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はぁ、と大きく息を吐いて、ホームのベンチに腰を下ろす。
無駄足だったこと、騙されていたこと、あれやこれやで憤りが収まらない。今から会える相手でも探すか。
ポケットのスマホは震えっぱなしだ。おそらくジュンからだろう。
『また絶対会ってください』
『本気ですから』
『やっぱり我慢できません』
延々と連なる短文を冷めた気持ちで眺めていると
「史郎さん」
なんと隣にジュンがいた。
「史郎さん、なんで俺ダメなんですか。会うまではずっといい雰囲気でしたよね? そりゃ年齢詐称してたのは悪かったですけど、俺のこと、ちゃんと見てください、それから今後のこと決めてください」
またか。さっき説明したよな? また説明しないといけないのか? 史郎はまるで出来の悪い新入社員を相手にしているような気分になった。
「わからないかな。嘘つく時点でアウトなんだよ。好きになりかけてた分、裏切られた気持ちは大きいんだよ。君が若いからとかそういう問題以前の話なんだ」
静かに、だが毅然とした口調で、史郎はジュンに答えた。
「僕は何も一夜の相手を求めていたわけじゃなくてね。この歳になって笑われるかもしれないけど、久しぶりにきちんと恋がしたいなって思ってて」
「史郎さんっ」
また公衆の面前で抱きしめられ、史郎はうんざりした。
「そういう周りの目を考えないところも、青臭くて嫌なんだ。やっぱり歳が離れすぎてると合わないよ、いろいろと。君みたいに若くてカッコいい子は、こんなおじさんじゃなくても相手はいくらでもいるだろうに」
「ごめんなさい……でも、恋しようと思ってくれてたの、嬉しくて。俺もそうだったから。毎日史郎さんどんな人なのかなって想像して、今頃何してるのかなって考えてて、なんでもないいつも通りの毎日が、すごくキラキラしてたんです。……ねえ史郎さん、もう一度チャンスください。俺たちが、恋するチャンスを」
ジュンの言い分はそっくりそのまま史郎も同じだった。毎日まだ見ぬジュンの姿を想像しでは、メッセージを心待ちにし、暗くどんよりとしていた視界がいくぶんクリアに、明るくなっていたのは間違いなかった。それだけに、本当に許せないな、と改めて怒りがこみ上げる。
無駄足だったこと、騙されていたこと、あれやこれやで憤りが収まらない。今から会える相手でも探すか。
ポケットのスマホは震えっぱなしだ。おそらくジュンからだろう。
『また絶対会ってください』
『本気ですから』
『やっぱり我慢できません』
延々と連なる短文を冷めた気持ちで眺めていると
「史郎さん」
なんと隣にジュンがいた。
「史郎さん、なんで俺ダメなんですか。会うまではずっといい雰囲気でしたよね? そりゃ年齢詐称してたのは悪かったですけど、俺のこと、ちゃんと見てください、それから今後のこと決めてください」
またか。さっき説明したよな? また説明しないといけないのか? 史郎はまるで出来の悪い新入社員を相手にしているような気分になった。
「わからないかな。嘘つく時点でアウトなんだよ。好きになりかけてた分、裏切られた気持ちは大きいんだよ。君が若いからとかそういう問題以前の話なんだ」
静かに、だが毅然とした口調で、史郎はジュンに答えた。
「僕は何も一夜の相手を求めていたわけじゃなくてね。この歳になって笑われるかもしれないけど、久しぶりにきちんと恋がしたいなって思ってて」
「史郎さんっ」
また公衆の面前で抱きしめられ、史郎はうんざりした。
「そういう周りの目を考えないところも、青臭くて嫌なんだ。やっぱり歳が離れすぎてると合わないよ、いろいろと。君みたいに若くてカッコいい子は、こんなおじさんじゃなくても相手はいくらでもいるだろうに」
「ごめんなさい……でも、恋しようと思ってくれてたの、嬉しくて。俺もそうだったから。毎日史郎さんどんな人なのかなって想像して、今頃何してるのかなって考えてて、なんでもないいつも通りの毎日が、すごくキラキラしてたんです。……ねえ史郎さん、もう一度チャンスください。俺たちが、恋するチャンスを」
ジュンの言い分はそっくりそのまま史郎も同じだった。毎日まだ見ぬジュンの姿を想像しでは、メッセージを心待ちにし、暗くどんよりとしていた視界がいくぶんクリアに、明るくなっていたのは間違いなかった。それだけに、本当に許せないな、と改めて怒りがこみ上げる。
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