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つま先から髪の先まで貴方のものです。
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5日目に私が取り乱してしまってから、ローランド様は王宮に滞在してずっと私の傍にいてくれます。
寝室こそ別ですが、食事も一緒ですし、お茶するのも、お散歩するのも護衛だからと付き合ってくれます。
騎士団の方が気になるけれど、ウィリアムさんが優秀なので、大きな事件が起こらない限りは、任せて大丈夫なんだとか。
ウィリアムさんにまで、ご迷惑をかけてごめんなさい。この埋め合わせはいつか必ず!と心に刻む。
そして今は、ダンスの先生はローランド様です。
レオン殿下とルイス王子のおかげでほとんどステップはマスターしていたので、後は上手く踊るコツを教えてもらいながら慣れるだけです。
レオン殿下やルイス王子がダンスがお上手なのはわかりますが、ローランド様が上手いのはちょっと驚きです。
だって、あまり社交界出てなさそうですもん。
そんな私の気持ちを察したのか、ローランド様が教えてくれました。
「私は帝王学や貴族マナーなどでダンスを叩き込まれたからね。私のダンスの相手はほとんど男が女役をやっていたのだが」
ほんとにローランド様は苦労なさったんだなぁ。
「でも、それだと私のような小さい女性は踊りにくいでしょう?」
「いや、むしろ、男と踊る方が難しいから、女性と踊ると踊りやすいよ」
今は私とローランド様だけなので仮面を被っていない。
私は王子様と踊っているような気持ちになって、笑ってしまう。
「なんだ?」
「いえね、ローランド様と踊っていると、王子様と踊っているみたいだなーって思ったんですけど、よく考えたら私、ずっとふたりの王子様と踊っていたのに、そう思ってなかったなって」
「あのふたりは、自ら教えるなんて言って、カスミがどんな女性か観察してたんだろうな。わざわざ忙しい王太子殿下まで。もの好きな奴らだ」
確かに興味もあったかもしれないけれど、ふたりの王子様もきっとローランド様を心配して、私の事を見に来たのではないかしら?
「私はローランド様のお傍にいる者として、合格できたのでしょうか?」
「ああ、満点だ。ふたりの麗しい王子たちに密着して踊り続けたのに、少しも靡かなかったんだろう?」
嬉しそうな表情でローランド様が言う。
仮面がないから表情がよくわかる。
「当たり前です。ふたりの王子様が麗しいとしても、所詮人レベルです。ローランド様は神レベル。美しさの格が違います」
「ハハッ。そんな事を言うのはカスミだけだな」
「本当ですよ。もしも私がこちらに来たのではなく、貴方が私の世界に来ていたなら、超有名人になって、美女は引く手数多だったでしょう。
私のような凡人が、ローランド様にお声をかけていただくことすら叶わなかったでしょう」
「カスミが凡人だなんて、信じられないが。女神か天使か妖精かって言われているのだぞ」
「どんなに褒められても、私のこの価値観が変わることは難しいでしょうね。でも、ローランド様からだけは私のことをきれいだと思っていただけたら嬉しいですが」
「カスミは今まで見た誰よりも美しいぞ。そして、外見だけでなく、内面も美しい」
愛おしそうにローランド様が見つめてくれる。
「では、お互い様ですね。私も同じことを思っていましたから」
顔を見てから、ローランド様とはかなり距離が近づいた気がして嬉しい。
前よりも、よく話してくれるようになったし、表情が読み取れるからローランド様の事を深く知っていけそうだ。
そんなことを考えていた時、ローランド様が踊るのを止めた。
真剣な表情で、私を見つめる。
「カスミ」
黙って続く言葉を待つ。
「もし、明日の舞踏会で、他に気になる男が居なかったなら、私と結婚してくれないだろうか」
私は少しだけ驚いたけれど、満面の笑みを見せる。
「明日にならなくても、結果は同じだと思いますが?」
「だが、選択肢が多い方がいいのではないか?」
「どれだけ選択肢を並べられても同じです。ローランド様は違うのですか?」
「いや、カスミ以外は何人いても関係ないな」
「ありがとうございます。私も同じ気持ちです。
数日離れただけで、耐えられないくらいローランド様が必要なのです。
この気持ちが、愛なのか恋なのかなんてわかりませんけど、貴方が大切でただ傍にいたいのです。貴方でないとダメなんです」
ローランド様は目を細めて笑む。
「ありがとう。私もカスミが大切で唯一無二の存在だ。だが、私は結婚するからにはただ傍にいてくれるだけでは足りないのだぞ?いいのか?」
私はその意味を考えて赤くなる。
「足りないなら、足りるようにして下さい。……私のつま先から髪の先に至るまで、貴方のものになるのですから」
元の世界で、聞いたことのあるような言葉が思い浮かび、言ってみた。
ローランド様は眉根を寄せて、苦しいような表情を作り、強く抱きしめて来た。
「ありがとう。そこまで言ってくれるなら、明日、舞踏会で正式に婚約を発表する。できるだけ準備を急ぐから、早く私の妻になっておくれ」
そう言ってキスをした。
「私こそ、貴方の傍にいさせてくださってありがとうございます。ずっと貴方を大切にします」
私は再びキスをねだって目を閉じた。
◇◇◇
舞踏会当日~
貴族の衣装を纏った仮面の騎士と、異世界から来た美しい稀人がダンスを踊っている。
