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女神の祝福〜ローランド視点
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騎士団でカスミに何かあったと聞いた時は、心臓が潰れる思いだった。
レオン殿下から私を求めて泣いていると聞いた時には訳がわからなかった。
私を見つけたカスミが縋り付くように泣いているのを見て、言いようのない喜びと、苦しさが心に溢れた。
カスミは私の腕の中で落ちつきを取り戻し、眠ってしまった。
なんとも愛しく感じた。
そして、いきなり異世界から飛ばされた恐怖や孤独を、もっと理解してやるべきだったと後悔した。
私は自分が傷つくのを怖れ、対応を誤ってしまったのだ。
カスミにこんな思いをさせるなんて護衛失格だ。
自分が傷つくことなどなんだって言うんだ。
カスミが傷つく事を思えば小さな事だ。
これからはカスミを全力で守ろう。
そう心に誓って、カスミのベッドに入った。
許可も得ず、同じベッドに入るなど、起きたカスミに拒絶され、嫌われる可能性が頭をよぎったが、今はこれが正解だと信じて。
布団の中でカスミを抱きしめると、柔らかく、温かく、いい匂いがした。
男としての本能がもたげそうになったが、幸い何日もきちんと眠れていなかったので、すぐに眠ることができた。
◇◇◇
頬に温かさを感じて目が覚めた。
目の前に、眩しそうにこちらを見つめるカスミがいた。
目線が合って、気づいた。
仮面が外れていたことに。
その瞬間、拒絶される、私は恐怖に顔を歪めた。
けれどーー
カスミの美しい顔がゆっくりと近づいた。
小さな柔らかい唇が目尻に触れる。
そして額に。頬に。鼻筋に。
優しく丁寧に。
大切なものを扱うように。
何度も繰り返される。
キスを受けながら、私は泣きそうになるのをグッと堪えた。
ーーまだ若かりし時。
帝王学の一環で、閨教育を受けた。
忠義の厚い教育係が、何人も変わりながら頑張って教えてくれた。
若い者にはつとまらなかったため、今の母ほどの年齢の女官たちだった。
それでも顔を晒すと耐えられなかったため、仮面をつけて事に及んだ。
これも王になるための務めだと堪えた。
その授業は大変惨めで、顔を青くしながらも頑張ってくれる女官に申し訳なくもあり、辛く苦しい思い出だ。
そのせいで女性との行為はそれなりに経験があるのだが、キスはしたことがなかった。
王位継承権を放棄し、結婚も諦めた今となっては、無駄な苦労だったと時々自嘲してしまうーー。
そんな私が今、とてつもなく甘いキスの雨を受けているのだ。
まるで女神から祝福を受けるように。
最後に唇に優しいキスを落としてカスミは微笑んだ。
「ほらね。大丈夫だったでしょう?」
囁くように言って頬を染めた。
私はもう、天国に召されたのだろう か?
過去の苦しみが溶けて行く……。
この時私は理解した。
カスミは唯一無二の存在なのだと。
そう思った途端、私はカスミを深く求めていた。
夢中で口内を貪っていたが、朦朧となったカスミに気づき、慌てて謝って離れる。
いくらカスミがこの顔を大丈夫だと言っても、いきなり口内に舌を入れられては、さぞかし気持ち悪かっただろう。
急いで仮面を被ろうとした私を、カスミは止めて二度と自分の前で顔を隠すなと言ってくれた。
「これからは一緒にご飯が食べられる」と喜んでいる。
カスミは気持ち悪くなかったのか?
本当に、私を全て受け入れてくれるのか?
期待を失ってのたうち回る自分が頭を過るが、それでも、カスミが望むままに、守って行くと私は決めた。
レオン殿下から私を求めて泣いていると聞いた時には訳がわからなかった。
私を見つけたカスミが縋り付くように泣いているのを見て、言いようのない喜びと、苦しさが心に溢れた。
カスミは私の腕の中で落ちつきを取り戻し、眠ってしまった。
なんとも愛しく感じた。
そして、いきなり異世界から飛ばされた恐怖や孤独を、もっと理解してやるべきだったと後悔した。
私は自分が傷つくのを怖れ、対応を誤ってしまったのだ。
カスミにこんな思いをさせるなんて護衛失格だ。
自分が傷つくことなどなんだって言うんだ。
カスミが傷つく事を思えば小さな事だ。
これからはカスミを全力で守ろう。
そう心に誓って、カスミのベッドに入った。
許可も得ず、同じベッドに入るなど、起きたカスミに拒絶され、嫌われる可能性が頭をよぎったが、今はこれが正解だと信じて。
布団の中でカスミを抱きしめると、柔らかく、温かく、いい匂いがした。
男としての本能がもたげそうになったが、幸い何日もきちんと眠れていなかったので、すぐに眠ることができた。
◇◇◇
頬に温かさを感じて目が覚めた。
目の前に、眩しそうにこちらを見つめるカスミがいた。
目線が合って、気づいた。
仮面が外れていたことに。
その瞬間、拒絶される、私は恐怖に顔を歪めた。
けれどーー
カスミの美しい顔がゆっくりと近づいた。
小さな柔らかい唇が目尻に触れる。
そして額に。頬に。鼻筋に。
優しく丁寧に。
大切なものを扱うように。
何度も繰り返される。
キスを受けながら、私は泣きそうになるのをグッと堪えた。
ーーまだ若かりし時。
帝王学の一環で、閨教育を受けた。
忠義の厚い教育係が、何人も変わりながら頑張って教えてくれた。
若い者にはつとまらなかったため、今の母ほどの年齢の女官たちだった。
それでも顔を晒すと耐えられなかったため、仮面をつけて事に及んだ。
これも王になるための務めだと堪えた。
その授業は大変惨めで、顔を青くしながらも頑張ってくれる女官に申し訳なくもあり、辛く苦しい思い出だ。
そのせいで女性との行為はそれなりに経験があるのだが、キスはしたことがなかった。
王位継承権を放棄し、結婚も諦めた今となっては、無駄な苦労だったと時々自嘲してしまうーー。
そんな私が今、とてつもなく甘いキスの雨を受けているのだ。
まるで女神から祝福を受けるように。
最後に唇に優しいキスを落としてカスミは微笑んだ。
「ほらね。大丈夫だったでしょう?」
囁くように言って頬を染めた。
私はもう、天国に召されたのだろう か?
過去の苦しみが溶けて行く……。
この時私は理解した。
カスミは唯一無二の存在なのだと。
そう思った途端、私はカスミを深く求めていた。
夢中で口内を貪っていたが、朦朧となったカスミに気づき、慌てて謝って離れる。
いくらカスミがこの顔を大丈夫だと言っても、いきなり口内に舌を入れられては、さぞかし気持ち悪かっただろう。
急いで仮面を被ろうとした私を、カスミは止めて二度と自分の前で顔を隠すなと言ってくれた。
「これからは一緒にご飯が食べられる」と喜んでいる。
カスミは気持ち悪くなかったのか?
本当に、私を全て受け入れてくれるのか?
期待を失ってのたうち回る自分が頭を過るが、それでも、カスミが望むままに、守って行くと私は決めた。
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