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男同士の会話、アーサー様の暴走〜シリル視点
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「お前、最近良いことあったのか?」
アーサー様が俺に問いかけた。
今は昼休みで、いつものようにご令嬢たちはミレーユ様たちとお洒落談義をしている。
最近はいつもこんな感じで、食事は5人で取るが、その後はアーサー様とふたりになる。
アーサー様は来年はメイベル様と同じクラスになりたいと、昼休みにも勉強をしているので、俺も一緒に魔道具の研究をしながらアーサー様に分からないところを教えたりしている。
「そのように、見えますか?」
俺は自分でも、自覚してはいたのだが、傍目から見てもニヤケていたのかと恥じた。
「メイベルと俺が付き合うようになってから、お前は授業が済むと飛んで帰るようになったから、俺たちを見ているのが辛いんじゃないかって内心申し訳なく思っていたんだぜ」
ああ、ユリを心配して早く帰っていたのを、アーサー様はそんな風に受け取っていたのか。
「前にも言いましたが、俺はメイベル様を親友として大切に思っていただけですから、お気になさらないで下さい。それに記憶が戻られたメイベル様とは、良いクラスメイトだと認識は変わりましたし」
俺はそう言って笑ってみせた。
「そうみたいだな。今のお前は、時々ぼんやりしているかと思えば、薄ら笑いを浮かべていたりする。とても失恋したばかりの男には見えないからな」
え……薄ら笑い?なんか怪しい奴みたいだな、俺。
俺はバツが悪いので、話題を変える事にした。
「アーサー様こそ、メイベル様が記憶喪失の頃と随分変わられましたが、アーサー様のお気持ちはどうなんですか?」
「ああ。最初は俺、高慢なメイベルが嫌いだったからな。記憶喪失になったメイベルに惹かれたのはそうなんだが、あの頃のアイツはお前ばかり見ていて面白くなかった。今のアイツは相変わらず高飛車ではあるが、前のように高慢ではないし、ウブな所がギャップで可愛らしいんだぜ。何より俺だけに真っ赤に反応するのがたまらないしな」
アーサー様は幸せそうに語った。
良かった。今のメイベル様と上手くいっていて。
「ここだけの話だが、俺は嫌いだった頃からアイツの容姿だけはマジ好みだったんだ。中身ももちろん大切だが、やはり男としては外見も外せないだろう?俺たち貴族は特にそうだが、付き合う先は結婚なんだ。結婚すれば、身体の付き合いになるんだからな。俺は外見は可愛いタイプの女より、セクシーな女が好みだからな。その面ではメイベルは一番だろ?今はウブで可愛らしいが、何年か経てば、妖艶な美しい女になるだろうな」
ニヤニヤしながらアーサー様は言う。
まあ、男として、そういう欲がらみで考えるのも仕方ない事だが。
アーサー様、その顔は、まだメイベル様に見せない方がいいのでは……。
俺が半目でアーサー様を見つめていると、ニヤリと笑ったアーサー様が言った。
「それで?お前の想い人はどんなタイプなんだ?」
「え?」
俺は突然こっちに話を振られて戸惑った。
「隠したってダメだぜ?お前の様子は恋愛している男のものだってわかってる。俺には話してくれないのか?」
俺は、アーサー様とメイベル様の事を惚気られた後だからか、アーサー様にユリの事を話したい、と思った。
「……とても素敵な人です。優しくて、包容力があって、暖かい人、ですかね」
それを聞いたアーサー様は言う。
「それって記憶喪失だった頃のメイベルみたいだな。やはり、お前はそう言うタイプの女と相性が良いんだな。それで?外見はどんな感じなんだ?」
「……清楚なタイプ、でしょうか」
俺はまだ見たことがないユリの外見を想像して言った。
「清純派か~!それも悪くないよな。妖艶に見えてウブなメイベルとは真逆で、清純に見えるのに、包容力があるとか……。結婚したら、昼間は清楚な顔をしていながら、夜にはめちゃくちゃ甘えさせてくれそう……。マジ、男のロマンだな……」
