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番外編〜騎士の誓い
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私とローランド様は今、舞踏会の控え室で休憩を取っています。
仮面を外したローランド様が私を意味深にちらちらと見てきます。
「ローランド様?どうかしましたか?」
私が尋ねると、ローランド様は俯いてぽそりと答えました。
「今日のカスミはいつにも増して美し過ぎる……。
男たちの視線を独り占めだ。
……良い男たちがたくさんいただろう……?」
ローランド様は、私の母性本能をどこまでも刺激する。
「そうでしたか?私の目の前に、眩しいほど素敵な婚約者様がいらっしゃったので、よく見えませんでしたけど」
私はにこにこしながら言った。
「カスミ……」
ローランド様は、少し頬を染めて更に言いにくそうに話してきた。
「婚約者なら、いつまでも、姓で呼ぶのはおかしくないか……?」
可愛いよ、それ。可愛すぎるっ!
ローランド様っ!
「アレクシス様、とお呼びすることを許していただけるのですか?」
「アレク、と呼び捨てでいいぞ」
私はアレクシス様の希望はなんでも叶えてあげたいんだけど……。
「あの、私、前の世界では、人を呼ぶのに様つけはほとんどなくて、物語に出てくる王子様や騎士様の専売特許みたいな感じだったので、様付けで呼ぶの憧れてたんです。アレクシスってお名前も素敵ですし。だから、私はアレクシス様って呼びたいんですけど、ダメですか?」
「そうなのか?そういえば、カスミの世界は貴族がいないのだったな」
「はい。だから、様付けで呼ぶ意味は、自分よりも尊い存在って感じがして、貴方を呼ぶには必要な敬称な気がするんです」
「自分よりも尊い……?」
「はい」
「そ、そうか……。なら、そう呼んでくれ」
「アレクシス様。ありがとうございます」
私は笑顔で答えた後、そうだ、と思いついた事を聞いてみた。
「アレクシス様、私、旦那様って呼ぶのも憧れていたんですけど、結婚したらどっちで呼んだらいいでしょう?」
「だっ……!」
アレクシス様は、少し焦った後考え込んだ。
「そうだな……。人がいる時は旦那様で、プライベートでは名前がいいかな……」
また頬を染めて言った。プライベートって、何を想像したのかな?うふ、可愛い。
基本大人で、包容力があってもの静かなキャラなのに、なんか時々すごく可愛いんだよなぁ。
抱きしめて、ヨシヨシしてあげたくなっちゃうけど、殿方のプライドは守らなくちゃね。
私は思い切って、対面のソファからアレクシス様の隣に移って甘えたように囁いた。
「わかりました、アレクシス様。旦那様って呼ぶの、楽しみにしてますね」
「あ、ああ」
アレクシス様は頭をぶるっと振り、目をぎゅっと閉じてから、キリッとした表情に変えて、私を見た。
隣から手が伸びて来て、頬を撫でる。
ドキン。今度はときめくカッコよさ。
「カスミ。私は貴女の護衛でありながら、ちゃんと騎士の誓いを立てていなかった。……カスミをいつか手放さなければならないと思っていたから。でも、もう、決して手放さない。覚悟を決めたから、騎士の誓いを受けてくれ」
「アレクシス様……嬉しいです。
喜んでお受けします」
アレクシス様は私の前に跪いてこうべを垂れた。
「唯一無二の我が主人、カスミ・アイカワ様。私は騎士の忠誠を貴女に誓います。我が命に代えても必ず貴女を守り抜きます」
ひゃ~!ファンタジーの騎士様が、本から飛び出して来たみたい……。
私は騎士の誓いをどうやって受けるのかわからないから、私なりのやり方で受けようと思う。
私はアレクシス様の前に、両膝をついて、目線を合わせた。両手を組んで目を閉じる。
「大切な私だけの騎士様。アレクシス・ローランド様。騎士の誓いを下さってありがとうございます。私も貴方を守ります。力では守れませんけれど、貴方の健康に気を配り、心を癒して差し上げられるよう私の持てる全てで努力いたします」
そっと目を開けると、潤んだ瞳のアレクシス様が私を見ていた。
「あ、あのっ、アレクシス様?
ごめんなさい、私、騎士の誓いの受け方がわからなかったので、自己流で受けてしまって……」
慌てている私を、アレクシス様はかき抱くように抱擁した。
「カスミ……。私の主は最高だ。ありがとう……」
「アレクシス様……」
お礼を言いたいのは私です。
こんな素敵な人に守られて、しかもお嫁さんにしてもらえるなんて。
異世界に導いて下さった神さまありがとうございます。
おじいちゃん、おばあちゃん、私、すごくすごく幸せです。
~終わり~
最後まで見て下さって、ありがとうございました!
