私、確かおばさんだったはずなんですが

花野はる

文字の大きさ
上 下
37 / 48

男同士の会話、アーサー様の暴走〜シリル視点

しおりを挟む
「お前、最近良いことあったのか?」

アーサー様が俺に問いかけた。


今は昼休みで、いつものようにご令嬢たちはミレーユ様たちとお洒落談義をしている。

最近はいつもこんな感じで、食事は5人で取るが、その後はアーサー様とふたりになる。

アーサー様は来年はメイベル様と同じクラスになりたいと、昼休みにも勉強をしているので、俺も一緒に魔道具の研究をしながらアーサー様に分からないところを教えたりしている。

「そのように、見えますか?」

俺は自分でも、自覚してはいたのだが、傍目から見てもニヤケていたのかと恥じた。

「メイベルと俺が付き合うようになってから、お前は授業が済むと飛んで帰るようになったから、俺たちを見ているのが辛いんじゃないかって内心申し訳なく思っていたんだぜ」

ああ、ユリを心配して早く帰っていたのを、アーサー様はそんな風に受け取っていたのか。

「前にも言いましたが、俺はメイベル様を親友として大切に思っていただけですから、お気になさらないで下さい。それに記憶が戻られたメイベル様とは、良いクラスメイトだと認識は変わりましたし」

俺はそう言って笑ってみせた。

「そうみたいだな。今のお前は、時々ぼんやりしているかと思えば、薄ら笑いを浮かべていたりする。とても失恋したばかりの男には見えないからな」

え……薄ら笑い?なんか怪しい奴みたいだな、俺。
俺はバツが悪いので、話題を変える事にした。

「アーサー様こそ、メイベル様が記憶喪失の頃と随分変わられましたが、アーサー様のお気持ちはどうなんですか?」

「ああ。最初は俺、高慢なメイベルが嫌いだったからな。記憶喪失になったメイベルに惹かれたのはそうなんだが、あの頃のアイツはお前ばかり見ていて面白くなかった。今のアイツは相変わらず高飛車ではあるが、前のように高慢ではないし、ウブな所がギャップで可愛らしいんだぜ。何より俺だけに真っ赤に反応するのがたまらないしな」

アーサー様は幸せそうに語った。
良かった。今のメイベル様と上手くいっていて。

「ここだけの話だが、俺は嫌いだった頃からアイツの容姿だけはマジ好みだったんだ。中身ももちろん大切だが、やはり男としては外見も外せないだろう?俺たち貴族は特にそうだが、付き合う先は結婚なんだ。結婚すれば、身体の付き合いになるんだからな。俺は外見は可愛いタイプの女より、セクシーな女が好みだからな。その面ではメイベルは一番だろ?今はウブで可愛らしいが、何年か経てば、妖艶な美しい女になるだろうな」

ニヤニヤしながらアーサー様は言う。
まあ、男として、そういう欲がらみで考えるのも仕方ない事だが。
アーサー様、その顔は、まだメイベル様に見せない方がいいのでは……。

俺が半目でアーサー様を見つめていると、ニヤリと笑ったアーサー様が言った。

「それで?お前の想い人はどんなタイプなんだ?」

「え?」

俺は突然こっちに話を振られて戸惑った。

「隠したってダメだぜ?お前の様子は恋愛している男のものだってわかってる。俺には話してくれないのか?」

俺は、アーサー様とメイベル様の事を惚気られた後だからか、アーサー様にユリの事を話したい、と思った。

「……とても素敵な人です。優しくて、包容力があって、暖かい人、ですかね」

それを聞いたアーサー様は言う。

「それって記憶喪失だった頃のメイベルみたいだな。やはり、お前はそう言うタイプの女と相性が良いんだな。それで?外見はどんな感じなんだ?」

「……清楚なタイプ、でしょうか」

俺はまだ見たことがないユリの外見を想像して言った。

「清純派か~!それも悪くないよな。妖艶に見えてウブなメイベルとは真逆で、清純に見えるのに、包容力があるとか……。結婚したら、昼間は清楚な顔をしていながら、夜にはめちゃくちゃ甘えさせてくれそう……。マジ、男のロマンだな……」

アーサー様はひとりで妄想の世界に入って行く……。早く引き戻さなくては。

「アーサー様には会わせませんよ。そんな邪な気持ちを抱く殿方に、あの素敵な人を取られては大変ですから」

「独占欲かよ……。お前だって、その清楚で素敵な人やらに邪な気持ち満々なんだろう?想像するくらい、ケチケチすんなよな。俺はウブなメイベルを、俺好みにするんだから、お前の女を取ったりしないって」

「まあ、そうですけどね。……でも、やっぱりアーサー様には会わせたくありませんね」

そう言って俺が笑うと、アーサー様も笑った。


俺にも男としての願望が無いわけではないが、あの、ユリを失くしてしまう恐怖に比べれば、それを我慢するくらいなんてことはない。

ユリの存在を感じることができ、ユリのメッセージを受け取ることができる今、ユリの外見がなんであっても構わない。例え蛇でも、蜘蛛だって愛せる自信があるのだ。

しかしあくまで今の姿は仮のもの。
いつまでも、仮の姿でユリの魂が保てるのだろうか?俺は、それだけが心配だ。



しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
 王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ
恋愛
 私、ミリアリア・フォン・シュツットはミターメ王国の第一王女として生を受けた。この国の外見の美しい基準は、存在感があるかないか。外見が主張しなければしないほど美しいとされる世界。  そんな世界で絶世の美少女として、我儘し放題過ごしていたある日、ある事件をきっかけに日本人として生きていた前世を思い出す。あれ?今まで私より容姿が劣っていると思っていたお兄様と、お兄様のお友達の公爵子息のエドワルド・エイガさま、めちゃめちゃ整った顔してない?  今まで我儘ばっかり、最悪な態度をとって、ごめんなさい(泣)エドワルドさま、まじで私の理想のお顔。あなたに好きになってもらえるように頑張ります! -------だいぶふわふわ設定です。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

処理中です...