アーサー様はひとりで妄想の世界に入って行く……。早く引き戻さなくては。
「アーサー様には会わせませんよ。そんな邪な気持ちを抱く殿方に、あの素敵な人を取られては大変ですから」
「独占欲かよ……。お前だって、その清楚で素敵な人やらに邪な気持ち満々なんだろう?想像するくらい、ケチケチすんなよな。俺はウブなメイベルを、俺好みにするんだから、お前の女を取ったりしないって」
「まあ、そうですけどね。……でも、やっぱりアーサー様には会わせたくありませんね」
そう言って俺が笑うと、アーサー様も笑った。
俺にも男としての願望が無いわけではないが、あの、ユリを失くしてしまう恐怖に比べれば、それを我慢するくらいなんてことはない。
ユリの存在を感じることができ、ユリのメッセージを受け取ることができる今、ユリの外見がなんであっても構わない。例え蛇でも、蜘蛛だって愛せる自信があるのだ。
しかしあくまで今の姿は仮のもの。
いつまでも、仮の姿でユリの魂が保てるのだろうか?俺は、それだけが心配だ。
アーサー様が俺に問いかけた。
今は昼休みで、いつものようにご令嬢たちはミレーユ様たちとお洒落談義をしている。
最近はいつもこんな感じで、食事は5人で取るが、その後はアーサー様とふたりになる。
アーサー様は来年はメイベル様と同じクラスになりたいと、昼休みにも勉強をしているので、俺も一緒に魔道具の研究をしながらアーサー様に分からないところを教えたりしている。
「そのように、見えますか?」
俺は自分でも、自覚してはいたのだが、傍目から見てもニヤケていたのかと恥じた。
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ああ、ユリを心配して早く帰っていたのを、アーサー様はそんな風に受け取っていたのか。
「前にも言いましたが、俺はメイベル様を親友として大切に思っていただけですから、お気になさらないで下さい。それに記憶が戻られたメイベル様とは、良いクラスメイトだと認識は変わりましたし」
俺はそう言って笑ってみせた。
「そうみたいだな。今のお前は、時々ぼんやりしているかと思えば、薄ら笑いを浮かべていたりする。とても失恋したばかりの男には見えないからな」
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「アーサー様こそ、メイベル様が記憶喪失の頃と随分変わられましたが、アーサー様のお気持ちはどうなんですか?」
「ああ。最初は俺、高慢なメイベルが嫌いだったからな。記憶喪失になったメイベルに惹かれたのはそうなんだが、あの頃のアイツはお前ばかり見ていて面白くなかった。今のアイツは相変わらず高飛車ではあるが、前のように高慢ではないし、ウブな所がギャップで可愛らしいんだぜ。何より俺だけに真っ赤に反応するのがたまらないしな」
アーサー様は幸せそうに語った。
良かった。今のメイベル様と上手くいっていて。
「ここだけの話だが、俺は嫌いだった頃からアイツの容姿だけはマジ好みだったんだ。中身ももちろん大切だが、やはり男としては外見も外せないだろう?俺たち貴族は特にそうだが、付き合う先は結婚なんだ。結婚すれば、身体の付き合いになるんだからな。俺は外見は可愛いタイプの女より、セクシーな女が好みだからな。その面ではメイベルは一番だろ?今はウブで可愛らしいが、何年か経てば、妖艶な美しい女になるだろうな」
ニヤニヤしながらアーサー様は言う。
まあ、男として、そういう欲がらみで考えるのも仕方ない事だが。
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俺が半目でアーサー様を見つめていると、ニヤリと笑ったアーサー様が言った。
「それで?お前の想い人はどんなタイプなんだ?」
「え?」
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「……清楚なタイプ、でしょうか」
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