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試着していたら転移しました。
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私は今、知らない世界にやって来ていた。
今日は仕事がお休みで、仕事の時に羽織れるカーディガンでも買おうかと数時間前ショッピングモールに来ていたはずなのに。
買う気もないのに目にとまった水色のワンピースを試着したのがいけなかった。私はそのまま鏡の中に吸い込まれてしまったのだ。
気がついたら中世の西洋風な街の中にいて、私はただ、呆然と立ち尽くしていた。
しばらく固まっていた私だけど、いい加減現状を把握してなんとか元の世界に帰らないと、と思い立ち、とりあえずどこへともなく歩き出そうとした。
その時足の裏に痛みが走って、足元を見た。
「あ、私、裸足だ」
さっき、フィッティングルームで試着していたから、靴は外に脱いでいた。
裸足で歩こうとしたものだから、小石を踏んで痛かったようだ。
「困ったな......」
自分で歩いて助けを求めることもできなくて、どうしたものかとあたりをきょろきょろと見渡した。
すると、目の前のお店のガラス越しに、でっぷりと太ったおばあさんが私を見ているのに気づいた。
私はなんとなく、困った風に微笑んで首を傾げた。
そのおばあさんはそんな私を見て、目を見開いたかと思うと店から飛び出して来た。
「お嬢ちゃん。どうしたんだい?そんな格好で。誰かに攫われて、逃げ出したのかい?」
「い、いいえ。私も何がなんだか分からないんですけど、気がついたらここにいて......。どうしようかと困っていたんです」
「おやおや、かわいそうにねえ。記憶喪失かも知れないねえ」
私はそう言われてハッとした。
異世界から来たなんて言わない方がいいのかも知れない。
この世界がどんな文化なのかも分からないし、異世界人であることが分かったら、厄介な事に巻き込まれるかも知れないし......。
私は状況が把握できるようになるまでは、異世界転移の事は隠しておこうと心に決めた。
今日は仕事がお休みで、仕事の時に羽織れるカーディガンでも買おうかと数時間前ショッピングモールに来ていたはずなのに。
買う気もないのに目にとまった水色のワンピースを試着したのがいけなかった。私はそのまま鏡の中に吸い込まれてしまったのだ。
気がついたら中世の西洋風な街の中にいて、私はただ、呆然と立ち尽くしていた。
しばらく固まっていた私だけど、いい加減現状を把握してなんとか元の世界に帰らないと、と思い立ち、とりあえずどこへともなく歩き出そうとした。
その時足の裏に痛みが走って、足元を見た。
「あ、私、裸足だ」
さっき、フィッティングルームで試着していたから、靴は外に脱いでいた。
裸足で歩こうとしたものだから、小石を踏んで痛かったようだ。
「困ったな......」
自分で歩いて助けを求めることもできなくて、どうしたものかとあたりをきょろきょろと見渡した。
すると、目の前のお店のガラス越しに、でっぷりと太ったおばあさんが私を見ているのに気づいた。
私はなんとなく、困った風に微笑んで首を傾げた。
そのおばあさんはそんな私を見て、目を見開いたかと思うと店から飛び出して来た。
「お嬢ちゃん。どうしたんだい?そんな格好で。誰かに攫われて、逃げ出したのかい?」
「い、いいえ。私も何がなんだか分からないんですけど、気がついたらここにいて......。どうしようかと困っていたんです」
「おやおや、かわいそうにねえ。記憶喪失かも知れないねえ」
私はそう言われてハッとした。
異世界から来たなんて言わない方がいいのかも知れない。
この世界がどんな文化なのかも分からないし、異世界人であることが分かったら、厄介な事に巻き込まれるかも知れないし......。
私は状況が把握できるようになるまでは、異世界転移の事は隠しておこうと心に決めた。
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