稀人は、仮面の騎士だけを見つめ、輝いていた。
~終わり~
番外編を後一話載せてますので、是非見て下さい。
寝室こそ別ですが、食事も一緒ですし、お茶するのも、お散歩するのも護衛だからと付き合ってくれます。
騎士団の方が気になるけれど、ウィリアムさんが優秀なので、大きな事件が起こらない限りは、任せて大丈夫なんだとか。
ウィリアムさんにまで、ご迷惑をかけてごめんなさい。この埋め合わせはいつか必ず!と心に刻む。
そして今は、ダンスの先生はローランド様です。
レオン殿下とルイス王子のおかげでほとんどステップはマスターしていたので、後は上手く踊るコツを教えてもらいながら慣れるだけです。
レオン殿下やルイス王子がダンスがお上手なのはわかりますが、ローランド様が上手いのはちょっと驚きです。
だって、あまり社交界出てなさそうですもん。
そんな私の気持ちを察したのか、ローランド様が教えてくれました。
「私は帝王学や貴族マナーなどでダンスを叩き込まれたからね。私のダンスの相手はほとんど男が女役をやっていたのだが」
ほんとにローランド様は苦労なさったんだなぁ。
「でも、それだと私のような小さい女性は踊りにくいでしょう?」
「いや、むしろ、男と踊る方が難しいから、女性と踊ると踊りやすいよ」
今は私とローランド様だけなので仮面を被っていない。
私は王子様と踊っているような気持ちになって、笑ってしまう。
「なんだ?」
「いえね、ローランド様と踊っていると、王子様と踊っているみたいだなーって思ったんですけど、よく考えたら私、ずっとふたりの王子様と踊っていたのに、そう思ってなかったなって」
「あのふたりは、自ら教えるなんて言って、カスミがどんな女性か観察してたんだろうな。わざわざ忙しい王太子殿下まで。もの好きな奴らだ」
確かに興味もあったかもしれないけれど、ふたりの王子様もきっとローランド様を心配して、私の事を見に来たのではないかしら?
「私はローランド様のお傍にいる者として、合格できたのでしょうか?」
「ああ、満点だ。ふたりの麗しい王子たちに密着して踊り続けたのに、少しも靡かなかったんだろう?」
嬉しそうな表情でローランド様が言う。
仮面がないから表情がよくわかる。
「当たり前です。ふたりの王子様が麗しいとしても、所詮人レベルです。ローランド様は神レベル。美しさの格が違います」
「ハハッ。そんな事を言うのはカスミだけだな」
「本当ですよ。もしも私がこちらに来たのではなく、貴方が私の世界に来ていたなら、超有名人になって、美女は引く手数多だったでしょう。
私のような凡人が、ローランド様にお声をかけていただくことすら叶わなかったでしょう」
「カスミが凡人だなんて、信じられないが。女神か天使か妖精かって言われているのだぞ」
「どんなに褒められても、私のこの価値観が変わることは難しいでしょうね。でも、ローランド様からだけは私のことをきれいだと思っていただけたら嬉しいですが」
「カスミは今まで見た誰よりも美しいぞ。そして、外見だけでなく、内面も美しい」
愛おしそうにローランド様が見つめてくれる。
「では、お互い様ですね。私も同じことを思っていましたから」
顔を見てから、ローランド様とはかなり距離が近づいた気がして嬉しい。
前よりも、よく話してくれるようになったし、表情が読み取れるからローランド様の事を深く知っていけそうだ。
そんなことを考えていた時、ローランド様が踊るのを止めた。
真剣な表情で、私を見つめる。
「カスミ」
黙って続く言葉を待つ。
「もし、明日の舞踏会で、他に気になる男が居なかったなら、私と結婚してくれないだろうか」
私は少しだけ驚いたけれど、満面の笑みを見せる。
「明日にならなくても、結果は同じだと思いますが?」
「だが、選択肢が多い方がいいのではないか?」
「どれだけ選択肢を並べられても同じです。ローランド様は違うのですか?」
「いや、カスミ以外は何人いても関係ないな」
「ありがとうございます。私も同じ気持ちです。
数日離れただけで、耐えられないくらいローランド様が必要なのです。
この気持ちが、愛なのか恋なのかなんてわかりませんけど、貴方が大切でただ傍にいたいのです。貴方でないとダメなんです」
ローランド様は目を細めて笑む。
「ありがとう。私もカスミが大切で唯一無二の存在だ。だが、私は結婚するからにはただ傍にいてくれるだけでは足りないのだぞ?いいのか?」
私はその意味を考えて赤くなる。
「足りないなら、足りるようにして下さい。……私のつま先から髪の先に至るまで、貴方のものになるのですから」
元の世界で、聞いたことのあるような言葉が思い浮かび、言ってみた。
ローランド様は眉根を寄せて、苦しいような表情を作り、強く抱きしめて来た。
「ありがとう。そこまで言ってくれるなら、明日、舞踏会で正式に婚約を発表する。できるだけ準備を急ぐから、早く私の妻になっておくれ」
そう言ってキスをした。
「私こそ、貴方の傍にいさせてくださってありがとうございます。ずっと貴方を大切にします」
私は再びキスをねだって目を閉じた。
◇◇◇
舞踏会当日~
貴族の衣装を纏った仮面の騎士と、異世界から来た美しい稀人がダンスを踊っている。
稀人は、仮面の騎士だけを見つめ、輝いていた。
~終わり~
番外編を後一話載せてますので、是非見て下さい。
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