仮面を外したローランド様が私を意味深にちらちらと見てきます。
「ローランド様?どうかしましたか?」
私が尋ねると、ローランド様は俯いてぽそりと答えました。
「今日のカスミはいつにも増して美し過ぎる……。
男たちの視線を独り占めだ。
……良い男たちがたくさんいただろう……?」
ローランド様は、私の母性本能をどこまでも刺激する。
「そうでしたか?私の目の前に、眩しいほど素敵な婚約者様がいらっしゃったので、よく見えませんでしたけど」
私はにこにこしながら言った。
「カスミ……」
ローランド様は、少し頬を染めて更に言いにくそうに話してきた。
「婚約者なら、いつまでも、姓で呼ぶのはおかしくないか……?」
可愛いよ、それ。可愛すぎるっ!
ローランド様っ!
「アレクシス様、とお呼びすることを許していただけるのですか?」
「アレク、と呼び捨てでいいぞ」
私はアレクシス様の希望はなんでも叶えてあげたいんだけど……。
「あの、私、前の世界では、人を呼ぶのに様つけはほとんどなくて、物語に出てくる王子様や騎士様の専売特許みたいな感じだったので、様付けで呼ぶの憧れてたんです。アレクシスってお名前も素敵ですし。だから、私はアレクシス様って呼びたいんですけど、ダメですか?」
「そうなのか?そういえば、カスミの世界は貴族がいないのだったな」
「はい。だから、様付けで呼ぶ意味は、自分よりも尊い存在って感じがして、貴方を呼ぶには必要な敬称な気がするんです」
「自分よりも尊い……?」
「はい」
「そ、そうか……。なら、そう呼んでくれ」
「アレクシス様。ありがとうございます」
私は笑顔で答えた後、そうだ、と思いついた事を聞いてみた。
「アレクシス様、私、旦那様って呼ぶのも憧れていたんですけど、結婚したらどっちで呼んだらいいでしょう?」
「だっ……!」
アレクシス様は、少し焦った後考え込んだ。
「そうだな……。人がいる時は旦那様で、プライベートでは名前がいいかな……」
また頬を染めて言った。プライベートって、何を想像したのかな?うふ、可愛い。
基本大人で、包容力があってもの静かなキャラなのに、なんか時々すごく可愛いんだよなぁ。
抱きしめて、ヨシヨシしてあげたくなっちゃうけど、殿方のプライドは守らなくちゃね。
私は思い切って、対面のソファからアレクシス様の隣に移って甘えたように囁いた。
「わかりました、アレクシス様。旦那様って呼ぶの、楽しみにしてますね」
「あ、ああ」
アレクシス様は頭をぶるっと振り、目をぎゅっと閉じてから、キリッとした表情に変えて、私を見た。
隣から手が伸びて来て、頬を撫でる。
ドキン。今度はときめくカッコよさ。
「カスミ。私は貴女の護衛でありながら、ちゃんと騎士の誓いを立てていなかった。……カスミをいつか手放さなければならないと思っていたから。でも、もう、決して手放さない。覚悟を決めたから、騎士の誓いを受けてくれ」
「アレクシス様……嬉しいです。
喜んでお受けします」
アレクシス様は私の前に跪いてこうべを垂れた。
「唯一無二の我が主人、カスミ・アイカワ様。私は騎士の忠誠を貴女に誓います。我が命に代えても必ず貴女を守り抜きます」
ひゃ~!ファンタジーの騎士様が、本から飛び出して来たみたい……。
私は騎士の誓いをどうやって受けるのかわからないから、私なりのやり方で受けようと思う。
私はアレクシス様の前に、両膝をついて、目線を合わせた。両手を組んで目を閉じる。
「大切な私だけの騎士様。アレクシス・ローランド様。騎士の誓いを下さってありがとうございます。私も貴方を守ります。力では守れませんけれど、貴方の健康に気を配り、心を癒して差し上げられるよう私の持てる全てで努力いたします」
そっと目を開けると、潤んだ瞳のアレクシス様が私を見ていた。
「あ、あのっ、アレクシス様?
ごめんなさい、私、騎士の誓いの受け方がわからなかったので、自己流で受けてしまって……」
慌てている私を、アレクシス様はかき抱くように抱擁した。
「カスミ……。私の主は最高だ。ありがとう……」
「アレクシス様……」
お礼を言いたいのは私です。
こんな素敵な人に守られて、しかもお嫁さんにしてもらえるなんて。
異世界に導いて下さった神さまありがとうございます。
おじいちゃん、おばあちゃん、私、すごくすごく幸せです。
~終わり~
最後まで見て下さって、ありがとうございました!
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