9 / 29
ブサカワ副団長ウィリアムさんはイケメンです。
しおりを挟む
王宮から帰った翌朝、私はリサさんといつものように食堂へ向かっています。
道すがら、すれ違う騎士様たちは、頬を染めながら「おはよう」と挨拶してくれます。
食堂に入ると、やはり皆さんの注目を浴びるけれど、できるだけスルーしてリサさんと空いた席に座ります。
こちらから話しかければ、皆さん優しく対応してくれますが、なぜかいつも遠巻きに見ているだけで、向こうからは話しかけてくれません。
「それは、カスミ様が高嶺の花だからですわ。それに、団長から、稀人には無闇に接触しないよう伝達が回っていますから」
リサさんが教えてくれた事に、ビックリしてしまった。
「へ?何でですか?」
私は皆さんと仲良くなって、もっと交流したいのに。
「カスミ様は美しすぎるので、いくら騎士でも抑制が効かなくなる可能性がありますからね。団長は自分の部下にリスクを負わせないよう守っているのですわ。もちろんカスミ様も」
そんな大袈裟な。
「まさか。そこまでする人なんていないでしょ?野獣じゃあるまいし」
私がそう言うと、リサさんが少し怖い顔をして言った。
「カスミ様は、どうも危機意識が低すぎて困ります。……まあ、それだから団長が気を配っているのでしょうけれど」
う~ん、未だ自分が絶世の美女?的立ち位置にいるのが慣れない。
日本の友人である智美が聞いたら、お腹抱えて笑うんだろうなぁ。
食事を終えてそんな話をしていた時。
「レディ。少し声を掛けること、お許し願えますか?」
そんなキザなセリフで話しかけて来たのは、ブサカワの副団長、ウィリアムさんだ。
私はちょっと笑いそうになったが笑顔で返事した。
「えぇ、もちろん」
ウィリアムさんは一礼して、自己紹介を始めた。
「訓練所では、よくお見かけしていたのですが、ご挨拶がまだでしたよね。私はここの副団長をしているウィリアムと申します。以後どうぞお見知り置きを」
よく考えたら、この騎士団にお世話になって随分経つのに、騎士様方にちゃんと紹介されたことないや。
私に直接関わるのはリサさんくらいだし。
「私は花純です。よろしくお願いします」
ウィリアムさんが名前だけ名乗ったので、私もそうした。
「それで、カスミ様は、昨日王宮で護衛兼婚約者の話は聞かれましたか?」
私はドキッとしながら頷いてみせた。
「不躾ではありますが、是非、私も候補に入れていただけませんか?」
ウィリアムさんの突然の申し出に驚いていると、察したように話を続けた。
「稀人を守るのは、騎士にとって大変な名誉なのです。是非、私にもチャンスを与えていただけないでしょうか。剣の腕には自信がありますし、婚約者としても、カスミ様だけを大切にするとお約束いたしますので」
ウィリアムさんが、この世界でモテモテらしいのが何となくわかった。今のセリフを、目を閉じて、ローランド様に置き換えてみたら惚れますもの。
でもごめんなさい。護衛として見れたとしても、婚約者としては無理そうです。
「あ、あの、すみません……もう、護衛は決まってしまったので」
私が申し訳なさそうに返事をすると、ウィリアムさんは目を見開いた。
でも、小さな瞳なので、やっぱりつぶらに見えた。
「そうなのですか?そんなに早く決まってしまうなんて……何人か候補が決まったと言うわけではないのですね?」
「はい。私がお願いしたい人はひとりだけなので」
「しかし、こちらに来てまだ幾日も経っていないというのに、よく決められましたね。どの騎士が選ばれたのか聞いても良いでしょうか?」
ウィリアムさんは信じきれないようで伺うように私を見る。
もう決定している事だし、私から話してしまってもいいよね?
「……ローランド様に護衛はお願いしました。」
その発言を受けて、ウィリアムさんだけでなく食堂の騎士様たち皆が騒ついた。
そんな時、食堂に仮面をつけたローランド様が入って来た。
私は満面の笑みで挨拶をする。
「ローランド様!おはようございます!」
「ああ、おはよう」
優しい声でローランド様が答えた。
しばし見つめ合うふたり。
騎士様たちはその様子を見て静まり返った。
「今日はみんなに報告することがあるから、遅れずに訓練所に来てくれ」
それだけ言うと、ローランド様は食事を取りに行く。トレイを持って私の元へ来ると、
「今日は皆にそなたを紹介するから。後で部屋へ迎えに行く」
それだけ言って、出て行った。
「り、リサさん……!なんか、ローランド様の素敵オーラが増した気がするのですが……!」
仮面で表情など分からないはずなのに、優しく見つめられ、守られているような気持ちになった。
胸の前で手を組み、クネクネする私をリサさんが苦笑していた。
ウィリアムさんがまだ側に居たことに気づいて、顔のにやけを正す。
「団長が護衛になるのでしたら、私は敵いません。潔く諦める事にしましょう。ですが、団長がいない時などには、代理として、是非お役に立たせて下さい」
ウィリアムさんは爽やか(そう)な笑顔で一礼して去って行った。
「リサさん、ウィリアムさんって良い人ですね。さすがこの世界のイケメンです!」
イケメンキャラならもっと強引なのかと思ったけど。
団長を敬っているし、ウィリアムさんは性格は良さそうだ。
ローランド様にあのような部下がいて良かった!
