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愛しい家族と生きていく〜シリル視点
しおりを挟む俺は無事王都へ帰り、残りの夏休みを研究に費やした。
帰ってからは、リリアが毎月手紙を送ってくれる。
いつも俺を気遣い、心配してくれる文面で、決して会いたいと書いて来ないところにリリアの思いやりを感じた。
俺は1年の時のような、静かな暮らしに戻ったが、ユリを失った時のような孤独感はない。
俺を愛し、待っていてくれる人がいると思うと頑張れた。
そんな中、ユリがヒントをくれたおかげで、高価な魔石を粉砕して、別の素材と混ぜ合わせることにより、太陽光を当てると少量の魔石成分でも動力が発生する仕組みを見つけた。
夏休みが済むと、それを理論立てて卒業論文にまとめていった。
この発見が、ミレーユ様経由で殿下に伝わり、卒業後2年間は、殿下の紹介の元、魔道具を作る企業で研究員として勤めることが内定した。
卒業式の日、リリアがサプライズで保護者の代理としてやって来た。
精一杯お洒落して、俺たちの式を見ながら瞳を潤ませるリリアは最高に可愛かった。
アーサー様には見られたくなかったが、魔力をくれた彼女を紹介しろと詰め寄られ、仕方なく紹介した。
メイベル様が一緒について来て、アーサー様がよそ見しないよう黒いオーラを放ちながら見張っていた。
俺は卒業後、そのまま王都の企業に就職し、2年間で安価な平民用魔道具を完成させた。
これは広く平民に伝えるべき商品だと、殿下が王室推薦の印を授けてくれた。
そのことにより莫大な財産が企業と俺に入り、その功績で、一代限りの爵位も授けようと打診されたが断った。
◇◇◇
卒業してから3年目ーー。
俺は今、村長、リリアと3人で、あの小さな家で暮らしている。
ティリ村に小さいながらも個人の研究所を立ち上げ経営している。
そこでリリアを嫁兼助手として傍に置き、平民用魔道具の研究開発を続けている。
リリアは、別世界にいたユリの記憶があるため時々驚くようなアイディアを授けてくれる素晴らしい助手だ。
「あなた。そろそろひと休みしてちょうだい」
俺の可愛い奥さんが、暖かい紅茶と茶菓子を用意してくれた。
「リリア。ありがとう」
忌み嫌われるハーフエルフの俺が幸せな家庭を持つことができたのは、全てこの愛しい女性が尽くしてくれたおかげだと感謝する。
メイベル様の時は、大人の女性が愛するように包んでもらい。ユリの時は、同年代の恋人が寄り添い見守ってくれているような感覚だった。リリアになってからは妹のような甘えたな可愛らしさで俺を求めてくれた。
そして、目の前にいる俺の奥さんは、その全てが備わった至上の世話女房だ。こんな素晴らしい女性が俺の妻だなんて、本当に夢のよう。
一生彼女を愛して生きていく。
俺がそんな事を考えながらお茶を飲んでいると、リリアが楽しげに俺に話しかけた。
「あのね、メイベル様から手紙が届いたの。ドロシー様が書いた【愛しの王子様は私が守る】が凄く好評で、増版が続いているのですって。それで、印税の半分はあなたに受け取ってもらいたいって。ドロシー様ったら、すっかり人気作家になってしまったわね」
「ああ、結局読むことなく卒業してしまったが、名前は結局ユーリと俺のままなのか?」
「そうみたい、シリルって名前は珍しくもないから、モデルがあなただって特定されたりしないだろうし、別にいいんじゃない」
「それはそうだけど。……やはり俺は守られる側のキャラクターになったんだな。実物の俺は、守られるより、大事な奥さんを守る気満々なんだがな」
「私だって負けないくらいあなたを守ってみせるわよ。……でもそうね、そろそろ守ってもらおうかしら。だって私ひとりの身体じゃなくなってしまったから」
俺の愛しい家族がまたひとり、増えるらしい。
~終わり~
ーーーーー
長い間、読み続けて下さった読者様、本当にありがとうございました!
コメントもたくさんいただきまして、すごく励みになりました。
今までで、一番長く書いた作品でして、自分にとって、思い出に残る作品になりました。
まだまだ未熟な素人小説ですが、続けることによって何かしらプラスになっていると信じて、これからも創作していきたいなと思っています。
また、お目にかかれる日を楽しみに。それまで皆様お元気で。
by はる
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