5 / 18
5
しおりを挟む
はぁ、と大きく息を吐いて、ホームのベンチに腰を下ろす。
無駄足だったこと、騙されていたこと、あれやこれやで憤りが収まらない。今から会える相手でも探すか。
ポケットのスマホは震えっぱなしだ。おそらくジュンからだろう。
『また絶対会ってください』
『本気ですから』
『やっぱり我慢できません』
延々と連なる短文を冷めた気持ちで眺めていると
「史郎さん」
なんと隣にジュンがいた。
「史郎さん、なんで俺ダメなんですか。会うまではずっといい雰囲気でしたよね? そりゃ年齢詐称してたのは悪かったですけど、俺のこと、ちゃんと見てください、それから今後のこと決めてください」
またか。さっき説明したよな? また説明しないといけないのか? 史郎はまるで出来の悪い新入社員を相手にしているような気分になった。
「わからないかな。嘘つく時点でアウトなんだよ。好きになりかけてた分、裏切られた気持ちは大きいんだよ。君が若いからとかそういう問題以前の話なんだ」
静かに、だが毅然とした口調で、史郎はジュンに答えた。
「僕は何も一夜の相手を求めていたわけじゃなくてね。この歳になって笑われるかもしれないけど、久しぶりにきちんと恋がしたいなって思ってて」
「史郎さんっ」
また公衆の面前で抱きしめられ、史郎はうんざりした。
「そういう周りの目を考えないところも、青臭くて嫌なんだ。やっぱり歳が離れすぎてると合わないよ、いろいろと。君みたいに若くてカッコいい子は、こんなおじさんじゃなくても相手はいくらでもいるだろうに」
「ごめんなさい……でも、恋しようと思ってくれてたの、嬉しくて。俺もそうだったから。毎日史郎さんどんな人なのかなって想像して、今頃何してるのかなって考えてて、なんでもないいつも通りの毎日が、すごくキラキラしてたんです。……ねえ史郎さん、もう一度チャンスください。俺たちが、恋するチャンスを」
ジュンの言い分はそっくりそのまま史郎も同じだった。毎日まだ見ぬジュンの姿を想像しでは、メッセージを心待ちにし、暗くどんよりとしていた視界がいくぶんクリアに、明るくなっていたのは間違いなかった。それだけに、本当に許せないな、と改めて怒りがこみ上げる。
無駄足だったこと、騙されていたこと、あれやこれやで憤りが収まらない。今から会える相手でも探すか。
ポケットのスマホは震えっぱなしだ。おそらくジュンからだろう。
『また絶対会ってください』
『本気ですから』
『やっぱり我慢できません』
延々と連なる短文を冷めた気持ちで眺めていると
「史郎さん」
なんと隣にジュンがいた。
「史郎さん、なんで俺ダメなんですか。会うまではずっといい雰囲気でしたよね? そりゃ年齢詐称してたのは悪かったですけど、俺のこと、ちゃんと見てください、それから今後のこと決めてください」
またか。さっき説明したよな? また説明しないといけないのか? 史郎はまるで出来の悪い新入社員を相手にしているような気分になった。
「わからないかな。嘘つく時点でアウトなんだよ。好きになりかけてた分、裏切られた気持ちは大きいんだよ。君が若いからとかそういう問題以前の話なんだ」
静かに、だが毅然とした口調で、史郎はジュンに答えた。
「僕は何も一夜の相手を求めていたわけじゃなくてね。この歳になって笑われるかもしれないけど、久しぶりにきちんと恋がしたいなって思ってて」
「史郎さんっ」
また公衆の面前で抱きしめられ、史郎はうんざりした。
「そういう周りの目を考えないところも、青臭くて嫌なんだ。やっぱり歳が離れすぎてると合わないよ、いろいろと。君みたいに若くてカッコいい子は、こんなおじさんじゃなくても相手はいくらでもいるだろうに」
「ごめんなさい……でも、恋しようと思ってくれてたの、嬉しくて。俺もそうだったから。毎日史郎さんどんな人なのかなって想像して、今頃何してるのかなって考えてて、なんでもないいつも通りの毎日が、すごくキラキラしてたんです。……ねえ史郎さん、もう一度チャンスください。俺たちが、恋するチャンスを」
ジュンの言い分はそっくりそのまま史郎も同じだった。毎日まだ見ぬジュンの姿を想像しでは、メッセージを心待ちにし、暗くどんよりとしていた視界がいくぶんクリアに、明るくなっていたのは間違いなかった。それだけに、本当に許せないな、と改めて怒りがこみ上げる。
30
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
今日も、俺の彼氏がかっこいい。
春音優月
BL
中野良典《なかのよしのり》は、可もなく不可もない、どこにでもいる普通の男子高校生。特技もないし、部活もやってないし、夢中になれるものも特にない。
そんな自分と退屈な日常を変えたくて、良典はカースト上位で学年で一番の美人に告白することを決意する。
しかし、良典は告白する相手を間違えてしまい、これまたカースト上位でクラスの人気者のさわやかイケメンに告白してしまう。
あっさりフラれるかと思いきや、告白をOKされてしまって……。良典も今さら間違えて告白したとは言い出しづらくなり、そのまま付き合うことに。
どうやって別れようか悩んでいた良典だけど、彼氏(?)の圧倒的顔の良さとさわやかさと性格の良さにきゅんとする毎日。男同士だけど、楽しいし幸せだしあいつのこと大好きだし、まあいっか……なちょろくてゆるい感じで付き合っているうちに、どんどん相手のことが大好きになっていく。
間違いから始まった二人のほのぼの平和な胸キュンお付き合いライフ。
2021.07.15〜2021.07.16

まさか「好き」とは思うまい
和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。

目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

幸せのカタチ
杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。
拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる