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足長おばさんはバレていた〜シリル視点
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「メイベル様には婚約者のアーサー様がいる事に致しましょう。
婚約者のアーサー様は公爵様でイケメンだけど、すっごくお馬鹿でオンナ好きのどうしようもない男って設定でいかがでしょう?キャロライン様 」
ドロシー様がウキウキと妄想ストーリーを考えている。
「それよりアーサー様は、隣国の強欲な王太子設定てのがよろしいのではなくて?
無理矢理メイベル姫を攫おうとするのですわ。そこをシリルが身体を張って助ける、と 」
キャロライン様も、楽しそうに話に乗っている。
「待てーっ‼︎ なんで俺は馬鹿だったり女好きだったり強欲だったりするんだーっ!どんだけ俺を貶めれば気が済むんだ?お前らっ! 」
あの日以来、昼休みにはアーサー様がやって来て、5人で昼食を取るようになっていた。
アーサー様は赤組のせいなのか、俺の事をあまり蔑んだりしない。普通に接してくれる好青年だった。
「アーサー様は当て馬役ですもの。悪役キャラになるのは致し方ありませんわ。それよりも私、攫われるのはシリル君で、身体を張って助けるのは私がいいのだけれど、ダメかしら?ドロシー様 」
メイベル様はまた、自分がヒーローで俺をヒロインに見立てているらしい。
「お前の当て馬なのに、なんで俺はシリルを攫わなきゃいけねんだよ!俺は男なんぞに用はねーぜ?」
アーサー様が言われる事はもっともだと俺も思う。同意を込めて、うんうんと頷いておいた。
「ねえ、いっそ、私を男にして、シリル君をお姫様設定にしましょうよ、ドロシー様。絶対その方が可愛いもの。シリル姫を守ってあげたくてしかたないの、私 」
やっぱりメイベル様は俺をヒロイン扱いしてるんだ……。
「ひ、酷いです……メイベル様……。俺はそんなにひ弱ですか……? 」
俺はしょんぼり項垂れた。
「あっ!ゴメン‼︎ シリル君が悲しんでる!今のナシ、ドロシー様、シリル君を強くてかっこいいキャラにしてちょうだいね? 」
メイベル様が言えば、ドロシー様は鼻で笑った。
「メイベル様、それは無理な相談ですわ。シリルさんをそんな設定にするなら、話を全て最初からやり直さなければなりませんし、そんなイメージ湧かないですわ 」
ドロシー様まで……俺は平民だから大人しくしているだけなのに……。
(農作業でそれなりに筋肉とかついているんだけどな。服がブカいし、分からないのかも)
最近のやりとりが、たまらなく平和で、俺はひとりで過ごす時間がほとんどなくなっていた。前は苦手だったメイベル様のご友人も今は暖かく迎えてくれ、男の友人までできた。
メイベル様は、たまに嫌がらせで机や教科書に落書きされたりしているけれど、相変わらず消すでもなく、
「このくらいで気がすむなら、いくらでもやらせてあげたらいいじゃない」と気にも止めていない。
今も〈悪趣味〉とか書かれたシューズを平気で履いたままだ。
(俺の名誉は守ると言って、俺関連の落書きは黒く塗りつぶしてくれたので、余計に目立つ)
アーサー様がいい加減買い換えろよと忠告していたが、メイベル様は、
「まだ履けるのに勿体ないじゃない。新しいのにしたら、また落書きされちゃうだろうし。柄付きだと思えば、全く気にならないわよ」と笑っていた。
何というか、メイベル様は本当に包容力があり、温かい人柄だ。
以前のメイベル様も、元はこういう人だったのだろうか?
とてもそうは見えなかったが。
何にしろ、こうして学園生活を平和に楽しく送れるとは思っても見なかった。それもこれも、メイベル様が俺を大切にしてくれるお陰だと思う。俺も何か、お返しできる事があればいいな……。
そんなこんなで、今日も一日充実した学園生活が終わった。
◇◇◇
家に帰ると、一通の手紙が届いていた。村長からの手紙だ。
「何だろう……?」
こちらからは、俺の様子を知らせる報告と、いつも援助してくださる村長へのお礼を兼ねて、定期的に手紙を出しているが、返事が来る事はなかった。
「まさか、リリアがどうかした……?」
俺の幼馴染の女の子で、村長の娘のリリア。馬車の事故に遭い、昏睡状態のまま2年になるーー。
俺は急いで封を開けた。
『息災にしておるかい?シリルよ。こちらは何も変わりない。リリアも相変わらずの眠り姫じゃ』
何だ。良かった。急変でもあったかと焦ってしまった……。
『ご本人の意向で、名前は明かせんのだが、ある金持ちの、たいそう別嬪なご令嬢が先日やって来ての、お前に先行投資したいと言って下さったのじゃ』
えっ。先行投資?
