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コンテスト応募から約半年の月日が流れた。
この半年の間、彼らは週末になると史郎の家でほとんどの時間を過ごし、ストイックに写真を撮り続けていた。この頃にはジュンの知識も技術も格段にレベルが上がっており、さすが若い子は飲み込みが早い、だとか、僕が教えることはもう何もない、だとか、年寄りじみたベタな台詞を思い浮かべる日々である。
並行して、好きな食べ物や家族構成など互いの情報をよく知るところとなり、良好な関係をより深めた。たまには撮影抜きでお気に入りの店へ外食に出かけることもあった。一泊で撮影旅行に出かけたこともあったが、妙な雰囲気になったり身体に触れたりすることは一切なく、あくまでも健全な師弟関係を貫いている。
いよいよ結果発表の時期が近づいた。はっきりとした日にちは知らされていないため、今日には発表があるか、明日には連絡が来るか、と史郎もジュンも連日気が気でない。
「またお昼食べないの?」
「やっぱり食欲がなくって……」
ここ最近、ジュンは発表を前に緊張してか、食欲がない。一日一食程度になってしまっており、史郎は非常に心配していた。そんなメンタルじゃ写真家になんてなれないぞ、と活を入れることも考えたが、今それは正解でないような気がして、ジュンの不安な気持ちにただ寄り添うことにした。そしてこんな返事を予想して、かなり少なめに盛っておいた二人分の食事を、史郎が一人でたいらげた。
満腹の昼下がり、うつらうつらとしているところへ、メールの着信がけたたましく鳴り、史郎は飛び上がった。ジュンが結果発表の連絡に絶対気づくようにと、着信通知の音量を最大にまで上げているのだ。
「……き、来ました……」
震える声でジュンが言う。目を泳がせ、声でだけでなく手も震えている。『フォトコンテスト結果発表』という件名を見ただけで、まだ開封をしていない。それでこの狼狽ぶりである。史郎はジュンに近づいて、寄り添いながら共にスマートフォンの画面を見た。隣にいると、今にもジュンの心臓の音が聞こえてきそうだ。
「……開けます、ね……」
「うん」
指先が震えて、うまくタップできない。史郎はジュンの震える手を包みこむと、人差し指を固定し、一緒に開封ボタンをタップした。
結果は――
この半年の間、彼らは週末になると史郎の家でほとんどの時間を過ごし、ストイックに写真を撮り続けていた。この頃にはジュンの知識も技術も格段にレベルが上がっており、さすが若い子は飲み込みが早い、だとか、僕が教えることはもう何もない、だとか、年寄りじみたベタな台詞を思い浮かべる日々である。
並行して、好きな食べ物や家族構成など互いの情報をよく知るところとなり、良好な関係をより深めた。たまには撮影抜きでお気に入りの店へ外食に出かけることもあった。一泊で撮影旅行に出かけたこともあったが、妙な雰囲気になったり身体に触れたりすることは一切なく、あくまでも健全な師弟関係を貫いている。
いよいよ結果発表の時期が近づいた。はっきりとした日にちは知らされていないため、今日には発表があるか、明日には連絡が来るか、と史郎もジュンも連日気が気でない。
「またお昼食べないの?」
「やっぱり食欲がなくって……」
ここ最近、ジュンは発表を前に緊張してか、食欲がない。一日一食程度になってしまっており、史郎は非常に心配していた。そんなメンタルじゃ写真家になんてなれないぞ、と活を入れることも考えたが、今それは正解でないような気がして、ジュンの不安な気持ちにただ寄り添うことにした。そしてこんな返事を予想して、かなり少なめに盛っておいた二人分の食事を、史郎が一人でたいらげた。
満腹の昼下がり、うつらうつらとしているところへ、メールの着信がけたたましく鳴り、史郎は飛び上がった。ジュンが結果発表の連絡に絶対気づくようにと、着信通知の音量を最大にまで上げているのだ。
「……き、来ました……」
震える声でジュンが言う。目を泳がせ、声でだけでなく手も震えている。『フォトコンテスト結果発表』という件名を見ただけで、まだ開封をしていない。それでこの狼狽ぶりである。史郎はジュンに近づいて、寄り添いながら共にスマートフォンの画面を見た。隣にいると、今にもジュンの心臓の音が聞こえてきそうだ。
「……開けます、ね……」
「うん」
指先が震えて、うまくタップできない。史郎はジュンの震える手を包みこむと、人差し指を固定し、一緒に開封ボタンをタップした。
結果は――
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