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2年先まで待っていて〜シリル視点
しおりを挟むティリ村へ来て3日目。
俺はまだ、リリアから魔力をもらえないでいた。
「リル兄さん、はい、ん~ 」
リリアが目を閉じて、小さな唇を少しだけ尖らせる。
「っ、リリア、待ってくれ」
俺は顔を背けて目線を外した。
「……シリル君、大好き。好きすぎて、どうにかなってしまいそうだよ。早くキスして?」
「うっ、ユリ……!ユリなら出来そうなんだが、その声がリリアだからっ!」
とてつもなく積極的なリリアに翻弄されながら、なんとか魔力を貰おうとするのだが……。
どうにもできない。
こんなことなら、赤の他人とやる方が絶対簡単だ。
「ダメよ、今、とんでもないこと考えたでしょ。シリル君の唇は私だけのものよ」
うっ。するどいな……しばらく同居した間柄だけのことはある。
リリアとふたりきりで同居してたのか俺……。
妹の認識から脱するのが難しく、なかなか口付けして魔力を貰う事が出来ない。せめて、もう少し時間が欲しい。目覚めた時にでも、俺に教えておいて欲しかった……。
俺が煮え切らない態度でいるうちに、リリアが顔を覆って泣き出した。
「酷いわリル兄さん!カナブンのユリを愛してくれたのに、リリアのユリは愛せないの?そんなにリリアは好きじゃない?」
うわぁ~んと声をあげて泣きだしてしまった。
「リリア!違うんだ、そうじゃない。リリアは妹のように思ってるから、俺が手をつけると汚してしまう気がして仕方ないんだ。ユリならそうは感じないんだが」
「私はリル兄さんの妹じゃないわ。
私をよく見てよ!昔の子供じゃないでしょう?あと2年もしたら、結婚できる年になるわ」
「そうだよな、ごめん、リリア、泣かないで…… 」
顔を伏せたリリアに近づき声をかけたその時。
「 ⁈ 」
急に顔を上げ、胸元を掴んだリリアにキスされてしまった。
「ファーストキスいただきっ!さあ、これでもう壁は越えたでしょ?」
涙ひとつ溢れてなかったリリアにしてやられたようだ……。
「大切な妹だと思って、汚さないように接して来たのに……。兄さんは、こんなイケナイ妹に育てた覚えはないんだが?男を騙すなんて、お仕置きが必要だな。覚悟してもらおうか 」
俺はさっきので、守ってきたものがぷつりと吹っ切れてしまった。
その後は、別れて辛くても、泣くことすら出来ずにいたユリへの想いもぶつけるように、リリアの唇を貪った。
形勢が逆転して慌てたリリアがちょっと待ってとか言っていたが、容赦なく深い口付けをした。これで少しは男への警戒心を持つだろう。
深く口付けていると、リリアから次第に力が抜けた。すると、甘い香りが漂い、リリアの魔力が俺に流れ込んで来た。
なんて心地いいんだ、この魔力……。
俺は夢中で魔力を吸っていたが、リリアがクタリと脱力したことに気づいて慌てて離れた。
見ると、リリアの顔はピンクに染まり、見事な瑠璃色の髪は、薄い黄緑色に変化している。
「リリア⁈ 大丈夫か⁈ 」
俺が慌ててリリアを揺さぶっていると、村長がやってきて言った。
「ほお~。しっかり魔力をもらったのう。それだけあれば、卒業するまでは持つだろう。リリアはのぼせただけだから大丈夫。ベッドに寝かせておいてやれ」
後で鏡を見ると、俺の髪は黒に近いほどの銀色に変わっていた。瞳も淡い水色から深い藍の色に変わっている。
エルフの血のせいなのか、リリアの魔力の相性がいいのか、リリアがくれた以上の魔力が俺に充満していた。
◇◇◇
俺はそれから2日ほどティリ村に滞在し、リリアの魔力が回復したのを見届けて、下宿先に帰ることにした。
ユリーーリリアは、俺と一緒になれる最適な器があったことが、よほど嬉しかったらしく、常に俺に対して積極的な対応をしてくる。
先日も、俺と一緒に寝たいと言って聞かないので、途方に暮れてしまった。
ユリ自身は、犬でいた頃と同じ感覚でやっているのだろうが、若い女体で同じ事をされると、俺は自制するのにひと苦労だ。
そんな様子を見ていた村長が、
「リリアがあれでは、お前はさぞ辛かろう。もう下宿先に帰りなさい。そして、リリアが結婚できる年までそっちにいた方がいい 」
俺もそれが良いと判断して今日帰るとリリアに告げたのだが……。
リリアが下宿先についてくると言って聞かない。涙をぼろぼろこぼしながら俺に縋り付いて来る。
俺はリリアが可哀想で泣きたくなる。だが、こんなリリアを連れ帰って、手を出さず同居するなど絶対不可能だとも思うし……。
リリアの愛情が強すぎて辛い。
困っている俺に村長が助け舟を出してくれた。
「リリア。お前の大好きな兄さんを困らせるな。今までは家族でいてやるんだと自分の気持ちを抑えていたから、やっと気持ちが通じ合って嬉しいのは分かる。だが、結婚するまでは兄さんを勉強や研究に集中させてやる環境を整えてやれ。そのかわり、16の誕生日にお前たちが式を挙げ、すぐに一緒に暮らせるよう、わしが準備しておいてやるから」
「おじいちゃん!本当⁈ 」
「ああ。本当だ。シリル、それでいいだろう?」
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俺は村長に頭を下げて、リリアを見た。そして跪いてリリアの片手を取り、プロポーズして手の甲にキスをした。
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「待って、リリア」
俺は自分のハンカチを取り出してリリアの涙を拭った。
「リリアーーユリはこうしてやったら喜んでくれたから」
そう言って微笑んで見せた。
リリアは頬を染めて頷いた。
「うん、紳士なシリル君が、かっこ良かったから」
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