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醜いイケメン騎士と王宮へ行きます⑵
しおりを挟むいよいよ王宮へ行く日が来た。
第2騎士団から王宮までは、馬車で1時間もかからないそうで、お昼をいただいてから出発する予定だ。
食事を終えた私は自室で身支度をしている。
ローランド様が手配してくださったワンピースは透明感ある水色で、襟と袖口に上品なレースがあしらってある。
後ろは腰のところでリボンを結ぶようになっていてシンプルかつ上品なデザインだった。
うん。私好み。
流石ローランド様。
お金出させちゃってるから、いつか必ず働いてお返ししますね!
髪はサイドを編み込んで後ろは自然に流し、かすみ草のような花が少しあしらわれている。
パールのネックレスとイヤリングをリサさんが貸してくれた。
薄化粧を施して、清楚なお嬢様の出来上がり。
黒髪黒目の地味平凡な私がちょっとばかり綺麗に見える。うん、ちょっとだけね。
リサさんは優秀なメイクアップアーティストだ。
支度を終えてリサさんと雑談をしていると、ノックが鳴った。
ローランド様がお迎えに来てくれたようだ。
リサさんが扉を開けると、目に入ったのはーー
いつもの服とは違う、豪奢な騎士服を身に纏ったローランド様が立っていた。
前身頃には沢山の勲章らしきものが飾ってある。
王子様か……!
私は興奮してローランド様のもとへ駆け寄った。
「ローランド様‼︎ その装いは正装ですか?すっごく似合っています!カッコいい~‼︎ 」
にやけ顔を隠さず向けるとローランド様は固まっているようだった。
いつもより解凍が遅いようなので首を傾けていると、リサさんが笑いながらローランド様に話しかけた。
「ふふっ、団長、見惚れすぎですよ?どうです?王宮に行っても恥ずかしくない出で立ちですわよね?」
え?見惚れているのは、ローランド様ではなく私の方ですよ?
よくわからないけど、やっと解凍したローランド様が小さなお声で「似合っている」と言ってくださった。
なんか、可愛い。
エスコートされて馬車までくると、手を添えて馬車に乗せてくれた。
ローランド様は馬車には乗らず馬で並走すると言う。
扉を閉められそうになって、私は急に不安が込み上げて来た。
「待って下さい、ローランド様……!あ、あの、ひとりでは不安なので、一緒に乗って下さいませんか……?」
その言葉にまたしても固まったローランド様は、今度は早く解けたらしい。
「すまない、リサをつけてやれれば良かったんだが、あいにくあれにも仕事があってな」
「私は、ローランド様に乗って欲しいんですけど……」
ローランド様が、眉をひそめたのがなんとなくわかった。
「そなたは……良いのか?男とふたりきりなど」
難しそうな声を出してローランド様が尋ねてくる。
「え?ローランド様なら全然大丈夫ですけど?」
ローランド様はため息をついて、近くにいる騎士に自分のかわりに並走するよう指示した。
そして馬車に乗り込んで窓のカーテンを全開にした。
「普通は未婚の男女がふたりきりで馬車に乗るなどあってはならないんだぞ。私だから大丈夫だが、他の男と乗ったりすれば、何をされるかわからんぞ」
「すみません、でも、ひとりきりになると思うと不安で……。あ、もちろん、ローランド様だから頼みました。ありがとうございます。ローランド様は私の命の恩人ですから、全面的に信用してます!」
ローランド様は私にわからないようこっそりため息を吐いていた。
「こんな無防備で大丈夫かそなた……」
先程感じた不安がなんだったのかわからないけれど、ローランド様が視界に入っていると嘘のように消えた。
私は馬車の窓から異世界を眺めていた。
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