『どうやらお前を知っている口振りで、お前は授業態度も真面目で頑張り屋で、大変立派だと褒めておったぞ。だから、これからの2年間の衣食住に掛かる費用を、そのご令嬢が面倒を見ると申し出て来たのじゃ。しかも返済は、出世払いで良いから、期限など設けぬと仰られてな。なんと、わしにまでロバを一頭授けてくださったのだよ』
…………。
『そういう事だから、有り難く金は受け取った。そのご令嬢が、きちんと見栄えのする服と靴と鞄を見繕ってやって欲しいと言うので、服屋のレムじいに良いものを見繕ってもらい、配達を頼んでおいた』
俺の授業態度を知っていて、俺の身なりが貧乏臭くて嫌われる一因になっているのも分かっている、美しいご令嬢なんて……。
そこまで言ってしまったら、名前を明かさなくても分かってしまいますよ、村長……。
『シリルよ、良い援助者が見つかって良かったな。これでわしも安心じゃ。これからお前の事で、何か困ることあれば、わしからご令嬢に連絡する事になっておるから、遠慮なく言いなさい。では今回はこれくらいで。これからも達者で頑張りなさい。 ティリ村村長マシュウより』
メイベル様……。
赤の他人の村長に、養ってもらった上、学園にまで行かせて貰っているのを、誰かから聞いたのだろう……。
俺はエルフとのハーフで忌み子であるのに、村長やリリア、そしてメイベル様のように、俺を家族のように愛してくれる人がいる。
この宝物のような人たちを決して裏切らないよう、精一杯勉学に励もう。
そして、夢である、魔力を持たない平民たちにも使える安価で便利な魔道具を作りたいーー。
俺は、大切な人たちの顔を思い浮かべながら、神に感謝した。
婚約者のアーサー様は公爵様でイケメンだけど、すっごくお馬鹿でオンナ好きのどうしようもない男って設定でいかがでしょう?キャロライン様 」
ドロシー様がウキウキと妄想ストーリーを考えている。
「それよりアーサー様は、隣国の強欲な王太子設定てのがよろしいのではなくて?
無理矢理メイベル姫を攫おうとするのですわ。そこをシリルが身体を張って助ける、と 」
キャロライン様も、楽しそうに話に乗っている。
「待てーっ‼︎ なんで俺は馬鹿だったり女好きだったり強欲だったりするんだーっ!どんだけ俺を貶めれば気が済むんだ?お前らっ! 」
あの日以来、昼休みにはアーサー様がやって来て、5人で昼食を取るようになっていた。
アーサー様は赤組のせいなのか、俺の事をあまり蔑んだりしない。普通に接してくれる好青年だった。
「アーサー様は当て馬役ですもの。悪役キャラになるのは致し方ありませんわ。それよりも私、攫われるのはシリル君で、身体を張って助けるのは私がいいのだけれど、ダメかしら?ドロシー様 」
メイベル様はまた、自分がヒーローで俺をヒロインに見立てているらしい。
「お前の当て馬なのに、なんで俺はシリルを攫わなきゃいけねんだよ!俺は男なんぞに用はねーぜ?」
アーサー様が言われる事はもっともだと俺も思う。同意を込めて、うんうんと頷いておいた。
「ねえ、いっそ、私を男にして、シリル君をお姫様設定にしましょうよ、ドロシー様。絶対その方が可愛いもの。シリル姫を守ってあげたくてしかたないの、私 」
やっぱりメイベル様は俺をヒロイン扱いしてるんだ……。
「ひ、酷いです……メイベル様……。俺はそんなにひ弱ですか……? 」
俺はしょんぼり項垂れた。
「あっ!ゴメン‼︎ シリル君が悲しんでる!今のナシ、ドロシー様、シリル君を強くてかっこいいキャラにしてちょうだいね? 」
メイベル様が言えば、ドロシー様は鼻で笑った。
「メイベル様、それは無理な相談ですわ。シリルさんをそんな設定にするなら、話を全て最初からやり直さなければなりませんし、そんなイメージ湧かないですわ 」
ドロシー様まで……俺は平民だから大人しくしているだけなのに……。
(農作業でそれなりに筋肉とかついているんだけどな。服がブカいし、分からないのかも)