「この世界の、イケメン……ね」リサさんが、遠い目で呟いていた。
道すがら、すれ違う騎士様たちは、頬を染めながら「おはよう」と挨拶してくれます。
食堂に入ると、やはり皆さんの注目を浴びるけれど、できるだけスルーしてリサさんと空いた席に座ります。
こちらから話しかければ、皆さん優しく対応してくれますが、なぜかいつも遠巻きに見ているだけで、向こうからは話しかけてくれません。
「それは、カスミ様が高嶺の花だからですわ。それに、団長から、稀人には無闇に接触しないよう伝達が回っていますから」
リサさんが教えてくれた事に、ビックリしてしまった。
「へ?何でですか?」
私は皆さんと仲良くなって、もっと交流したいのに。
「カスミ様は美しすぎるので、いくら騎士でも抑制が効かなくなる可能性がありますからね。団長は自分の部下にリスクを負わせないよう守っているのですわ。もちろんカスミ様も」
そんな大袈裟な。
「まさか。そこまでする人なんていないでしょ?野獣じゃあるまいし」
私がそう言うと、リサさんが少し怖い顔をして言った。
「カスミ様は、どうも危機意識が低すぎて困ります。……まあ、それだから団長が気を配っているのでしょうけれど」
う~ん、未だ自分が絶世の美女?的立ち位置にいるのが慣れない。
日本の友人である智美が聞いたら、お腹抱えて笑うんだろうなぁ。
食事を終えてそんな話をしていた時。
「レディ。少し声を掛けること、お許し願えますか?」
そんなキザなセリフで話しかけて来たのは、ブサカワの副団長、ウィリアムさんだ。
私はちょっと笑いそうになったが笑顔で返事した。
「えぇ、もちろん」
ウィリアムさんは一礼して、自己紹介を始めた。
「訓練所では、よくお見かけしていたのですが、ご挨拶がまだでしたよね。私はここの副団長をしているウィリアムと申します。以後どうぞお見知り置きを」
よく考えたら、この騎士団にお世話になって随分経つのに、騎士様方にちゃんと紹介されたことないや。
私に直接関わるのはリサさんくらいだし。
「私は花純です。よろしくお願いします」
ウィリアムさんが名前だけ名乗ったので、私もそうした。
「それで、カスミ様は、昨日王宮で護衛兼婚約者の話は聞かれましたか?」
私はドキッとしながら頷いてみせた。
「不躾ではありますが、是非、私も候補に入れていただけませんか?」
ウィリアムさんの突然の申し出に驚いていると、察したように話を続けた。
「稀人を守るのは、騎士にとって大変な名誉なのです。是非、私にもチャンスを与えていただけないでしょうか。剣の腕には自信がありますし、婚約者としても、カスミ様だけを大切にするとお約束いたしますので」
ウィリアムさんが、この世界でモテモテらしいのが何となくわかった。今のセリフを、目を閉じて、ローランド様に置き換えてみたら惚れますもの。
でもごめんなさい。護衛として見れたとしても、婚約者としては無理そうです。
「あ、あの、すみません……もう、護衛は決まってしまったので」
私が申し訳なさそうに返事をすると、ウィリアムさんは目を見開いた。
でも、小さな瞳なので、やっぱりつぶらに見えた。
「そうなのですか?そんなに早く決まってしまうなんて……何人か候補が決まったと言うわけではないのですね?」
「はい。私がお願いしたい人はひとりだけなので」
「しかし、こちらに来てまだ幾日も経っていないというのに、よく決められましたね。どの騎士が選ばれたのか聞いても良いでしょうか?」
ウィリアムさんは信じきれないようで伺うように私を見る。
もう決定している事だし、私から話してしまってもいいよね?
「……ローランド様に護衛はお願いしました。」
その発言を受けて、ウィリアムさんだけでなく食堂の騎士様たち皆が騒ついた。
そんな時、食堂に仮面をつけたローランド様が入って来た。
私は満面の笑みで挨拶をする。
「ローランド様!おはようございます!」
「ああ、おはよう」
優しい声でローランド様が答えた。
しばし見つめ合うふたり。
騎士様たちはその様子を見て静まり返った。
「今日はみんなに報告することがあるから、遅れずに訓練所に来てくれ」
それだけ言うと、ローランド様は食事を取りに行く。トレイを持って私の元へ来ると、
「今日は皆にそなたを紹介するから。後で部屋へ迎えに行く」
それだけ言って、出て行った。
「り、リサさん……!なんか、ローランド様の素敵オーラが増した気がするのですが……!」
仮面で表情など分からないはずなのに、優しく見つめられ、守られているような気持ちになった。
胸の前で手を組み、クネクネする私をリサさんが苦笑していた。
ウィリアムさんがまだ側に居たことに気づいて、顔のにやけを正す。
「団長が護衛になるのでしたら、私は敵いません。潔く諦める事にしましょう。ですが、団長がいない時などには、代理として、是非お役に立たせて下さい」
ウィリアムさんは爽やか(そう)な笑顔で一礼して去って行った。
「リサさん、ウィリアムさんって良い人ですね。さすがこの世界のイケメンです!」
イケメンキャラならもっと強引なのかと思ったけど。
団長を敬っているし、ウィリアムさんは性格は良さそうだ。
ローランド様にあのような部下がいて良かった!
「この世界の、イケメン……ね」リサさんが、遠い目で呟いていた。
83
お気に入りに追加
2,655
あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!
家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……?
多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。


捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる