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困惑〜ローランド視点
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大変なものを拾ってしまった。
考えてみると、昨日から何か予感があったのだろう。落ち着かない気分だったのだ。
禁足の地に人の存在を感知した。
行ってみれば、そこにいたのは稀人だったーー。
◇◇◇
私はこの国の第一王子として生まれた。
王家には時折、先祖返りで醜い姿に生まれる者がいるのだが、私がまさにそれだ。
顔も体型も非常に醜く、幼い頃は辛い思いをたくさんしたものだ。
それでも能力で勝負しようと若い頃から勉学や剣に努力を費やし、少しでも人当たりが良くなるように立ち居振る舞い、マナー、話し方にも気を配った。
このような姿でも、一応王子であるし、一番王太子に近い存在であるから、権力を欲する者たちが娘を妻にと差し出して来た。
秘密裏に見合いを重ねたが、娘の方は私の妻になりたい者など無く、親から強制されたり、私の両親から上手いこと言われて連れて来られた者ばかりだった。
だからいざ対面となれば、気絶したり、泣き叫んだり、中には嘔吐してしまう娘もいて、私は絶望した。
どんなに努力しても、妻を娶ることができないのであれば、王になることなどできない。跡継ぎを儲けることも王の義務だからだ。権力に任せて無理やりーーなどできるはずもなく、私は王位継承権を放棄した。
その後私は降籍して、公爵の称号を賜った。本来なら王としてこの身を捧げるはずだったのだから、別の形で国に仕えようと騎士になった。
醜く生まれたものは神力を授かる事が多い。禁足の地に人が侵入すると感知できる能力だ。私は女神の眠る禁足の地の守り人として、また、第二騎士団の団長として働いている。
あの日、私は禁足の地に人の気配を感じた。人攫いや盗賊が奪ったモノを隠すために侵入したのではないかと思い、馬を走らせた。
だが、そこに居たのは美しい民族衣装を身に纏った稀人であったーー。
◇◇◇
あまりの美しさに一瞬目眩がした。何とか平静を保って騎士団詰所まで連れ帰った。女は大人しく、従順に従った。
翌日になると、大人しく従順だと思っていた女ーーカスミは、なぜか私に懐いていた。
卵から孵った雛が、初めて見た者を親と思い込むのと似ていると思った。
カスミは平民だと言うが、学がなく粗野なこの世界の平民とは違う。一般教養が身についており、礼儀正しく、他人への思いやりある謙虚な態度が身についているのだ。着ていた民族衣装や立ち居振る舞いから、異世界の姫と言っても遜色ないというのに、騎士団の仕事を積極的に手伝い、高飛車なところがひとつもない。この世界の貴族令嬢とは全く違っていた。
そんなカスミは、私の姿を見るたび嬉しそうな顔を向けて来る。美醜にさほど頓着しない騎士仲間でさえ一線を越えて付き合おうという者はいないのに、カスミはすぐに懐に入って来ようとする。
そんな存在に、私は困惑してばかりだ。
そして、ついにカスミはこの私を護衛兼婚約者候補にしてしまった。信じられない。
稀人には護衛兼婚約者を付けることは知っていたが、私は団長だしこの姿だから、はなから候補になれるとは思っていなかった。
それなのにカスミは目の前の見目麗しい男たちには目もくれず、私を護衛にと望んだ。団長職の私と居るために、王宮での優雅な暮らしを捨ててまで……。
私はいったいどうしたらいいのか。
もちろん私の方はあんなに美しく愛らしい女を娶れるなら夢のようだが、私ばかりが良い思いをしてしまうではないか。
それに、結婚というのは、ただ仲良くできれば良いのではなく、そ、その、身体を合わせるという難関があるのだ。いくらカスミでも、醜い私に抱かれるのは無理なのではないか……。
そんなことまで考えてしまった自分に自嘲しながら独り言を呟く。
「この世界に来て、頼れるのが自分というだけだ。カスミは私に惚れているのではない。今の世界に慣れれば、もっと良い男が現れるだろう……私は、その日までの保護者として守っていてやれば良い」
自分の言葉に、胸がチリリと痛むのを感じたが、気付かない事にした。
考えてみると、昨日から何か予感があったのだろう。落ち着かない気分だったのだ。
禁足の地に人の存在を感知した。
行ってみれば、そこにいたのは稀人だったーー。
◇◇◇
私はこの国の第一王子として生まれた。
王家には時折、先祖返りで醜い姿に生まれる者がいるのだが、私がまさにそれだ。
顔も体型も非常に醜く、幼い頃は辛い思いをたくさんしたものだ。
それでも能力で勝負しようと若い頃から勉学や剣に努力を費やし、少しでも人当たりが良くなるように立ち居振る舞い、マナー、話し方にも気を配った。
このような姿でも、一応王子であるし、一番王太子に近い存在であるから、権力を欲する者たちが娘を妻にと差し出して来た。
秘密裏に見合いを重ねたが、娘の方は私の妻になりたい者など無く、親から強制されたり、私の両親から上手いこと言われて連れて来られた者ばかりだった。
だからいざ対面となれば、気絶したり、泣き叫んだり、中には嘔吐してしまう娘もいて、私は絶望した。
どんなに努力しても、妻を娶ることができないのであれば、王になることなどできない。跡継ぎを儲けることも王の義務だからだ。権力に任せて無理やりーーなどできるはずもなく、私は王位継承権を放棄した。
その後私は降籍して、公爵の称号を賜った。本来なら王としてこの身を捧げるはずだったのだから、別の形で国に仕えようと騎士になった。
醜く生まれたものは神力を授かる事が多い。禁足の地に人が侵入すると感知できる能力だ。私は女神の眠る禁足の地の守り人として、また、第二騎士団の団長として働いている。
あの日、私は禁足の地に人の気配を感じた。人攫いや盗賊が奪ったモノを隠すために侵入したのではないかと思い、馬を走らせた。
だが、そこに居たのは美しい民族衣装を身に纏った稀人であったーー。
◇◇◇
あまりの美しさに一瞬目眩がした。何とか平静を保って騎士団詰所まで連れ帰った。女は大人しく、従順に従った。
翌日になると、大人しく従順だと思っていた女ーーカスミは、なぜか私に懐いていた。
卵から孵った雛が、初めて見た者を親と思い込むのと似ていると思った。
カスミは平民だと言うが、学がなく粗野なこの世界の平民とは違う。一般教養が身についており、礼儀正しく、他人への思いやりある謙虚な態度が身についているのだ。着ていた民族衣装や立ち居振る舞いから、異世界の姫と言っても遜色ないというのに、騎士団の仕事を積極的に手伝い、高飛車なところがひとつもない。この世界の貴族令嬢とは全く違っていた。
そんなカスミは、私の姿を見るたび嬉しそうな顔を向けて来る。美醜にさほど頓着しない騎士仲間でさえ一線を越えて付き合おうという者はいないのに、カスミはすぐに懐に入って来ようとする。
そんな存在に、私は困惑してばかりだ。
そして、ついにカスミはこの私を護衛兼婚約者候補にしてしまった。信じられない。
稀人には護衛兼婚約者を付けることは知っていたが、私は団長だしこの姿だから、はなから候補になれるとは思っていなかった。
それなのにカスミは目の前の見目麗しい男たちには目もくれず、私を護衛にと望んだ。団長職の私と居るために、王宮での優雅な暮らしを捨ててまで……。
私はいったいどうしたらいいのか。
もちろん私の方はあんなに美しく愛らしい女を娶れるなら夢のようだが、私ばかりが良い思いをしてしまうではないか。
それに、結婚というのは、ただ仲良くできれば良いのではなく、そ、その、身体を合わせるという難関があるのだ。いくらカスミでも、醜い私に抱かれるのは無理なのではないか……。
そんなことまで考えてしまった自分に自嘲しながら独り言を呟く。
「この世界に来て、頼れるのが自分というだけだ。カスミは私に惚れているのではない。今の世界に慣れれば、もっと良い男が現れるだろう……私は、その日までの保護者として守っていてやれば良い」
自分の言葉に、胸がチリリと痛むのを感じたが、気付かない事にした。
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