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第5話
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「――ごめんね」
「何が?」
何がって……僕らは同じようで、同じではなかったこと。僕も所詮、ケヴィンの嫌いな、脆くて朽ちゆくものだったこと。それから……置いていくこと。またひとりにしてしまうこと。
こんな冗長な人生とっとと終えてしまいたい、いつ終えたって惜しくないと思っていたのに、今になって思う。
――死にたくない
愛する人を遺していくことが、こんなにも辛いだなんて。
今まで何人も見送ってきたけど、それに不満だったけど。自分ばかりが辛いと思っていたけど。
遺してゆく側の気持ちは考えたことが無かった。
僕を遺していったみんなも、こんな気持ちだったのかな。
「ケヴィン……」
心配そうに僕の頬に添えられたケヴィンの手に、そっと触れる。そんなはずはないのに、ケヴィンの手に温かみを感じた。
「ごめんね、僕もケヴィンを置いてっちゃう」
「……」
「そんな顔しないでよ」
僕は力一杯笑顔を作った。ケヴィンが好きな、僕の笑顔。だけどケヴィンは今までに見たことない顔をしていた。
「またいつもの繰り返しさ。僕がいなくなったらまた次の」
「そんな話するな」
「ケヴィン……最期にお願いひとつきいて」
「何?」
「抱いてよ」
「……」
「もういいだろ、どうせ時間の問題なんだし。醜いポンコツになる前に、ケヴィンの腕の中でそのときを迎えたい」
「……無理だ」
「なんでだよ!」
「……いなくなるのわかっててみすみす、お前の味を覚えたくない」
「勝手なんだから」
「俺を置いていなくなるお前の方が勝手なんだからな……!」
それについてはごめん。ほんとにごめん。だから泣かないで。初めて見るケヴィンの泣き顔は、なんだか子どもみたいだ。それにこんなに声を荒らげるケヴィンを見るのも初めてだ。最後にいろんなケヴィンが見られて、嬉しいなあ。
「ルカ、愛してる」
「僕も」
ケヴィンの涙を指で拭った。もう指一本動かすのも億劫だ。それでもなんとか力を振り絞って、僕は自力でケヴィンの上から退いた。
だって、東の空が――
「ケヴィン、もう眠って」
「眠るだって?」
「もう朝だよ、さあ」
人に眠れといいながら、僕が先に目を閉じた。きっともう、開くことはないんだろうなあ。
「ここにいる」
「え?」
「眠れるわけがないだろう。朝になったってここにいる」
その言葉がどういうことを意味するのか、そろそろ頭が回らなくなってきた僕にだってわかる。
「お願い、もう行って。困らせないで」
「嫌だ」
「ケヴィンが眠らないなら……僕が先に、寝る、ね」
ケヴィンはすぐにちゃんと地下室へ向かったかな。
僕のことはケーキや花束みたいにゴミ箱へ突っ込んで、今度はきちんと食糧にもなる奴を相手にした方がいいよ。
愛し合っているのに食糧にもなれなくて、抱いてももらえなくて、他の人で済ませてこられるのは、辛すぎるんだからね……。
「何が?」
何がって……僕らは同じようで、同じではなかったこと。僕も所詮、ケヴィンの嫌いな、脆くて朽ちゆくものだったこと。それから……置いていくこと。またひとりにしてしまうこと。
こんな冗長な人生とっとと終えてしまいたい、いつ終えたって惜しくないと思っていたのに、今になって思う。
――死にたくない
愛する人を遺していくことが、こんなにも辛いだなんて。
今まで何人も見送ってきたけど、それに不満だったけど。自分ばかりが辛いと思っていたけど。
遺してゆく側の気持ちは考えたことが無かった。
僕を遺していったみんなも、こんな気持ちだったのかな。
「ケヴィン……」
心配そうに僕の頬に添えられたケヴィンの手に、そっと触れる。そんなはずはないのに、ケヴィンの手に温かみを感じた。
「ごめんね、僕もケヴィンを置いてっちゃう」
「……」
「そんな顔しないでよ」
僕は力一杯笑顔を作った。ケヴィンが好きな、僕の笑顔。だけどケヴィンは今までに見たことない顔をしていた。
「またいつもの繰り返しさ。僕がいなくなったらまた次の」
「そんな話するな」
「ケヴィン……最期にお願いひとつきいて」
「何?」
「抱いてよ」
「……」
「もういいだろ、どうせ時間の問題なんだし。醜いポンコツになる前に、ケヴィンの腕の中でそのときを迎えたい」
「……無理だ」
「なんでだよ!」
「……いなくなるのわかっててみすみす、お前の味を覚えたくない」
「勝手なんだから」
「俺を置いていなくなるお前の方が勝手なんだからな……!」
それについてはごめん。ほんとにごめん。だから泣かないで。初めて見るケヴィンの泣き顔は、なんだか子どもみたいだ。それにこんなに声を荒らげるケヴィンを見るのも初めてだ。最後にいろんなケヴィンが見られて、嬉しいなあ。
「ルカ、愛してる」
「僕も」
ケヴィンの涙を指で拭った。もう指一本動かすのも億劫だ。それでもなんとか力を振り絞って、僕は自力でケヴィンの上から退いた。
だって、東の空が――
「ケヴィン、もう眠って」
「眠るだって?」
「もう朝だよ、さあ」
人に眠れといいながら、僕が先に目を閉じた。きっともう、開くことはないんだろうなあ。
「ここにいる」
「え?」
「眠れるわけがないだろう。朝になったってここにいる」
その言葉がどういうことを意味するのか、そろそろ頭が回らなくなってきた僕にだってわかる。
「お願い、もう行って。困らせないで」
「嫌だ」
「ケヴィンが眠らないなら……僕が先に、寝る、ね」
ケヴィンはすぐにちゃんと地下室へ向かったかな。
僕のことはケーキや花束みたいにゴミ箱へ突っ込んで、今度はきちんと食糧にもなる奴を相手にした方がいいよ。
愛し合っているのに食糧にもなれなくて、抱いてももらえなくて、他の人で済ませてこられるのは、辛すぎるんだからね……。
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