきっと、愛羅さん目当てで来ているに違いありません」
歯科衛生士で、愛羅の先輩の美香がそう教えた。
愛羅は日本人とイギリス人のハーフで、母親の特徴を色濃く受け継いだため、金髪碧眼、見た目はまるで外国人なのだ。しかしずっと日本で生まれ育ったから、英語は得意ではない。
日本人の白人コンプレックスも手伝ってか、愛羅のような容姿は非常に男性に好まれ、小さい時から好色な視線に晒されることが多く、やや男性恐怖症だ。それに愛羅にはちょっとした秘密があってーー。
愛羅は物心ついた時から、美醜感覚が世間とずれていると感じていた。テレビなどで見るアイドルとか人気俳優は、少しもかっこいいと思えない。しかし、お笑い芸人の不細工を売りにしているような男性はまあまあかっこいいかなとか思っていた。何より苦手なのは、イケメンと呼ばれる男性の、自信たっぷりな対応だ。
愛羅は小学生の時から男の子に散々告白されてきたが、そう言う行動に出るのは大抵自分の容姿に自信のあるイケメンが多い。だからいつも断っていて、成人してからも男性と付き合ったことがなかった。
そして二十歳の時、旅行に行っていた両親が事故で亡くなって、この世に一人取り残された時は辛かったが、歯科衛生士の学校に通っていたため、先生や友人に支えてもらいながら何とか国家資格に合格し、独り立ちした。
男性が好きではないため、女性ばかりの職場を選んだと言うのに、最近成人男性がたくさん来るようになって憂鬱な愛羅だ。
「ごめんね、愛羅ちゃん。こどもクリニックではあるけれど、その子のお母さんたちも診察してあげているから、成人男性だけお断りっていうのもできなくて」
中野院長は申し訳なさそうに言ったが、愛羅もそれは仕方のないことだと分かっている。
「仕事ですから。仕方がありません」
愛羅が言うと、美香がため息をつきながら言った。
「そんなにきれいなのに、男性が苦手なんてもったいないわ~。私がそんな姿だったら、イケメンよりどりみどりですごく嬉しいのになあ」
別に男性全部が嫌いなわけじゃない。イケメンが苦手なのだ。そして、未だ好みの男性に出会えていないと言うだけーー愛羅はそう心で語ったが、どんな人が好みなのかと聞かれたら面倒なので黙っていることにした。
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中野院長は、クールビューティな女医だ。ここは女性とこどもばかりの職場なのだが、最近、急に大人の男性患者が増えていた。
「私ネットで見たんですけど、うちの歯科の評判コメントに、[金髪碧眼の美女の歯科衛生士がいる]って書き込みがあったんですよ。だからきっと、愛羅さん目当てで来ているに違いありません」
歯科衛生士で、愛羅の先輩の美香がそう教えた。
愛羅は日本人とイギリス人のハーフで、母親の特徴を色濃く受け継いだため、金髪碧眼、見た目はまるで外国人なのだ。しかしずっと日本で生まれ育ったから、英語は得意ではない。
日本人の白人コンプレックスも手伝ってか、愛羅のような容姿は非常に男性に好まれ、小さい時から好色な視線に晒されることが多く、やや男性恐怖症だ。それに愛羅にはちょっとした秘密があってーー。
愛羅は物心ついた時から、美醜感覚が世間とずれていると感じていた。テレビなどで見るアイドルとか人気俳優は、少しもかっこいいと思えない。しかし、お笑い芸人の不細工を売りにしているような男性はまあまあかっこいいかなとか思っていた。何より苦手なのは、イケメンと呼ばれる男性の、自信たっぷりな対応だ。
愛羅は小学生の時から男の子に散々告白されてきたが、そう言う行動に出るのは大抵自分の容姿に自信のあるイケメンが多い。だからいつも断っていて、成人してからも男性と付き合ったことがなかった。
そして二十歳の時、旅行に行っていた両親が事故で亡くなって、この世に一人取り残された時は辛かったが、歯科衛生士の学校に通っていたため、先生や友人に支えてもらいながら何とか国家資格に合格し、独り立ちした。
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「ごめんね、愛羅ちゃん。こどもクリニックではあるけれど、その子のお母さんたちも診察してあげているから、成人男性だけお断りっていうのもできなくて」
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「仕事ですから。仕方がありません」
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「そんなにきれいなのに、男性が苦手なんてもったいないわ~。私がそんな姿だったら、イケメンよりどりみどりですごく嬉しいのになあ」
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