最近のやりとりが、たまらなく平和で、俺はひとりで過ごす時間がほとんどなくなっていた。前は苦手だったメイベル様のご友人も今は暖かく迎えてくれ、男の友人までできた。
メイベル様は、たまに嫌がらせで机や教科書に落書きされたりしているけれど、相変わらず消すでもなく、
「このくらいで気がすむなら、いくらでもやらせてあげたらいいじゃない」と気にも止めていない。
今も〈悪趣味〉とか書かれたシューズを平気で履いたままだ。
(俺の名誉は守ると言って、俺関連の落書きは黒く塗りつぶしてくれたので、余計に目立つ)
アーサー様がいい加減買い換えろよと忠告していたが、メイベル様は、
「まだ履けるのに勿体ないじゃない。新しいのにしたら、また落書きされちゃうだろうし。柄付きだと思えば、全く気にならないわよ」と笑っていた。
何というか、メイベル様は本当に包容力があり、温かい人柄だ。
以前のメイベル様も、元はこういう人だったのだろうか?
とてもそうは見えなかったが。
何にしろ、こうして学園生活を平和に楽しく送れるとは思っても見なかった。それもこれも、メイベル様が俺を大切にしてくれるお陰だと思う。俺も何か、お返しできる事があればいいな……。
そんなこんなで、今日も一日充実した学園生活が終わった。
◇◇◇
家に帰ると、一通の手紙が届いていた。村長からの手紙だ。
「何だろう……?」
こちらからは、俺の様子を知らせる報告と、いつも援助してくださる村長へのお礼を兼ねて、定期的に手紙を出しているが、返事が来る事はなかった。
「まさか、リリアがどうかした……?」
俺の幼馴染の女の子で、村長の娘のリリア。馬車の事故に遭い、昏睡状態のまま2年になるーー。
俺は急いで封を開けた。
『息災にしておるかい?シリルよ。こちらは何も変わりない。リリアも相変わらずの眠り姫じゃ』
何だ。良かった。急変でもあったかと焦ってしまった……。
『ご本人の意向で、名前は明かせんのだが、ある金持ちの、たいそう別嬪なご令嬢が先日やって来ての、お前に先行投資したいと言って下さったのじゃ』
えっ。先行投資?
『どうやらお前を知っている口振りで、お前は授業態度も真面目で頑張り屋で、大変立派だと褒めておったぞ。だから、これからの2年間の衣食住に掛かる費用を、そのご令嬢が面倒を見ると申し出て来たのじゃ。しかも返済は、出世払いで良いから、期限など設けぬと仰られてな。なんと、わしにまでロバを一頭授けてくださったのだよ』
…………。
『そういう事だから、有り難く金は受け取った。そのご令嬢が、きちんと見栄えのする服と靴と鞄を見繕ってやって欲しいと言うので、服屋のレムじいに良いものを見繕ってもらい、配達を頼んでおいた』
俺の授業態度を知っていて、俺の身なりが貧乏臭くて嫌われる一因になっているのも分かっている、美しいご令嬢なんて……。
そこまで言ってしまったら、名前を明かさなくても分かってしまいますよ、村長……。
『シリルよ、良い援助者が見つかって良かったな。これでわしも安心じゃ。これからお前の事で、何か困ることあれば、わしからご令嬢に連絡する事になっておるから、遠慮なく言いなさい。では今回はこれくらいで。これからも達者で頑張りなさい。 ティリ村村長マシュウより』
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俺はエルフとのハーフで忌み子であるのに、村長やリリア、そしてメイベル様のように、俺を家族のように愛してくれる人がいる。
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そして、夢である、魔力を持たない平民たちにも使える安価で便利な魔道具を作りたいーー。
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